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少女マンガ的ライバルお嬢様
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セイラが、きらりをいじめていた…?
まさか。私の顔で泣いていた、幼い少女が脳裏に浮かぶ。
私はセイラのことを何も知らない。
小学生1日目を終え、リムジンに揺られながら私は考える。
数学的にはまず、条件の整理だ。
セイラについて、わかっていることを整理してみよう。
①セイラは、「キラキラ⭐︎きらりの恋」のライバルキャラである。
②謎に金持ちである。裏社会に通じているに違いない…
とまあ、これはどうでもいいが。あとは…
③昴のことが好きらしい。
好き、か…いまだに他人を好きになったことのない私では、セイラの気持ちなぞ、全くわからなくて当然だろう。
聞くはいっときの恥という。仕方があるまい。
「執事。ちょっといいか?」
「はいはい。なんでございましょう?」
この執事、一見、かなり優秀な人に見えるんだが、セイラ相手だと形無しらしい。一気に孫にデレるおじいちゃんの顔になる。幼い私を寝かしつけようと、円周率を暗唱していた祖父の仏頂面が脳裏に浮かぶ。うん、これもどうでもいいな。
「変な質問になるがな。恋とはなんだ?」
人をいじめる、動機になるものか?その言葉は直前で呑み込む。貸しだぞ、セイラ。
一瞬不思議そうな顔をした執事は、すぐに意味ありげに目を細めた。
「昴さまのことですね。わかりますとも。好きであると思えば思うほど、本当に好きなのか、どこが好きなのか、わからなくなるものですね」
いや。全くわからないが。
「でもセイラさま。思い出してくださいませ。初めて昴さまに出会った日のことを。初めて、恋に落ちた日のことを」
すまん、思い出す記憶がない。話してくれないか、そう頼むと、執事はこくりと頷いた。
***
あれは、幼稚園の時。
「セイラちゃんっ!これちょーだい。お金持ちなんだから、いいでしょ?」
取り巻きAが握っているのは、私の幼稚園バッグについているリボン。いつもなら、軽くOKするところだった。だって私はお金持ちだから。お嬢様だから。ホドコシを与えるのは、当然だから。
でも、その日はダメだった。理由は忘れた。とにかくすごくイライラしていたのを、覚えている。
「だめっ!」
反抗されると思ってなかったんだろう。ケンカになった。リボンがちぎれて、取り巻きAが大泣きして。
みんな、先生まで、取り巻きAの味方をした。
セイラちゃんが泣かせた。謝りなよ。
耐えられなくて、こっちまで泣きそうになったときだった。
「これ、もらっていい?」
泣き声が響く室内には、あまりにも不似合いな、落ち着いた声だった。男の子が、ハート柄の手提げカバンを掴んでいた。あれって…取り巻きAの。
「ふぇ…だめ!」
真っ赤な顔をして、取り巻きAが叫ぶ。先生はオロオロするだけ。
「お前がやったの、同じことだろ」
ぽいっと、カバンを取り巻きAに放って。騒然とする子供たちをよそに、その子は立ち去った…
***
なるほど、その男の子が昴だと。今時の幼稚園児は末恐ろしいな。
「思い出してください。あの時、どれほど嬉しかったか。爺は覚えていますぞ。あの日の帰り、昴さまについて語るセイラさまのキラキラした顔を…」
すまんな。それは無理な相談だ。でも、まあ、わからんでもない。私も仕事が速いという意味不明な理由で、雑用を押し付けられたことがある。数学的帰納法を用いて論破してやったが。
だがやはり、その気持ちはきらりをいじめる理由にはなるまい。
「浮かない顔でございますね。ならば日記を見返してみてはどうでしょう。爺が話すより、セイラさまご自身のお気持ちが思い出されることでしょう」
サイドミラーごし、執事がこの上なく優しい顔で微笑んでいた。
まさか。私の顔で泣いていた、幼い少女が脳裏に浮かぶ。
私はセイラのことを何も知らない。
小学生1日目を終え、リムジンに揺られながら私は考える。
数学的にはまず、条件の整理だ。
セイラについて、わかっていることを整理してみよう。
①セイラは、「キラキラ⭐︎きらりの恋」のライバルキャラである。
②謎に金持ちである。裏社会に通じているに違いない…
とまあ、これはどうでもいいが。あとは…
③昴のことが好きらしい。
好き、か…いまだに他人を好きになったことのない私では、セイラの気持ちなぞ、全くわからなくて当然だろう。
聞くはいっときの恥という。仕方があるまい。
「執事。ちょっといいか?」
「はいはい。なんでございましょう?」
この執事、一見、かなり優秀な人に見えるんだが、セイラ相手だと形無しらしい。一気に孫にデレるおじいちゃんの顔になる。幼い私を寝かしつけようと、円周率を暗唱していた祖父の仏頂面が脳裏に浮かぶ。うん、これもどうでもいいな。
「変な質問になるがな。恋とはなんだ?」
人をいじめる、動機になるものか?その言葉は直前で呑み込む。貸しだぞ、セイラ。
一瞬不思議そうな顔をした執事は、すぐに意味ありげに目を細めた。
「昴さまのことですね。わかりますとも。好きであると思えば思うほど、本当に好きなのか、どこが好きなのか、わからなくなるものですね」
いや。全くわからないが。
「でもセイラさま。思い出してくださいませ。初めて昴さまに出会った日のことを。初めて、恋に落ちた日のことを」
すまん、思い出す記憶がない。話してくれないか、そう頼むと、執事はこくりと頷いた。
***
あれは、幼稚園の時。
「セイラちゃんっ!これちょーだい。お金持ちなんだから、いいでしょ?」
取り巻きAが握っているのは、私の幼稚園バッグについているリボン。いつもなら、軽くOKするところだった。だって私はお金持ちだから。お嬢様だから。ホドコシを与えるのは、当然だから。
でも、その日はダメだった。理由は忘れた。とにかくすごくイライラしていたのを、覚えている。
「だめっ!」
反抗されると思ってなかったんだろう。ケンカになった。リボンがちぎれて、取り巻きAが大泣きして。
みんな、先生まで、取り巻きAの味方をした。
セイラちゃんが泣かせた。謝りなよ。
耐えられなくて、こっちまで泣きそうになったときだった。
「これ、もらっていい?」
泣き声が響く室内には、あまりにも不似合いな、落ち着いた声だった。男の子が、ハート柄の手提げカバンを掴んでいた。あれって…取り巻きAの。
「ふぇ…だめ!」
真っ赤な顔をして、取り巻きAが叫ぶ。先生はオロオロするだけ。
「お前がやったの、同じことだろ」
ぽいっと、カバンを取り巻きAに放って。騒然とする子供たちをよそに、その子は立ち去った…
***
なるほど、その男の子が昴だと。今時の幼稚園児は末恐ろしいな。
「思い出してください。あの時、どれほど嬉しかったか。爺は覚えていますぞ。あの日の帰り、昴さまについて語るセイラさまのキラキラした顔を…」
すまんな。それは無理な相談だ。でも、まあ、わからんでもない。私も仕事が速いという意味不明な理由で、雑用を押し付けられたことがある。数学的帰納法を用いて論破してやったが。
だがやはり、その気持ちはきらりをいじめる理由にはなるまい。
「浮かない顔でございますね。ならば日記を見返してみてはどうでしょう。爺が話すより、セイラさまご自身のお気持ちが思い出されることでしょう」
サイドミラーごし、執事がこの上なく優しい顔で微笑んでいた。
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