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日常篇
純血種の力
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「野崎さん、最近いいことありました?」
打ち合わせの途中、渡瀬さんにそんなことを訊かれる。
...彼は時々鋭い。
「恋人とビデオ通話をして、夜ふかししました」
「へえ、楽しそうですね!僕もそろそろ娘が会いに来るんです。学校生活、慣れてるといいんですけど...。
あ、でも息子と妻も一緒に来るって言ってて...」
渡瀬さんにはお子さんがふたりいる。
1人は、中学生になったばかりの娘さんで...溺愛しているようだ。
もうすぐ高校生になる息子さんは、進学先が定まってきて安心したと話していた。
「って、すみません!」
「楽しい話を聞かせてもらいました。ご家族思いなんですね」
「これも全部、妻のおかげです。僕が仕事で出ているとき、ずっと支えてくれたのは彼女なので」
(奥さんのこと、本当に大事に思ってるんだな...)
1度だけ会ったことがあるけれど、あれだけ可愛らしい人を私は他に知らない。
「原稿、お預かりします」
「ありがとうございました」
部屋を出て、大きく息を吸う。
私にはない思い出で物凄く羨ましい。
(気分を変えないと)
...私にとって『家族』は、安心できる場所ではなかったから。
だからなのか、渡瀬さんの話を聞いた後だと考えこんでしまうことが多い。
「...すみません」
ぼんやり歩いていて、人にぶつかってしまった。
男ふたりに女がひとり。
何故かにやにやして近寄ってくるそれらが危険なものであることはすぐに理解した。
「ぶつかっておいてそれで済むと思ってんの?お金、払ってもらおうか」
「この子可愛いし、別の使い道もあるんじゃね?」
「どっちにしたいかはあんたたちが決めなさい」
じりじりと距離を詰められ、どんどん動けなくなっていく。
(どうしよう、逃げられない...)
もう駄目だと目を閉じたそのとき、驚きの人物が現れた。
「俺の家族に何してる?」
栗色の髪が風に揺れたと思うと、気づいたときには私を背に隠していた。
「ラッ...」
呼び掛けて言葉を止める。
ラッシュさんで間違いないけれど、こんな昼間に起きられるのだろうか。
「おっさん、邪魔だよ」
「──去れ」
ラッシュさんが低い声でそう告げて手をかざすと、彼等は一瞬で吹き飛んでいた。
「行こうか、お嬢さん」
「え、あ、はい」
そのとき私と合った目は、深紅に染まっていた。
「...悪いね、お嬢さん。ちょっと休ませてもらえないかな?」
「日の光、毒になるんですよね...?」
「俺は比較的強い方なんだが、真昼にこれだけ力を使うとな...」
「さっきのって、どうやってやったんですか?」
木陰でふたり並んで座って、ラッシュさんはゆっくり話してくれた。
「純血種は、大抵能力が使える。...俺は念動力が得意で昔から使ってるが、夜使うと人間を殺しかねないからなかなか使わないな」
「そうなんですね...」
彼は会話の合間に注射器を取り出し、腕から赤い液体を入れた。
それが何かなんて、訊かなくても分かる。
「俺が怖くないのか?夜になったら殺人兵器みたいな能力持ってるのに」
「全然。ラッシュさんは私の恩人ですから。本当にありがとうございます」
怖がらない私が不思議だという表情を浮かべた後、目の前の男性は笑った。
「やっぱりお嬢さんになら木葉を任せられるな」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
15分ほど話しただろうか。
ラッシュさんの顔色はすっかりよくなり、ぐい、と腕をひかれる。
「お嬢さん、時間があるならでいいんだが...ちょっと協力してくれないか?」
打ち合わせの途中、渡瀬さんにそんなことを訊かれる。
...彼は時々鋭い。
「恋人とビデオ通話をして、夜ふかししました」
「へえ、楽しそうですね!僕もそろそろ娘が会いに来るんです。学校生活、慣れてるといいんですけど...。
あ、でも息子と妻も一緒に来るって言ってて...」
渡瀬さんにはお子さんがふたりいる。
1人は、中学生になったばかりの娘さんで...溺愛しているようだ。
もうすぐ高校生になる息子さんは、進学先が定まってきて安心したと話していた。
「って、すみません!」
「楽しい話を聞かせてもらいました。ご家族思いなんですね」
「これも全部、妻のおかげです。僕が仕事で出ているとき、ずっと支えてくれたのは彼女なので」
(奥さんのこと、本当に大事に思ってるんだな...)
1度だけ会ったことがあるけれど、あれだけ可愛らしい人を私は他に知らない。
「原稿、お預かりします」
「ありがとうございました」
部屋を出て、大きく息を吸う。
私にはない思い出で物凄く羨ましい。
(気分を変えないと)
...私にとって『家族』は、安心できる場所ではなかったから。
だからなのか、渡瀬さんの話を聞いた後だと考えこんでしまうことが多い。
「...すみません」
ぼんやり歩いていて、人にぶつかってしまった。
男ふたりに女がひとり。
何故かにやにやして近寄ってくるそれらが危険なものであることはすぐに理解した。
「ぶつかっておいてそれで済むと思ってんの?お金、払ってもらおうか」
「この子可愛いし、別の使い道もあるんじゃね?」
「どっちにしたいかはあんたたちが決めなさい」
じりじりと距離を詰められ、どんどん動けなくなっていく。
(どうしよう、逃げられない...)
もう駄目だと目を閉じたそのとき、驚きの人物が現れた。
「俺の家族に何してる?」
栗色の髪が風に揺れたと思うと、気づいたときには私を背に隠していた。
「ラッ...」
呼び掛けて言葉を止める。
ラッシュさんで間違いないけれど、こんな昼間に起きられるのだろうか。
「おっさん、邪魔だよ」
「──去れ」
ラッシュさんが低い声でそう告げて手をかざすと、彼等は一瞬で吹き飛んでいた。
「行こうか、お嬢さん」
「え、あ、はい」
そのとき私と合った目は、深紅に染まっていた。
「...悪いね、お嬢さん。ちょっと休ませてもらえないかな?」
「日の光、毒になるんですよね...?」
「俺は比較的強い方なんだが、真昼にこれだけ力を使うとな...」
「さっきのって、どうやってやったんですか?」
木陰でふたり並んで座って、ラッシュさんはゆっくり話してくれた。
「純血種は、大抵能力が使える。...俺は念動力が得意で昔から使ってるが、夜使うと人間を殺しかねないからなかなか使わないな」
「そうなんですね...」
彼は会話の合間に注射器を取り出し、腕から赤い液体を入れた。
それが何かなんて、訊かなくても分かる。
「俺が怖くないのか?夜になったら殺人兵器みたいな能力持ってるのに」
「全然。ラッシュさんは私の恩人ですから。本当にありがとうございます」
怖がらない私が不思議だという表情を浮かべた後、目の前の男性は笑った。
「やっぱりお嬢さんになら木葉を任せられるな」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
15分ほど話しただろうか。
ラッシュさんの顔色はすっかりよくなり、ぐい、と腕をひかれる。
「お嬢さん、時間があるならでいいんだが...ちょっと協力してくれないか?」
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