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隠暮篇(かくれぐらしへん)
同棲準備
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「よし、何から買おうか」
「部屋着を何枚か買おうと思っていたところだったから、いつものお店に行ってもいい?」
「勿論」
そうして木葉とやってきたのは、普段からよく利用しているショッピングモールだった。
「布団も新しいのを用意しよう」
「いいの?」
「うん。あと必要なものも揃えて...」
一瞬、木葉の瞳に獰猛な色が宿ったような気がする。
「もしかして、疲れてる?」
「え、どうして?」
「さっきちょっとだけ眼光が鋭くなったから」
「そうだった?なんでもないよ!これからどんなものを買おうかなって楽しみには思っていたけど、それだけだから」
笑顔がいつもと違う。
けれど、私はそれ以上訊くことができなくて...乾いた声でそうなんだと告げた。
「この服七海に似合いそうだよ」
「そうかな...?」
自分ではあまり選ばない形の服に困惑しながらようやく買い物を終え、恐る恐る自宅に入る。
(昨日より綺麗になってる...)
きっとラッシュさんが掃除してくれたのだと思うと、胸の中が感謝でいっぱいになる。
「木葉、大丈夫?」
昨日まで血だらけだった場所だ、私は平気でも木葉はそうではないかもしれない。
「もう陽が沈んでいるし、においもそこまで濃くないから大丈夫だよ。
...ごめんね、心配ばっかりかけて」
「ううん。できるだけ早く終わらせるから、もう少しだけ待ってて」
頷く彼の姿はなんだかいつもより頼もしく見えて、鼓動が高鳴るのを感じる。
着替えや仕事道具に本、シェリとお揃いのぬいぐるみ...。
それらを大きめのリュックサックに詰めて、思ったよりも早く終わった。
「荷物、これだけでいいの?」
「...うん。これで全部」
「それじゃあ──」
そのとき、玄関を何かが通る気配がした。
からからと車輪が回るような音がして、それは的確に私たちがいる部屋に向かってやってくる。
「僕の後ろにいて」
「...分かった」
言われたとおりにしていると、音の正体が明らかになった。
「おい、待てって!まだそんなにがんがんこいでいい状態じゃ...」
私たちはふたりで顔を見あわせる。
「今の声って、」
「...間違いなくラッシュさんだね」
そして目の前からものすごい速さで飛んできたのは、車椅子に乗った透けるようなブロンドの少女。
「...シェリ」
「あ、あの、昨夜は、」
気づけばその体を抱きしめていた。
「よかった...。あのあとどうなったか、ずっと心配だったから」
「シェリ、がんがんこぐなって...やっぱりお嬢さんと木葉か」
「やっぱり、じゃないよ!来るなら来るって先に言っておいてよ、何かと思った...」
ラッシュさんたちの会話が聞こえなくなるほど、私の意識は目の前の少女に集中していた。
足を深く切られたのか、包帯でぐるぐる巻きになっている姿はとても痛々しい。
下を向きそうになったシェリに、私は声をかけた。
「シェリにはきっと笑顔が似合う」
「...!」
「部屋着を何枚か買おうと思っていたところだったから、いつものお店に行ってもいい?」
「勿論」
そうして木葉とやってきたのは、普段からよく利用しているショッピングモールだった。
「布団も新しいのを用意しよう」
「いいの?」
「うん。あと必要なものも揃えて...」
一瞬、木葉の瞳に獰猛な色が宿ったような気がする。
「もしかして、疲れてる?」
「え、どうして?」
「さっきちょっとだけ眼光が鋭くなったから」
「そうだった?なんでもないよ!これからどんなものを買おうかなって楽しみには思っていたけど、それだけだから」
笑顔がいつもと違う。
けれど、私はそれ以上訊くことができなくて...乾いた声でそうなんだと告げた。
「この服七海に似合いそうだよ」
「そうかな...?」
自分ではあまり選ばない形の服に困惑しながらようやく買い物を終え、恐る恐る自宅に入る。
(昨日より綺麗になってる...)
きっとラッシュさんが掃除してくれたのだと思うと、胸の中が感謝でいっぱいになる。
「木葉、大丈夫?」
昨日まで血だらけだった場所だ、私は平気でも木葉はそうではないかもしれない。
「もう陽が沈んでいるし、においもそこまで濃くないから大丈夫だよ。
...ごめんね、心配ばっかりかけて」
「ううん。できるだけ早く終わらせるから、もう少しだけ待ってて」
頷く彼の姿はなんだかいつもより頼もしく見えて、鼓動が高鳴るのを感じる。
着替えや仕事道具に本、シェリとお揃いのぬいぐるみ...。
それらを大きめのリュックサックに詰めて、思ったよりも早く終わった。
「荷物、これだけでいいの?」
「...うん。これで全部」
「それじゃあ──」
そのとき、玄関を何かが通る気配がした。
からからと車輪が回るような音がして、それは的確に私たちがいる部屋に向かってやってくる。
「僕の後ろにいて」
「...分かった」
言われたとおりにしていると、音の正体が明らかになった。
「おい、待てって!まだそんなにがんがんこいでいい状態じゃ...」
私たちはふたりで顔を見あわせる。
「今の声って、」
「...間違いなくラッシュさんだね」
そして目の前からものすごい速さで飛んできたのは、車椅子に乗った透けるようなブロンドの少女。
「...シェリ」
「あ、あの、昨夜は、」
気づけばその体を抱きしめていた。
「よかった...。あのあとどうなったか、ずっと心配だったから」
「シェリ、がんがんこぐなって...やっぱりお嬢さんと木葉か」
「やっぱり、じゃないよ!来るなら来るって先に言っておいてよ、何かと思った...」
ラッシュさんたちの会話が聞こえなくなるほど、私の意識は目の前の少女に集中していた。
足を深く切られたのか、包帯でぐるぐる巻きになっている姿はとても痛々しい。
下を向きそうになったシェリに、私は声をかけた。
「シェリにはきっと笑顔が似合う」
「...!」
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