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隠暮篇(かくれぐらしへん)
邂逅
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「あ、あの...」
「どうしたの?」
「あ、ありがとう」
予想外の言葉だったのか、七海は目を丸くしている。
僕と過ごしているときもそうなのだが、彼女はお礼を言われ慣れていない。
恐らく自分がどれだけすごいのか気づいていないだろう。
「私は当たり前のことをしただけで...だから、お礼を言われるようなことは何もしてないよ」
「いいか、お嬢さん。出血している奴のことなんて大抵は見て見ぬふりだ。...自分が関わりたくないからな。
けど、お嬢さんは違った。こいつのことを助けてくれたし、木葉の欲求だって抑えてくれた」
「そうだよ。それは決して当たり前じゃないんだ。...僕たちみたいな存在にとっては、特にね」
「ふたりとも...」
化け物と言われ続けた過去を思い出すと、今でも苦くなることがある。
だが、七海はそんなことは一言も言わなかった。
初めて会ったときも助けてくれて、それから後も何度も救われている。
そして今こうして恋人同士でいられるのは本当に幸せなことなのだ。
「私は、七海に...恩返し、したい」
「それは傷が治ったらにしておけ。...あいつに怒られるぞ」
あいつというのは間違いなく母のことだろう。
しゅんとした様子で頷くシェリの頭を、七海は再び優しく撫でた。
「大丈夫。元気になったらまた出掛けようね」
「...うん」
ラッシュさんたちは見廻りをしてから出たいと言うので、彼女の許可をもらって部屋の鍵を渡して外へ出る。
「思ったより元気そうでよかった」
「そうだね。あの怪我なら1ヶ月もかからずに治ると思うよ」
七海の荷物は本当に軽くて、無理をして減らしていないか不安になる。
訊いてみようかと思ったそのとき、目の前に見覚えのある顔が現れた。
「...柊?」
「どうしてこんな時間に出歩いているの?」
「ちょっと色々あって、七海と一緒に住むことになったんだ」
いつもどおりに受け答えをするけれど、七海は何故か怪訝そうな表情だ。
「夕方の言葉の意味、教えてください」
「それってどういうこと?」
「...なんだ、やっぱり言ってなかったんだね」
何の話か分からず戸惑っていると、柊は深くため息を吐いた。
「中津木葉、君が言ったんだ。...プレゼント選びにつきあってくれるって」
「ごめん、すっかり忘れてた...!」
それで怒りのオーラが出ているのかとすぐに納得した。
数日前確かにそんな約束をしたが、シェリの襲撃事件やらですっかり抜け落ちていたのだ。
「...何かあったなら連絡してくれればよかったのに」
「よからぬことを考えているのかと疑ってすみませんでした」
「別に君のせいじゃない。...そもそも知らされていなかったのだから、疑われて当然だ。
今夜はもう帰るよ。それじゃあ、また都合がいい日に」
柊は場の空気を察する能力に長けている。
何かあった、緊急事態だったということは伝わったのだろう。
次の仕事のときにしっかり話そう、そう思いながらしっかり手を握る。
「僕たちも帰ろうか」
「...うん」
これから新しい生活がはじまる...そう思うとにやけてしまいそうだ。
──そんな僕たちに希望を与えるように、月光がいつまでも降り注いでいた。
「どうしたの?」
「あ、ありがとう」
予想外の言葉だったのか、七海は目を丸くしている。
僕と過ごしているときもそうなのだが、彼女はお礼を言われ慣れていない。
恐らく自分がどれだけすごいのか気づいていないだろう。
「私は当たり前のことをしただけで...だから、お礼を言われるようなことは何もしてないよ」
「いいか、お嬢さん。出血している奴のことなんて大抵は見て見ぬふりだ。...自分が関わりたくないからな。
けど、お嬢さんは違った。こいつのことを助けてくれたし、木葉の欲求だって抑えてくれた」
「そうだよ。それは決して当たり前じゃないんだ。...僕たちみたいな存在にとっては、特にね」
「ふたりとも...」
化け物と言われ続けた過去を思い出すと、今でも苦くなることがある。
だが、七海はそんなことは一言も言わなかった。
初めて会ったときも助けてくれて、それから後も何度も救われている。
そして今こうして恋人同士でいられるのは本当に幸せなことなのだ。
「私は、七海に...恩返し、したい」
「それは傷が治ったらにしておけ。...あいつに怒られるぞ」
あいつというのは間違いなく母のことだろう。
しゅんとした様子で頷くシェリの頭を、七海は再び優しく撫でた。
「大丈夫。元気になったらまた出掛けようね」
「...うん」
ラッシュさんたちは見廻りをしてから出たいと言うので、彼女の許可をもらって部屋の鍵を渡して外へ出る。
「思ったより元気そうでよかった」
「そうだね。あの怪我なら1ヶ月もかからずに治ると思うよ」
七海の荷物は本当に軽くて、無理をして減らしていないか不安になる。
訊いてみようかと思ったそのとき、目の前に見覚えのある顔が現れた。
「...柊?」
「どうしてこんな時間に出歩いているの?」
「ちょっと色々あって、七海と一緒に住むことになったんだ」
いつもどおりに受け答えをするけれど、七海は何故か怪訝そうな表情だ。
「夕方の言葉の意味、教えてください」
「それってどういうこと?」
「...なんだ、やっぱり言ってなかったんだね」
何の話か分からず戸惑っていると、柊は深くため息を吐いた。
「中津木葉、君が言ったんだ。...プレゼント選びにつきあってくれるって」
「ごめん、すっかり忘れてた...!」
それで怒りのオーラが出ているのかとすぐに納得した。
数日前確かにそんな約束をしたが、シェリの襲撃事件やらですっかり抜け落ちていたのだ。
「...何かあったなら連絡してくれればよかったのに」
「よからぬことを考えているのかと疑ってすみませんでした」
「別に君のせいじゃない。...そもそも知らされていなかったのだから、疑われて当然だ。
今夜はもう帰るよ。それじゃあ、また都合がいい日に」
柊は場の空気を察する能力に長けている。
何かあった、緊急事態だったということは伝わったのだろう。
次の仕事のときにしっかり話そう、そう思いながらしっかり手を握る。
「僕たちも帰ろうか」
「...うん」
これから新しい生活がはじまる...そう思うとにやけてしまいそうだ。
──そんな僕たちに希望を与えるように、月光がいつまでも降り注いでいた。
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