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隠暮篇(かくれぐらしへん)
同棲開始
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「おはよう」
「...すう」
木葉は穏やかな寝息をたてていて、起こさないように部屋を出る。
あれから一緒に星を見ていた私たちはそのまま眠ってしまったらしい。
(...ちゃんと荷ほどきしないと)
冷蔵庫の中のものは好きに使っていいと言われていたのを思い出し、トースト1枚と温かい紅茶を手にいつも借りている部屋に物を配置していく。
今日からしばらくここが私の家になる、なんて考えてもいまひとつ実感が湧かない。
何も変わらない、昨日まではそう思っていたけれど...やっぱり変わってしまうのだ。
(仕事の環境が変わるし、木葉との距離が少しだけ近くなったような気がする)
それに、毎日顔を合わせるというのはなんだか慣れるまでに時間がかかりそうだ。
あっという間に整頓し終わった私は、キッチンで黙々と玉ねぎを刻む。
《仕事中だから、もし終わったら温めて食べてください》
私が泊まらせてもらったり、逆に木葉が泊まっているときはいつもこうしていた。
それがしばらくは日課になるのだろう。
「あ、渡瀬さんにメールしておかないと」
もし打ち合わせをやりたいとなったときに、誰もいない家にわざわざ来てもらうわけにはいかない。
だからといって勝手に住所を教える訳にはいかなかったので、『リフォーム中なので緊急の連絡がある場合は電話してください』とだけ書いて送信する。
「...『少女は彼に問いかけました。どうしていつも傷つけられる方ばかりが痛い思いをするのかと』いや、この場合は彼より目の前の少年にの方がいいのかな...」
いつもの調子で仕事を進めていると、扉をノックする音がした。
「入ってもいい?」
「あ、うん。どうぞ」
まだ眠そうにしている木葉は、部屋に入ってくるなり椅子ごと私を抱きしめた。
「おはよう」
「...おはよう」
「オムライス、作ってくれてありがとう。七海も一緒にご飯食べようよ」
「今はまだいいかな。食べてってメモしたのに、もしかして待っててくれたの?」
背中にまわっていた腕の力が弛んで、じっと瞳を覗きこまれる。
「...一緒にじゃないと食べない」
「もう少しだけ待って。区切りがいいところまで進めたいから」
「分かった」
いつもならお昼は食べないことが多い。
独りのときはご飯なんかより書いていたい気持ちが勝り、実はほとんど食べていなかった。
それが今日からはふたりで食べる日が増えていくのだろう。
「退屈じゃない?」
「全然!寧ろこうやって七海が仕事をしているところを見ているのは楽しいよ」
無邪気な子どものような笑顔にときめいて、集中力が切れそうになる。
なんとか書きあげて木葉と目を合わせると、彼はまた嬉しそうに笑った。
「それじゃあご飯食べよう!」
「うん」
「...すう」
木葉は穏やかな寝息をたてていて、起こさないように部屋を出る。
あれから一緒に星を見ていた私たちはそのまま眠ってしまったらしい。
(...ちゃんと荷ほどきしないと)
冷蔵庫の中のものは好きに使っていいと言われていたのを思い出し、トースト1枚と温かい紅茶を手にいつも借りている部屋に物を配置していく。
今日からしばらくここが私の家になる、なんて考えてもいまひとつ実感が湧かない。
何も変わらない、昨日まではそう思っていたけれど...やっぱり変わってしまうのだ。
(仕事の環境が変わるし、木葉との距離が少しだけ近くなったような気がする)
それに、毎日顔を合わせるというのはなんだか慣れるまでに時間がかかりそうだ。
あっという間に整頓し終わった私は、キッチンで黙々と玉ねぎを刻む。
《仕事中だから、もし終わったら温めて食べてください》
私が泊まらせてもらったり、逆に木葉が泊まっているときはいつもこうしていた。
それがしばらくは日課になるのだろう。
「あ、渡瀬さんにメールしておかないと」
もし打ち合わせをやりたいとなったときに、誰もいない家にわざわざ来てもらうわけにはいかない。
だからといって勝手に住所を教える訳にはいかなかったので、『リフォーム中なので緊急の連絡がある場合は電話してください』とだけ書いて送信する。
「...『少女は彼に問いかけました。どうしていつも傷つけられる方ばかりが痛い思いをするのかと』いや、この場合は彼より目の前の少年にの方がいいのかな...」
いつもの調子で仕事を進めていると、扉をノックする音がした。
「入ってもいい?」
「あ、うん。どうぞ」
まだ眠そうにしている木葉は、部屋に入ってくるなり椅子ごと私を抱きしめた。
「おはよう」
「...おはよう」
「オムライス、作ってくれてありがとう。七海も一緒にご飯食べようよ」
「今はまだいいかな。食べてってメモしたのに、もしかして待っててくれたの?」
背中にまわっていた腕の力が弛んで、じっと瞳を覗きこまれる。
「...一緒にじゃないと食べない」
「もう少しだけ待って。区切りがいいところまで進めたいから」
「分かった」
いつもならお昼は食べないことが多い。
独りのときはご飯なんかより書いていたい気持ちが勝り、実はほとんど食べていなかった。
それが今日からはふたりで食べる日が増えていくのだろう。
「退屈じゃない?」
「全然!寧ろこうやって七海が仕事をしているところを見ているのは楽しいよ」
無邪気な子どものような笑顔にときめいて、集中力が切れそうになる。
なんとか書きあげて木葉と目を合わせると、彼はまた嬉しそうに笑った。
「それじゃあご飯食べよう!」
「うん」
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