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隠暮篇(かくれぐらしへん)
秘密の理由
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それから数日、木葉はあの手この手で聞き出そうとしてきた。
それをかわすだけでもだいぶ苦戦したけれど、楽しいとも感じた私は少しおかしいのだろうか。
「それじゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
いよいよ当日、木葉が早めにお仕事に向かうのを見送って準備を進める。
「...よし、できた」
ここにある冷蔵庫はかなり大きめで、なんとか今日まで食材を隠すことができた。
ケーキに唐揚げ、ローストビーフ...サラダ、スープ、そして炊きたての白米。
時間があればグラタンも作りたかったのだけれど、残念ながらそこまでは手が回らなかった。
用意したプレゼントも運んで準備は完璧だ。
(喜んでもらえるといいな)
月がだんだん上へと昇りはじめた頃、メッセージが届いたことを告げる音が鳴った。
《今日は帰りが遅くなるので待たずに寝ててください。ごめんね》
...迂闊だった。
木葉は今日がクリスマスイブだと知らない。
優しい彼ならきっと他の人の分まで仕事を受けるはずだ。
そうなれば帰りが遅くなるのは当然で...けれど私は待ち続ける。
(ケーキとローストビーフ、サラダと唐揚げは冷蔵庫に仕舞っておいて...あとのものは木葉が帰ってきてから温め直そう)
唐揚げをあげる前でよかったとほっとしつつ、今か今かと原稿を仕上げながら待ち続けた。
...時刻は12時になろうとしている。
それでもまだ彼は帰ってこない。
少し寂しさを覚えつつ、諦めようとしたそのときだった。
「ただい...え、何これ!?」
聞こえてきたのはそんな声。
やっぱり今でも気づいていないらしい。
「おかえりなさい。ご飯、これからもう少し時間がかかるから先にお風呂に入って」
「う、うん...」
明らかに戸惑っている。
そんな木葉を見るのは新鮮で...なかなか面白い。
「...熱っ」
眠気が残っているせいか、唐揚げを作るのに使っていたトングに手が当たってしまった。
(失敗したな...)
水で冷やしてガーゼで覆うようにしようとしたけれど、なかなか上手く貼れない。
苦戦していると、後ろから手が伸びてきた。
「火傷したの?」
「ちょっと失敗しちゃって...」
「手当ては僕がやるよ。...はい、終わり」
「ありがとう」
木葉は不思議そうに首を傾げている。
「ねえ、どうしてこんなに沢山の料理を用意してくれたの?」
やっぱり木葉は気づいていない。
「クリスマスイブだったから。...でも、木葉に話したら無茶をしてでも手伝おうとしてくれるんだろうなって思ったから、当日まで隠すことにしたんだ」
「え?」
「...それが秘密」
「今まで気づいてなかった...。去年までは、こんなふうにお祝い?したこともなかったから」
「私もだよ」
瞬間、木葉に抱きしめられる。
「全部僕の為に...ありがとう!」
この笑顔が見られれば、それだけで充分だ。
火傷の痛みも気にならないほど、この胸は想いで満たされている。
それをかわすだけでもだいぶ苦戦したけれど、楽しいとも感じた私は少しおかしいのだろうか。
「それじゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
いよいよ当日、木葉が早めにお仕事に向かうのを見送って準備を進める。
「...よし、できた」
ここにある冷蔵庫はかなり大きめで、なんとか今日まで食材を隠すことができた。
ケーキに唐揚げ、ローストビーフ...サラダ、スープ、そして炊きたての白米。
時間があればグラタンも作りたかったのだけれど、残念ながらそこまでは手が回らなかった。
用意したプレゼントも運んで準備は完璧だ。
(喜んでもらえるといいな)
月がだんだん上へと昇りはじめた頃、メッセージが届いたことを告げる音が鳴った。
《今日は帰りが遅くなるので待たずに寝ててください。ごめんね》
...迂闊だった。
木葉は今日がクリスマスイブだと知らない。
優しい彼ならきっと他の人の分まで仕事を受けるはずだ。
そうなれば帰りが遅くなるのは当然で...けれど私は待ち続ける。
(ケーキとローストビーフ、サラダと唐揚げは冷蔵庫に仕舞っておいて...あとのものは木葉が帰ってきてから温め直そう)
唐揚げをあげる前でよかったとほっとしつつ、今か今かと原稿を仕上げながら待ち続けた。
...時刻は12時になろうとしている。
それでもまだ彼は帰ってこない。
少し寂しさを覚えつつ、諦めようとしたそのときだった。
「ただい...え、何これ!?」
聞こえてきたのはそんな声。
やっぱり今でも気づいていないらしい。
「おかえりなさい。ご飯、これからもう少し時間がかかるから先にお風呂に入って」
「う、うん...」
明らかに戸惑っている。
そんな木葉を見るのは新鮮で...なかなか面白い。
「...熱っ」
眠気が残っているせいか、唐揚げを作るのに使っていたトングに手が当たってしまった。
(失敗したな...)
水で冷やしてガーゼで覆うようにしようとしたけれど、なかなか上手く貼れない。
苦戦していると、後ろから手が伸びてきた。
「火傷したの?」
「ちょっと失敗しちゃって...」
「手当ては僕がやるよ。...はい、終わり」
「ありがとう」
木葉は不思議そうに首を傾げている。
「ねえ、どうしてこんなに沢山の料理を用意してくれたの?」
やっぱり木葉は気づいていない。
「クリスマスイブだったから。...でも、木葉に話したら無茶をしてでも手伝おうとしてくれるんだろうなって思ったから、当日まで隠すことにしたんだ」
「え?」
「...それが秘密」
「今まで気づいてなかった...。去年までは、こんなふうにお祝い?したこともなかったから」
「私もだよ」
瞬間、木葉に抱きしめられる。
「全部僕の為に...ありがとう!」
この笑顔が見られれば、それだけで充分だ。
火傷の痛みも気にならないほど、この胸は想いで満たされている。
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