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隠暮篇(かくれぐらしへん)
ディナータイム
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まさかこんなことになるとは思っていなかった。
いつもならやることがないからと避けていたイベントを、恋人とふたりで過ごすことになるなんて思っていなかったのだ。
「その表情、やっぱり何の日か分からなかったんだね」
「ごめん。こういうことに無関心だったから...」
僕には人間の友人がいない。
そもそも、作ってこなかった。
もし吸血欲求が吸血衝動に変わって暴走してしまったら、それこそ取り返しがつかないことになる。
そう思うと、人間の近くにいようとは思えなかった。
──僕の全てを見ても動じなかった、目の前の恋人を除いて。
「すごく美味しい...体に沁みわたるよ」
「喜んでもらえてよかった」
七海は笑顔を浮かべて、そのまま食べはじめる。
自信がないのは表情から読み取れるが、何故ここまでしてくれるのだろうか。
「忘れないうちに渡しておきたいものがある」
「え?」
そのラッピングは既視感があるもので、ラッシュさんの店のものだとすぐに理解した。
「プレゼントまで用意してくれたなんて...ありがとう」
「どういうものがいいのか分からなくて、好みかどうかも微妙なところなんだけど...受け取ってもらえると嬉しいな。
人にプレゼントを選んだことなんてなかったから、ラッシュさんにちょっとだけ手伝ってもらったし大丈夫だとは思うんだけど...」
そうだ、七海だって同じはずだ。
視えすぎることに苦労してきた彼女が、友だちとパーティーなんてきっとしたことがなかったのだろう。
...それなら、この料理の量も納得だ。
「料理もどのくらい作ればいいのか分からなくて、結局やりたい放題になっちゃった」
「確かに今夜だけで食べきるのは難しいだろうけど、3日くらいに分ければ食べきれそうだよ」
「...お世辞抜きで楽しい?」
「うん!お世辞抜きですごく楽しい。僕、こうやって誰かとクリスマスイブを過ごすのって初めてだから...」
そう話すと、七海はまた嬉しそうに笑った。
「木葉の初めてをもらえるのは、すごく嬉しい」
「そう言ってもらえるとありがたいけど...明日は出掛けられそう?」
「うん、打ち合わせもないから...どうして?」
「それは明日のお楽しみ!」
唐揚げをひとつ箸でつまみ、そっと七海の唇に押し当てる。
「これはちょっと恥ずかしいよ...」
「...駄目?」
「駄目じゃない、けど、」
まだ何か言いたげだった七海の口に放りこむようにしていれると、顔を真っ赤にしながら咀嚼した。
「ほら、こうして食べるともっと美味しくなるよ」
「は、恥ずかしさで味が分からないよ...」
こんなふうに過ごせるときがくるなんて思っていなかった。
神々と月が光るなか、ふたりきりのパーティーは続いていく。
明日はどうやってお礼をしよう、そんなことも考えながらケーキをほおばった。
いつもならやることがないからと避けていたイベントを、恋人とふたりで過ごすことになるなんて思っていなかったのだ。
「その表情、やっぱり何の日か分からなかったんだね」
「ごめん。こういうことに無関心だったから...」
僕には人間の友人がいない。
そもそも、作ってこなかった。
もし吸血欲求が吸血衝動に変わって暴走してしまったら、それこそ取り返しがつかないことになる。
そう思うと、人間の近くにいようとは思えなかった。
──僕の全てを見ても動じなかった、目の前の恋人を除いて。
「すごく美味しい...体に沁みわたるよ」
「喜んでもらえてよかった」
七海は笑顔を浮かべて、そのまま食べはじめる。
自信がないのは表情から読み取れるが、何故ここまでしてくれるのだろうか。
「忘れないうちに渡しておきたいものがある」
「え?」
そのラッピングは既視感があるもので、ラッシュさんの店のものだとすぐに理解した。
「プレゼントまで用意してくれたなんて...ありがとう」
「どういうものがいいのか分からなくて、好みかどうかも微妙なところなんだけど...受け取ってもらえると嬉しいな。
人にプレゼントを選んだことなんてなかったから、ラッシュさんにちょっとだけ手伝ってもらったし大丈夫だとは思うんだけど...」
そうだ、七海だって同じはずだ。
視えすぎることに苦労してきた彼女が、友だちとパーティーなんてきっとしたことがなかったのだろう。
...それなら、この料理の量も納得だ。
「料理もどのくらい作ればいいのか分からなくて、結局やりたい放題になっちゃった」
「確かに今夜だけで食べきるのは難しいだろうけど、3日くらいに分ければ食べきれそうだよ」
「...お世辞抜きで楽しい?」
「うん!お世辞抜きですごく楽しい。僕、こうやって誰かとクリスマスイブを過ごすのって初めてだから...」
そう話すと、七海はまた嬉しそうに笑った。
「木葉の初めてをもらえるのは、すごく嬉しい」
「そう言ってもらえるとありがたいけど...明日は出掛けられそう?」
「うん、打ち合わせもないから...どうして?」
「それは明日のお楽しみ!」
唐揚げをひとつ箸でつまみ、そっと七海の唇に押し当てる。
「これはちょっと恥ずかしいよ...」
「...駄目?」
「駄目じゃない、けど、」
まだ何か言いたげだった七海の口に放りこむようにしていれると、顔を真っ赤にしながら咀嚼した。
「ほら、こうして食べるともっと美味しくなるよ」
「は、恥ずかしさで味が分からないよ...」
こんなふうに過ごせるときがくるなんて思っていなかった。
神々と月が光るなか、ふたりきりのパーティーは続いていく。
明日はどうやってお礼をしよう、そんなことも考えながらケーキをほおばった。
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