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隠暮篇(かくれぐらしへん)
推理
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通りすがりの人間たちに助けを求めることはしなかった。
...きっと誰だって関わりたくないだろうから。
「ごめん...怪我させてごめんね」
目の前にいたのに護れなかった...その事実に押し潰されそうだ。
だが、落ちこむよりも今は犯人について考えるのが先だと自らを奮い立たせる。
最低限の応急処置のみを済ませた七海を連れてようやく家まで辿り着いたが、まだ眠ったまま起きる気配がない。
少し不安に思ったが、あれだけのことがあったのだから心身の疲労が限界に達しても不思議ではないと思い直す。
「...犯人の狙いは何だろう」
僕を刺すつもりだったなら、あの場面でもう1度襲ってきたはずだ。
だが、あの女性は違った。
...任務を遂行しきれなかった表情をしていたのだ。
「...木葉?」
「目が覚めた?」
「私、いつから寝てた?」
「七海...ごめん」
答えになっていないのは分かっている。
だが、護ると約束したのにそれができなかったことへの申し訳なさの方が上だった。
「謝らないで。手当てまでしてくれて、本当にありがとう」
「お願いだから、もうあんな無茶しないで。もし七海がいなくなっちゃったら、僕は...」
包帯に囲まれた頬に伸ばした指先が、どうしても震えてしまう。
そんな僕のことを見て、七海は何も言わずに手を握ってくれた。
「大丈夫。私は勝手にいなくなったりしないから」
「...うん」
しばらくそうしていると、七海は遠慮がちに僕に訊いた。
「木葉、変な気配を感じていたんじゃない?」
「...気のせいだったのかもって思ったんだ。七海を不安にさせたくなくて、余計なことは言わないでおこうと思ったんだ」
それが裏目に出たのが今回なので、これに関してはどんな言葉を浴びせられても受け止めるつもりでいる。
だが、次に聞いた言葉は予想外のものだった。
「...実は、渡瀬さんと打ち合わせをしているときからあの気配はあった」
「え?」
「悪意を悪意と思っていないような、そんな雰囲気はすぐに理解した。
でも、何がしたいのかまでは分からなくて気にしないようにしてた」
ただ黙って言葉の続きを待っていると、そのまま興味深い証言を得ることができた。
「渡瀬さん、最近眠れないんだって言ってた。...よく分からないものが送られてきたり、後をつけられているような気がするって」
「...成程、そういうことか」
「木葉?」
キッチンに立とうとする七海を制止して、なんとか組みあがった仮説を彼女に話す。
はじめはきょとんとしていたが、やがて納得したように頷いた。
「それじゃあ、あの女の人の狙いって...」
「そういうことだと思う。取り敢えず、ご飯食べよう」
不安そうに頷く彼女に座っているままでいるように言って、材料を適当に選んで軽食を用意する。
「ごめん、きっとハンバーグの材料だったんだろうけど...」
「また今度作ろう。一緒に作ったら、きっともっと美味しいから」
「うん!」
ただの野菜炒めになってしまったそれを七海は残さず食べてくれて...とてもありがたい。
緊張がはしった夜、ほんの少しだけ平穏を取り戻した瞬間だった。
...きっと誰だって関わりたくないだろうから。
「ごめん...怪我させてごめんね」
目の前にいたのに護れなかった...その事実に押し潰されそうだ。
だが、落ちこむよりも今は犯人について考えるのが先だと自らを奮い立たせる。
最低限の応急処置のみを済ませた七海を連れてようやく家まで辿り着いたが、まだ眠ったまま起きる気配がない。
少し不安に思ったが、あれだけのことがあったのだから心身の疲労が限界に達しても不思議ではないと思い直す。
「...犯人の狙いは何だろう」
僕を刺すつもりだったなら、あの場面でもう1度襲ってきたはずだ。
だが、あの女性は違った。
...任務を遂行しきれなかった表情をしていたのだ。
「...木葉?」
「目が覚めた?」
「私、いつから寝てた?」
「七海...ごめん」
答えになっていないのは分かっている。
だが、護ると約束したのにそれができなかったことへの申し訳なさの方が上だった。
「謝らないで。手当てまでしてくれて、本当にありがとう」
「お願いだから、もうあんな無茶しないで。もし七海がいなくなっちゃったら、僕は...」
包帯に囲まれた頬に伸ばした指先が、どうしても震えてしまう。
そんな僕のことを見て、七海は何も言わずに手を握ってくれた。
「大丈夫。私は勝手にいなくなったりしないから」
「...うん」
しばらくそうしていると、七海は遠慮がちに僕に訊いた。
「木葉、変な気配を感じていたんじゃない?」
「...気のせいだったのかもって思ったんだ。七海を不安にさせたくなくて、余計なことは言わないでおこうと思ったんだ」
それが裏目に出たのが今回なので、これに関してはどんな言葉を浴びせられても受け止めるつもりでいる。
だが、次に聞いた言葉は予想外のものだった。
「...実は、渡瀬さんと打ち合わせをしているときからあの気配はあった」
「え?」
「悪意を悪意と思っていないような、そんな雰囲気はすぐに理解した。
でも、何がしたいのかまでは分からなくて気にしないようにしてた」
ただ黙って言葉の続きを待っていると、そのまま興味深い証言を得ることができた。
「渡瀬さん、最近眠れないんだって言ってた。...よく分からないものが送られてきたり、後をつけられているような気がするって」
「...成程、そういうことか」
「木葉?」
キッチンに立とうとする七海を制止して、なんとか組みあがった仮説を彼女に話す。
はじめはきょとんとしていたが、やがて納得したように頷いた。
「それじゃあ、あの女の人の狙いって...」
「そういうことだと思う。取り敢えず、ご飯食べよう」
不安そうに頷く彼女に座っているままでいるように言って、材料を適当に選んで軽食を用意する。
「ごめん、きっとハンバーグの材料だったんだろうけど...」
「また今度作ろう。一緒に作ったら、きっともっと美味しいから」
「うん!」
ただの野菜炒めになってしまったそれを七海は残さず食べてくれて...とてもありがたい。
緊張がはしった夜、ほんの少しだけ平穏を取り戻した瞬間だった。
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