73 / 258
隠暮篇(かくれぐらしへん)
唯一
しおりを挟む
「や、やったこと、ないから...」
「いいからいいから」
車椅子でも入れる設計になっているプリクラの機械を前に、恥ずかしがるシェリと押し問答していた。
「みんな包帯してるし、お揃いってことにしちゃえばちょっとは撮りやすいんじゃない?」
「わ...分かり、ました」
みんなというのはどういうことだろうと考えていると、木葉は一気に袖を捲る。
(...どうして今まで気づかなかったんだろう)
それは、かなり無茶をしながら一緒にいてくれている証だった。
あまりの申し訳なさに黙りこんでいると、木葉にそっと耳打ちされる。
「僕は大丈夫だから気にしないで」
全部お見通しなのを少し悔しく思いながら、負けじと彼のことをじっと見つめる。
(もっと考えていることが分かるようになれればいいのに)
なんとかシェリを説得して、3人で並んで写真を撮っていく。
ぱしゃぱしゃとシャッター音が鳴り響くなか、なんとかポーズを変えてみせる。
それから落書きをして楽しんで、気づいたときには空が茜色に染まろうとしていた。
「あの、ラッシュさ、から...」
「押していこうか?」
「1人でも、大丈夫、」
「...疲れてるでしょ?」
それくらいは見ていればすぐ分かった。
「えっと、あの、」
「それじゃあ僕が押していくよ」
「ありがとう、ございます」
色々な場所に行きすぎたかなと反省しながら、シェリの綺麗な笑顔がいつまでも心に残っていた。
「ありがとう、ございました」
「またね」
小さく手をふるシェリに手をふりかえしながら、じっと木葉を見つめる。
その表情には翳りがなく、吸血欲求に耐えている様子はない。
「七海」
「どうしたの?」
「僕のお願い、叶えてくれる?」
「私にできることなら」
「それじゃあ、これから僕とデートしてくれますか?」
胸がいっぱいになって言葉が詰まりそうになる。
はいとだけ答えて差し出された手を取ると、いつもより軽やかに木葉は歩き出した。
シェリもそうだったけれど、私の周りには笑顔が素敵な人たちで溢れている。
私に何が返せるのかなんて分からないけれど、これからもずっと側にいたい。
唯一の友人に、唯一の恋人...私には大切なものが沢山できた。
失う怖さも知っている分もう二度と離してしまわないように気をつけよう、そう思う。
「ここでご飯を食べていかない?」
「そうしよう」
「これで安心してご飯を食べられるね」
「...ありがとう」
周りにバカップルと思われてもいい。
寧ろそう思われるくらいの付き合い方をしていこう。
耳元で光るイヤーカフにそんな願いをこめながら、ふたり一緒にお店に入った。
「いいからいいから」
車椅子でも入れる設計になっているプリクラの機械を前に、恥ずかしがるシェリと押し問答していた。
「みんな包帯してるし、お揃いってことにしちゃえばちょっとは撮りやすいんじゃない?」
「わ...分かり、ました」
みんなというのはどういうことだろうと考えていると、木葉は一気に袖を捲る。
(...どうして今まで気づかなかったんだろう)
それは、かなり無茶をしながら一緒にいてくれている証だった。
あまりの申し訳なさに黙りこんでいると、木葉にそっと耳打ちされる。
「僕は大丈夫だから気にしないで」
全部お見通しなのを少し悔しく思いながら、負けじと彼のことをじっと見つめる。
(もっと考えていることが分かるようになれればいいのに)
なんとかシェリを説得して、3人で並んで写真を撮っていく。
ぱしゃぱしゃとシャッター音が鳴り響くなか、なんとかポーズを変えてみせる。
それから落書きをして楽しんで、気づいたときには空が茜色に染まろうとしていた。
「あの、ラッシュさ、から...」
「押していこうか?」
「1人でも、大丈夫、」
「...疲れてるでしょ?」
それくらいは見ていればすぐ分かった。
「えっと、あの、」
「それじゃあ僕が押していくよ」
「ありがとう、ございます」
色々な場所に行きすぎたかなと反省しながら、シェリの綺麗な笑顔がいつまでも心に残っていた。
「ありがとう、ございました」
「またね」
小さく手をふるシェリに手をふりかえしながら、じっと木葉を見つめる。
その表情には翳りがなく、吸血欲求に耐えている様子はない。
「七海」
「どうしたの?」
「僕のお願い、叶えてくれる?」
「私にできることなら」
「それじゃあ、これから僕とデートしてくれますか?」
胸がいっぱいになって言葉が詰まりそうになる。
はいとだけ答えて差し出された手を取ると、いつもより軽やかに木葉は歩き出した。
シェリもそうだったけれど、私の周りには笑顔が素敵な人たちで溢れている。
私に何が返せるのかなんて分からないけれど、これからもずっと側にいたい。
唯一の友人に、唯一の恋人...私には大切なものが沢山できた。
失う怖さも知っている分もう二度と離してしまわないように気をつけよう、そう思う。
「ここでご飯を食べていかない?」
「そうしよう」
「これで安心してご飯を食べられるね」
「...ありがとう」
周りにバカップルと思われてもいい。
寧ろそう思われるくらいの付き合い方をしていこう。
耳元で光るイヤーカフにそんな願いをこめながら、ふたり一緒にお店に入った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる