ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
77 / 258
隠暮篇(かくれぐらしへん)

翳り

しおりを挟む
「...ごめん」
木葉はいつも申し訳なさそうにする。
そんな必要なんてないのに、酷く傷ついた表情をするのだ。
私は血液を吸われるという行為に対して全く抵抗がない。
...自分でも不思議なのだけれど、全く怖くないのだ。
「気にしないで。...変だと思うけど、恋人の生きる糧になれるのは純粋に嬉しいから」
「七海...」
「それに、木葉に頼ってもらえるのもすごく嬉しいんだ」
普段からずっと木葉に頼りっぱなしになっている今、役に立てるチャンスは早々ない。
分担している料理の準備と掃除、そして洗濯...本当にこれくらいしかないのだ。
目の前で暗い顔をしている恋人に抱きついて、そのまま話を続ける。
「それに、毎回どきどきする。木葉が吸うのは私の血だけなんだと思うと、ちょっとだけ安心するんだ」
「安心?」
「これもおかしな話なんだろうけど、やっぱり嬉しさが勝っちゃって...今一緒にいるんだなって感じる」
木葉はいつだって痛くないように気をつけてくれるけれど、もっと痛くされても構わないと思っている。
これが独占欲というものだろうか。
「もし僕が七海を傷つけたらどうしようって、いつもそう思うんだ。
そしたらもう会えなくなっちゃうんじゃないかって、いつも不安になる」
抱きしめる力が強くなるけれど、腕が震えているのが分かる。
(そんなふうに思う必要なんてないのに...)
どうすれば不安を取り除けるだろう。
「ごめん、もう1回だけもらってもいい?」
「勿論。木葉にならいくらでもあげる」
瞳が翳っているのが見えて、私はただ抱きしめることしかできない。
首筋に牙が沈みこんでいくのを感じながら、背中にまわした腕の力を強めた。
「お願い、このまま離さないで...」
「は...煽ら、ないで」
まただ。体が熱を持つのを感じる。
それはきっと、相手が木葉だからだ。
彼以外の人にこんなことをするなんて考えられない。
「痛くない?」
「大、丈夫...」
夜が明けたら、明るい未来の話をしよう。
そうすればきっと、瞳の翳りも消し去ることができるはずだ。
「七海の血は甘いね...」
「そうなの?」
「いつも甘くて、我を忘れそうになる...」
半泣きの木葉を抱きしめなおして、首筋から離された唇にそっとキスをする。
「年越し蕎麦、一緒に食べようね」
「うん」
「それで毎年、ふたりで色々な楽しいことをしよう」
「...うん」
「私は、木葉と一緒にいられればそれだけでいいから」
「ありがとう...」
木葉が不安に思っているなら、それを全て消し去りたい。
...それが恋人の私だけにできる、唯一のことだと思うから。
「これから先も、愛してる」
「...僕も七海しか愛せないよ」
瞳の翳りはいつの間にか消えていて、贈られた優しい口づけは少しの鉄の味と甘さが混ざっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...