ハーフ&ハーフ

黒蝶

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隠暮篇(かくれぐらしへん)

賑やかな夜

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「ノワール、おいで」
木葉がお風呂に入っている間、烏について本やネットの知識を総動員してノワールの羽を綺麗にしていた。
「...これで大丈夫かな」
野生の鳥類保護法だったか、そんなものに抵触しているような気がするのだけれど...考えないことにした。
ノワールは正真正銘、木葉の大切な友人だ。
それならそれでいいと私は思う。
「...よかった、ちゃんと艶々になったね」
「七海、もしかしてノワールのお世話をしてくれたの?」
「私にできることがあるなら何でもやりたくて...迷惑だった?」
「全然そんなことないよ。寧ろありがとう」
かあ、と嬉しそうに鳴くノワールを見つめて部屋を出る。
ふたりの時間を邪魔するのは悪い、そう思ったからだ。
けれど木葉はすぐに追いかけてきてくれた。
「ノワールのことはいいの?」
「寝かしつけてきた」
「...今度やり方教えて」
「勿論だよ」
星が見える位置まで導かれて、そのまま横になってみる。
天窓に写る景色はやっぱり美しくて、たちまち心を奪われてしまった。
「どうしてこんなに落ち着くんだろう...」
「ここからの景色が?」
「うん。嫌なことを全部忘れられるような気がする」
隣で横になっていた木葉は、そっと手を握ってくれた。
「こうしていたら、もっと安心できる?」
「...うん。すごくほっとする」
「ほっとするついでに、温かいものでも飲まない?」
「ありがとう。いただきます」
ポットで沸かしたばかりのお湯を注いで作ってくれた紅茶は、いつもより甘く感じる。
やっぱり木葉が淹れてくれたものだからだろうか。
どんなに有名なお店で飲むものよりも世界で1番美味しいのだと思うと、何だか微笑ましくなってくる。
ただ、何度か飲んでいる間に甘さに覚えがあるような気がしてきた。
(...まさか)
「木葉、今クレールを入れた?」
「え、クレール?ただのシロップなら入れた、けど...」
歯切れが悪い言い方をする木葉の右手には、何かを隠し持っているのがすぐに分かった。
シロップの瓶にしてはあまりに小さすぎる。
「...木葉」
「ごめん、僕のだけに入れたつもりだったんだ。七海に不快な思いをさせたかった訳じゃ、」
「くすぐり倒してもいい?」
「ちょっと待って、それだけは本当に...」
堪えきれなくなったのか、木葉は声をあげて笑いはじめた。
彼の弱点は脇腹だというのは恋人同士になったばかりの頃から知っている。
きっかけはとても些細なことだったけれど、普段から完璧な恋人の数少ない可愛い一面だ。
「我慢なんかしなくていいのに」
「体調が悪い人から血をもらうなんて、そんなことできないよ」
「...ごめん。私の自己管理能力が足りてなかった」
そう呟いて俯くと、唇に何かが触れた。
「七海」
「...!」
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