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隠暮篇(かくれぐらしへん)
添い寝
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七海の名前を呼び、そっと口づける。
そしてそのまま、彼女の口の中にあるものを放りこんだ。
「これ、飴...?」
「美味しいでしょ?」
「き、キスしながら食べさせるのはちょっと狡い...」
だんだん声が小さくなっていく七海に、ごめんとだけ告げる。
間違えて彼女が飲む方にもクレールを入れてしまったのは僕の過失だし、とにかく笑ってほしかった。
「僕が今夜噛まなかったのにはまだ理由があるよ」
「...どんな?」
「ただ一緒にいたかったから」
七海に対する好きの中には、どうしても血がほしいが混ざっている。
だが、毎回その欲望に負けてしまうようでは彼女を傷つけるだけだ。
...ただ一生大切にしたいだけなのに、そんな些細なことがこんなにも難しい。
素直に思っていることを話しただけなのに、目の前には笑顔が広がっていた。
「どうして笑っているの?」
「木葉の気持ちが沢山聞けて嬉しかったから。でも...私は、木葉が隣にいてくれるだけで充分だよ」
心からの言葉を聞くとひどく安心する。
よかった、嫌われていなかったのだと。
だが、七海につけられてしまった顔の傷はまだ治りきっていない。
毎日ガーゼを換える度、申し訳なく思う。
本来なら僕が受けていたはずのものを、彼女が受けてくれたのだから。
「...痛む?」
「少しだけ。これくらいなら大丈夫だよ」
七海は強い。だが、僕からすればただの華奢な女性だ。
大切な人、最愛の人、自慢の恋人...どんなに言葉を尽くしても足りないくらい、僕の心は彼女への愛で溢れている。
「そろそろまた横になろうか」
「うん...?」
然り気無く腕枕をすると、七海は戸惑いつつも甘えるような仕草ですり寄ってきた。
それが可愛らしくて、鼓動が高鳴るのを止められない。
「どうして急に腕枕...」
「七海が優しいから」
答えになっていないとは分かっていても、そう返すしかなかった。
それ以外に答えなど持ち合わせていなかったから。
それに、シーツに頬がこすれたら痛むのではないか...そう考えると、腕の上の方がまだ痛みが少ないような気がする。
...あくまで僕の経験上だがそう思った。
「あと理由があるとすれば、こうやって抱きしめやすいからかな」
「木葉...っ」
「照れて真っ赤になるの、本当に可愛いね」
七海は真っ赤になった顔を見せないようにしながら、ちらちらとこちらに視線を向けてくる。
好きと同時に吸いたいがやってきてしまうほど、心が愛で満ち溢れていた。
「そろそろ寝ようか」
「...腕、痺れない?」
「大丈夫、僕意外と力持ちだから」
「理由になってないような...」
「僕がこうしたいから」
そう答えると七海は頬を林檎のように紅く染め、軽く動揺したように見えた。
その姿がまた愛しくて、唇にキスをおとす。
しばらくじゃれあっていたが、七海は本格的に眠くなってきたらしく...すやすやと寝息をたてはじめる。
眠れない夜、独りで過ごしていた頃は退屈で仕方がなかったが...こんな表情を独り占めできるなら、それも悪くないのかもしれない。
そしてそのまま、彼女の口の中にあるものを放りこんだ。
「これ、飴...?」
「美味しいでしょ?」
「き、キスしながら食べさせるのはちょっと狡い...」
だんだん声が小さくなっていく七海に、ごめんとだけ告げる。
間違えて彼女が飲む方にもクレールを入れてしまったのは僕の過失だし、とにかく笑ってほしかった。
「僕が今夜噛まなかったのにはまだ理由があるよ」
「...どんな?」
「ただ一緒にいたかったから」
七海に対する好きの中には、どうしても血がほしいが混ざっている。
だが、毎回その欲望に負けてしまうようでは彼女を傷つけるだけだ。
...ただ一生大切にしたいだけなのに、そんな些細なことがこんなにも難しい。
素直に思っていることを話しただけなのに、目の前には笑顔が広がっていた。
「どうして笑っているの?」
「木葉の気持ちが沢山聞けて嬉しかったから。でも...私は、木葉が隣にいてくれるだけで充分だよ」
心からの言葉を聞くとひどく安心する。
よかった、嫌われていなかったのだと。
だが、七海につけられてしまった顔の傷はまだ治りきっていない。
毎日ガーゼを換える度、申し訳なく思う。
本来なら僕が受けていたはずのものを、彼女が受けてくれたのだから。
「...痛む?」
「少しだけ。これくらいなら大丈夫だよ」
七海は強い。だが、僕からすればただの華奢な女性だ。
大切な人、最愛の人、自慢の恋人...どんなに言葉を尽くしても足りないくらい、僕の心は彼女への愛で溢れている。
「そろそろまた横になろうか」
「うん...?」
然り気無く腕枕をすると、七海は戸惑いつつも甘えるような仕草ですり寄ってきた。
それが可愛らしくて、鼓動が高鳴るのを止められない。
「どうして急に腕枕...」
「七海が優しいから」
答えになっていないとは分かっていても、そう返すしかなかった。
それ以外に答えなど持ち合わせていなかったから。
それに、シーツに頬がこすれたら痛むのではないか...そう考えると、腕の上の方がまだ痛みが少ないような気がする。
...あくまで僕の経験上だがそう思った。
「あと理由があるとすれば、こうやって抱きしめやすいからかな」
「木葉...っ」
「照れて真っ赤になるの、本当に可愛いね」
七海は真っ赤になった顔を見せないようにしながら、ちらちらとこちらに視線を向けてくる。
好きと同時に吸いたいがやってきてしまうほど、心が愛で満ち溢れていた。
「そろそろ寝ようか」
「...腕、痺れない?」
「大丈夫、僕意外と力持ちだから」
「理由になってないような...」
「僕がこうしたいから」
そう答えると七海は頬を林檎のように紅く染め、軽く動揺したように見えた。
その姿がまた愛しくて、唇にキスをおとす。
しばらくじゃれあっていたが、七海は本格的に眠くなってきたらしく...すやすやと寝息をたてはじめる。
眠れない夜、独りで過ごしていた頃は退屈で仕方がなかったが...こんな表情を独り占めできるなら、それも悪くないのかもしれない。
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