ハーフ&ハーフ

黒蝶

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追暮篇(おいぐらしへん)

閑話『独りだった神様の話』・弐

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それは突然のことだった。
「今日からここがおまえの部屋だ」
みんなに比べて質素な食事、ぼろぼろになった着物、ぼさぼさの髪...。
「あとひと月、いい暮らしをさせてやるから」
...お願い、ここから出たい。
「それ以外なら何でも叶えてやろう」
確かに閉じこめられてから生活が変わった。
綺麗な服に、毎日ひとりで入れるようになったお風呂...。
けれど、そのなかで食事の待遇は群を抜いていた。
...どうして出てはいけないの?
「逃げられては困るからだ」
そうして閉じこめられた後、私の体は動かなくなった。
どうやら病か何からしかったけれど、学に乏しい私には分からない。
ただ、不穏な声がはっきりと耳に届いたのは覚えている。
「これでようやく、長年の願いが叶う...!」
次に目を開けたとき、私は自らの異常さに気づいた。
「おお、神様...」
皆一様に私の姿を見てそう呼ぶ。
私が神様というのは、いったいどういうことだろう。
...もう死んだはずなのに。
「この家を反映させる為、どうかその力をお貸しください」
力?一体何の話をしているのだろう。
戸惑っていると、自分の手元に色々な道具が置いてあるのが目に入る。
扇に刀、大鎌...これで何をしろというのだろうか。
「まずはこの子の病を治してください」
「...何をすればいいの?」
「お神楽でも料理でも、この子にいいものなら何でもいいのです」
広い屋敷で独り、使用人のように料理をしていたことはある。
それでも、剣舞やお神楽の方が効果はありそうな気がした。
「...分かった」
昔、誰だったかにお神楽を教わったことがある。
だから、その子どもが治るようにとひたすら舞う。
訳が分からないまま、一晩中舞い続けて...漸く動きがあった。
子どもが目を覚ましたのだ。
「おお、ありがとうございます...!あなた様のおかげです」
「...私は何も」
「それでは、失礼いたします」
扉が少しだけ乱暴に閉められたけれど、特に気にならなかった。
自力でなんとか開けると、そこには見覚えのある顔がいくつかある。
「おまえはやっとできた神なんだ。...来るもの拒まず精進しなさい」
何も答えなかった。
人為的に造られた神なんて、偽りでしかない。
そのとき、ふとこの家の倉にあった古い書物の中身を思い出す。
【能力が高い人間はおぞましい。ならばそれを神に造り変えてしまおう】...そういうことだったのだと納得した。
「私、またこうしていないといけないんだ」
外では雨が降っている。
死んでも私は独りきりなのだと、孤独が心を蝕んでいくのを強く感じてしまう。
死んだ後でさえ自由でない現実と、それを知った絶望で私が穢れるのなんて早かった。
しばらくはお社の掃除だと人間が来ることもあったけれど、同じように力が強い人間以外は入れないように結界をはる。
...これが普通ではないことを生きているうちに知っていれば、あんなことにだけはならなかったのかもしれない。
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