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追暮篇(おいぐらしへん)
ホワイトデート
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「本当に綺麗だね」
何がとは言わずに目の前の絨毯と七海に目を向ける。
花びらが舞うなかで微笑む彼女は言葉では表現できないほど美しく、手を伸ばせば消えてしまいそうなほど儚げだった。
「ここでお弁当食べようか」
「そうだね。この時間帯なら誰も来ないだろうし...」
そう口にしながら、やはり申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
本当ならもっと早い時間からデートしたかったはずなのに、七海はいつも我儘ひとつ言わずに付き合ってくれているのだ。
たまにはもっと欲張りになってほしいと思うが、彼女の生い立ちを考えると何故我儘を言わないのか理由は分かっている。
...正確に言えば、言ってこなかった理由だが。
「木葉、ここに座ろう」
「こんなところにベンチなんてあったっけ?」
「この場所によく来る人たちから休める場所を作ってほしいって要望があったんだって。
できたのは割りと最近みたい」
僕もまだまだリサーチ不足だった。
まさかそんなことがあったなんて、一体どこから情報を手に入れたのだろう。
「すごく美味しそう...!」
「喜んでもらえてよかった。食べていたら、時間なんてあっという間に過ぎていきそうだね」
「そうだね...」
ふたり揃って両手をあわせ、いただきますとはっきり言う。
やはりとても美味しいものの、食べることに集中できずにいた。
「...そういえば、今日の服って新しいやつ?すごく可愛いね」
「あ、ありがとう...」
どんな些細なことでも七海のことなら気づける存在でありたい。
身を固くしていると、心配そうに眉を寄せる姿が目に入った。
「...木葉、また何か悩みごとがあるんじゃない?」
「本当になんでもお見通しだね」
何もないと誤魔化すこともできたが、それでは余計に彼女を不安にさせてしまう。
それならば、今考えていたことを話してしまった方がいいはずだ。
「...七海はいつも僕の事情につきあってくれて、何も返せていないのが申し訳ないなって思っていたんだ。
一緒にいたいけど、こんな超夜型生活だと一緒にいられる時間も少ないし...」
「駄目なの?」
「え?」
真剣な表情で七海が問い掛けてきた。
「一緒にいられるのは楽しい。愛しているから、大切だから側にいたい。それだけじゃ駄目なのかな...?」
「そ、れは、」
「もし私が超夜型で木葉が1日中動ける体だったら、嫌いになる?」
「ならないよ。だって、七海だから大切にしたいって思ってるから」
「...それと同じ」
時折感じてしまう不安にも、こうして真っ正面からぶつかってきてくれる。
抱きしめられたぬくもりを身を任せ、そのまま風の気配を楽しむ。
「それに、私は木葉から沢山のものをもらってるよ。...いつもありがとう」
瞬間、ざあっと風がふく。
高鳴る鼓動が伝わってしまいそうで少し体を離したものの、早咲きの夜桜のなかに咲き誇る笑顔が眩しくてそっと腕をまわした。
「木葉...?」
何がとは言わずに目の前の絨毯と七海に目を向ける。
花びらが舞うなかで微笑む彼女は言葉では表現できないほど美しく、手を伸ばせば消えてしまいそうなほど儚げだった。
「ここでお弁当食べようか」
「そうだね。この時間帯なら誰も来ないだろうし...」
そう口にしながら、やはり申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
本当ならもっと早い時間からデートしたかったはずなのに、七海はいつも我儘ひとつ言わずに付き合ってくれているのだ。
たまにはもっと欲張りになってほしいと思うが、彼女の生い立ちを考えると何故我儘を言わないのか理由は分かっている。
...正確に言えば、言ってこなかった理由だが。
「木葉、ここに座ろう」
「こんなところにベンチなんてあったっけ?」
「この場所によく来る人たちから休める場所を作ってほしいって要望があったんだって。
できたのは割りと最近みたい」
僕もまだまだリサーチ不足だった。
まさかそんなことがあったなんて、一体どこから情報を手に入れたのだろう。
「すごく美味しそう...!」
「喜んでもらえてよかった。食べていたら、時間なんてあっという間に過ぎていきそうだね」
「そうだね...」
ふたり揃って両手をあわせ、いただきますとはっきり言う。
やはりとても美味しいものの、食べることに集中できずにいた。
「...そういえば、今日の服って新しいやつ?すごく可愛いね」
「あ、ありがとう...」
どんな些細なことでも七海のことなら気づける存在でありたい。
身を固くしていると、心配そうに眉を寄せる姿が目に入った。
「...木葉、また何か悩みごとがあるんじゃない?」
「本当になんでもお見通しだね」
何もないと誤魔化すこともできたが、それでは余計に彼女を不安にさせてしまう。
それならば、今考えていたことを話してしまった方がいいはずだ。
「...七海はいつも僕の事情につきあってくれて、何も返せていないのが申し訳ないなって思っていたんだ。
一緒にいたいけど、こんな超夜型生活だと一緒にいられる時間も少ないし...」
「駄目なの?」
「え?」
真剣な表情で七海が問い掛けてきた。
「一緒にいられるのは楽しい。愛しているから、大切だから側にいたい。それだけじゃ駄目なのかな...?」
「そ、れは、」
「もし私が超夜型で木葉が1日中動ける体だったら、嫌いになる?」
「ならないよ。だって、七海だから大切にしたいって思ってるから」
「...それと同じ」
時折感じてしまう不安にも、こうして真っ正面からぶつかってきてくれる。
抱きしめられたぬくもりを身を任せ、そのまま風の気配を楽しむ。
「それに、私は木葉から沢山のものをもらってるよ。...いつもありがとう」
瞬間、ざあっと風がふく。
高鳴る鼓動が伝わってしまいそうで少し体を離したものの、早咲きの夜桜のなかに咲き誇る笑顔が眩しくてそっと腕をまわした。
「木葉...?」
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