152 / 258
追暮篇(おいぐらしへん)
花びらのワルツ
しおりを挟む
いつもより不安げに瞳を揺らす木葉を抱きしめていると、近くの茂みから音がする。
「だ、誰...?」
こんな夜中に人がいるはずもないのに、そんな言葉をかけてしまう。
そのとき、ざあっと風がふいてきてばさっと羽音がした。
それを聞いた木葉がぽつりと呟く。
「...ノワール」
「え、こんな時間に出掛けてたの?」
「ノワールも意外と夜型だから、この時間にいても不思議じゃないけど...」
木葉は困ったように笑って、自分の腕に止まらせる。
その姿が凛々しくて、何とも言えない感情がこみあげてきた。
「どうしたの、そんなにじっと見つめてきて...」
「かっこよすぎて、つい見とれちゃった」
「...いきなりそんな可愛いことを言うのは狡いよ」
顔を赤くして呟く木葉を見ていると、だんだん頬に熱が集まってくるのを感じる。
「お互い照れ照れだね」
「てれてれ...そうだね」
花をゆっくり楽しむこともできたし、ふたりで過ごせるのはやっぱり楽しい。
そんなことを考えながらあたりを見渡すと、小さなつむじ風のようなものがふいていた。
「ねえ、木葉。あそこ...すごく綺麗だね」
「すごい、あんなの初めて見た...」
少し散ってしまっていた花びらが、生きているかのように舞っている。
そんな様子をぼんやりと見つめていると、いつの間にか目の前に跪いた木葉に手を差し伸べられる。
「今なら誰も見てないし、もしよかったら一緒に踊りませんか?」
「私、そういうのはあんまりやったことがないんだけど...」
「大丈夫。エスコートなら僕がやるから」
ぐっと腰を引き寄せられ、そのまま木葉と同じような動きをとりながら少しずつステップを踏んでいく。
ただ、あまりにも歪で決していいものとは言えない。
(すごく難しい...)
それを軽々とこなしてしまえる木葉の体は、一体どうなっているのだろうか。
そもそも、舞踊はどこで覚えたのだろう。
...木葉について知らないことは、まだまだ沢山ある。
「どう?楽しくなってきた?」
「ぎこちなくしかできないけど、ちょっとだけ」
「こういうのは楽しんだもの勝ちだと思うんだ。...単純かもしれないけど、駄目かな?」
そう話す彼はやっぱり頼もしくて、私はただ頷くことしかできない。
こんな穏やかな時間が少しでも長く続いてほしい...そう思ってはいるけれど、不安なことも山積みだ。
「今だけは、僕のことを考えてて」
「...ありがとう」
しばらく躍り続けてもう1度座り直す。
からになったバスケットを握りながら、そっと空を見上げてみる。
いつも明るく照らしてくれる月は、雲に隠されてしまっていた。
「だ、誰...?」
こんな夜中に人がいるはずもないのに、そんな言葉をかけてしまう。
そのとき、ざあっと風がふいてきてばさっと羽音がした。
それを聞いた木葉がぽつりと呟く。
「...ノワール」
「え、こんな時間に出掛けてたの?」
「ノワールも意外と夜型だから、この時間にいても不思議じゃないけど...」
木葉は困ったように笑って、自分の腕に止まらせる。
その姿が凛々しくて、何とも言えない感情がこみあげてきた。
「どうしたの、そんなにじっと見つめてきて...」
「かっこよすぎて、つい見とれちゃった」
「...いきなりそんな可愛いことを言うのは狡いよ」
顔を赤くして呟く木葉を見ていると、だんだん頬に熱が集まってくるのを感じる。
「お互い照れ照れだね」
「てれてれ...そうだね」
花をゆっくり楽しむこともできたし、ふたりで過ごせるのはやっぱり楽しい。
そんなことを考えながらあたりを見渡すと、小さなつむじ風のようなものがふいていた。
「ねえ、木葉。あそこ...すごく綺麗だね」
「すごい、あんなの初めて見た...」
少し散ってしまっていた花びらが、生きているかのように舞っている。
そんな様子をぼんやりと見つめていると、いつの間にか目の前に跪いた木葉に手を差し伸べられる。
「今なら誰も見てないし、もしよかったら一緒に踊りませんか?」
「私、そういうのはあんまりやったことがないんだけど...」
「大丈夫。エスコートなら僕がやるから」
ぐっと腰を引き寄せられ、そのまま木葉と同じような動きをとりながら少しずつステップを踏んでいく。
ただ、あまりにも歪で決していいものとは言えない。
(すごく難しい...)
それを軽々とこなしてしまえる木葉の体は、一体どうなっているのだろうか。
そもそも、舞踊はどこで覚えたのだろう。
...木葉について知らないことは、まだまだ沢山ある。
「どう?楽しくなってきた?」
「ぎこちなくしかできないけど、ちょっとだけ」
「こういうのは楽しんだもの勝ちだと思うんだ。...単純かもしれないけど、駄目かな?」
そう話す彼はやっぱり頼もしくて、私はただ頷くことしかできない。
こんな穏やかな時間が少しでも長く続いてほしい...そう思ってはいるけれど、不安なことも山積みだ。
「今だけは、僕のことを考えてて」
「...ありがとう」
しばらく躍り続けてもう1度座り直す。
からになったバスケットを握りながら、そっと空を見上げてみる。
いつも明るく照らしてくれる月は、雲に隠されてしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる