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追暮篇(おいぐらしへん)
木葉の昔話
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翌日、私は家に帰っていいと許可をもらうことができた。
シェリたちにはもう1度直接謝って、なんとかいつもどおりの会話ができるようになっている。
「絶対安静だからな」
「分かりました。...ラッシュさん、ありがとうございました」
手をふるふたりに振り返しながら、松葉杖を使ってゆっくり歩く。
「大丈夫?」
「私はもう元気だよ」
犯人たちも無事逮捕され、事件は一件落着した...はずだ。
ただ、ここ数日木葉の様子が明らかにおかしい。
ケイトさんにも1度会うことはできたものの、そのときのふたりの間に流れる空気も変だった。
「...木葉」
「どうかしたの?」
私の歩幅にあわせてくれていた木葉は、辿り着いた玄関先で松葉杖の先の方をふいてくれた。
けれど、やっぱり様子がおかしいので思いきって訊いてみることにしたのだ。
「ケイトさんと何かあった?」
「それは...」
口ごもってしまった彼に向かって頭を下げる。
「お願い。どうしても話したくないなら仕方ないけど、できれば教えてほしい」
「七海...」
タオルを持っていた手が止まって、そっと私の体を支えてくれた。
「それならお茶にしよう。...玄関先で話せるようなことじゃないから」
そうして、久しぶりのお茶会がはじまった。
短い沈黙の後、木葉はゆっくり丁寧に言葉を並べていく。
「...僕の父親は、人間に殺されたんだって」
「え...事故で死んだって話してなかった?」
「みんなが僕だけに話さないようにしてたんだって。そんなことを知ったら人間に馴染めなくなるから...人間を嫌いになるかもしれないからって」
人間は時として残酷だ。
ヴァンパイアのケイトさんと、人間だった木葉のお父さん。
ふたりの恋が難しいものだったことは何となく想像できる。
だが、殺人がおこるというのは穏やかではない。
(どうして殺されてしまったんだろう)
そんなことはとても訊けないけれど、ただ彼の真っ直ぐな言葉を聞きたいと視線を向ける。
「僕の父親は、母を庇ったんだって。...それがおこったのがこの前の犯人たちの先祖との間だったみたい」
「そう、だったんだ...」
木葉の心は泣いている。
空も同じように泣いているようで、私はただ目の前の体を抱きしめることしかできない。
「...私のこと、嫌いになった?」
「ならないよ。ならないけど...みんなが話してくれなかったのは、ちょっとだけ複雑なんだ。
僕の為だってことは分かるけど、やっぱりちょっと悲しい」
肩が震えているのがなんとなく分かる。
抱きしめている腕に力をこめると、それ以上の強さで抱きしめかえされた。
複雑な彼の心を、どうすれば救えるだろう。
今はただ、こうして側にいることしかできない。
...それがなんだか、とてももどかしかった。
シェリたちにはもう1度直接謝って、なんとかいつもどおりの会話ができるようになっている。
「絶対安静だからな」
「分かりました。...ラッシュさん、ありがとうございました」
手をふるふたりに振り返しながら、松葉杖を使ってゆっくり歩く。
「大丈夫?」
「私はもう元気だよ」
犯人たちも無事逮捕され、事件は一件落着した...はずだ。
ただ、ここ数日木葉の様子が明らかにおかしい。
ケイトさんにも1度会うことはできたものの、そのときのふたりの間に流れる空気も変だった。
「...木葉」
「どうかしたの?」
私の歩幅にあわせてくれていた木葉は、辿り着いた玄関先で松葉杖の先の方をふいてくれた。
けれど、やっぱり様子がおかしいので思いきって訊いてみることにしたのだ。
「ケイトさんと何かあった?」
「それは...」
口ごもってしまった彼に向かって頭を下げる。
「お願い。どうしても話したくないなら仕方ないけど、できれば教えてほしい」
「七海...」
タオルを持っていた手が止まって、そっと私の体を支えてくれた。
「それならお茶にしよう。...玄関先で話せるようなことじゃないから」
そうして、久しぶりのお茶会がはじまった。
短い沈黙の後、木葉はゆっくり丁寧に言葉を並べていく。
「...僕の父親は、人間に殺されたんだって」
「え...事故で死んだって話してなかった?」
「みんなが僕だけに話さないようにしてたんだって。そんなことを知ったら人間に馴染めなくなるから...人間を嫌いになるかもしれないからって」
人間は時として残酷だ。
ヴァンパイアのケイトさんと、人間だった木葉のお父さん。
ふたりの恋が難しいものだったことは何となく想像できる。
だが、殺人がおこるというのは穏やかではない。
(どうして殺されてしまったんだろう)
そんなことはとても訊けないけれど、ただ彼の真っ直ぐな言葉を聞きたいと視線を向ける。
「僕の父親は、母を庇ったんだって。...それがおこったのがこの前の犯人たちの先祖との間だったみたい」
「そう、だったんだ...」
木葉の心は泣いている。
空も同じように泣いているようで、私はただ目の前の体を抱きしめることしかできない。
「...私のこと、嫌いになった?」
「ならないよ。ならないけど...みんなが話してくれなかったのは、ちょっとだけ複雑なんだ。
僕の為だってことは分かるけど、やっぱりちょっと悲しい」
肩が震えているのがなんとなく分かる。
抱きしめている腕に力をこめると、それ以上の強さで抱きしめかえされた。
複雑な彼の心を、どうすれば救えるだろう。
今はただ、こうして側にいることしかできない。
...それがなんだか、とてももどかしかった。
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