ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
204 / 258
遡暮篇(のぼりぐらしへん)

私の昔話

しおりを挟む
「どうしてそんなことが...」
同じ家の人間に追われる、その感覚が当時の私には理解できていなかった。
何も悪いことをしていないのにどうして私が隠れ住むことになったのか、何故よく思われていないのか...まずはそこから説明する必要がある。
「ゆっくりでいいから」
「...ありがとう」
つい数日前の出来事を思い出しながら、とうとうこの日がきたかと思うと震えが止まらない。
「...母が疎まれていたことは話したことがあったよね?」
「うん、ちゃんと覚えてるよ。お母さんは力が強い人だったから、家の人間によく思われてなかったんだって」
「...私も疎まれていた。でも、それだけじゃなかったんだ」
木葉の不安そうに揺れる瞳を見つめながら、私はゆっくり言葉を並べていく。
『なんて気味の悪い子なの!近寄らないで!』
私は、自分の視える力が強すぎることに気づいていなかった。
それしか知らなかった私にとっては普通のことで、みんな同じなんじゃないかと思っていたのだ。
(今思うとそんなはずないのに)
自虐的になりながら、少しずつ説明していく。
はじめは不安そうだった目の前の瞳は、どんどん驚きの色を帯びていった。
「他の人たちには美桜さんのことが認知できなかったから、親戚の家に預けられた。
...でも、それが悪夢のはじまりだったのかもしれない」
「そんなことが、許されるはずがない」
「私はみんなにとって気持ち悪い子になっちゃったんだ。...神子の子でさえ何も感じ取れていなかったから」
これは私にとって嫌な記憶だ。
そんななか、たったひとつの光がさしたのを思い出す。
「でもひとりだけ、私のことを信じてくれた人がいたんだ。...死んでしまったけど、後見人の名前にはその人の名前が載ってるはず」
「それで、今まで遺族年金で暮らしてきたの?」
「母の貯金やその人がくれたお金も使って、お料理は教えてもらっていたからちゃんとできたし...」
特に困ったことはなかった。
学校に提出する家族構成にはいつも無しと記載して、辛いと思ったことには蓋をして...そうしているうちに独りでいることに慣れたのだ。
「今は幸せだけど、時々過去のことを思い出すと辛くなる。...でも、私には木葉がいてくれるから」
そこまで話したところで強い力で抱きしめられる。
「僕が家族の話をしたとき、羨ましいなって顔をしてたのは分かってた。
あのときは理由が分からなかったけど、今ならちゃんと分かる気がする。...大切な人と何度も別れを経験して辛かったね」
木葉はいつも褒めてくれる。
それがどんなに小さなことでも、いつだって褒めてくれるのだ。
「頑張ってきたんだね」
その一言に、涙が止まらなくなる。
自分では分からないことが、木葉と一緒にいるだけで少し理解できる気がするのだ。

──私は頑張れているのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...