王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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彼目線のストーリー

腕の中の温もり(錬・第2話)

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本当に、心臓が止まるかと思った。
♪(黒羽...)
漢字もほとんど書けない。
海に何も着ずに倒れていた、不思議な女の子。
でも気づいたら、後先考えずに体が動いていた。
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「誰か...」
♪「!」
間違いない。彼女だ。
「錬...!」
♪(1番に呼んでほしいって言ったの、覚えててくれたんだ...)
♪「...僕の彼女に何の用だ?」
許さない。彼女をこんなに泣かせて...。
彼女をこんなに怯えさせて...。
彼女はどうやら足が痛むらしい。
♪(...よし!)
抱きあげて、町を駆け抜ける。
ゴロツキなんて、動きが遅すぎる。
♪(本当はもっとボコボコにしてやりたいけど...)
黒羽が怖がる顔を見たくない。
だから逃げるのに必死だった。
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♪(彼女、温かいんだな...)
腕の中にはポカポカとしたぬくもり。
♪(まるで、太陽みたいだ...)
このぬくもりを、離したくないと思った。
「あの!もう、歩けるから...」
そう言われてはっとする。
♪「...うわああああ!ごめん、本当にごめん!」
彼女をおろす。
♪(あれ?なんでだろう...)
離れたく、ない。
ずっと守っていたい。
次は一緒に海に行こうと約束した。
手を繋いだときも感じたぬくもりの正体を、黒羽どころか彼さえもまだ知らない...。
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