未熟な蕾ですが

黒蝶

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「おまたせしました!」
なかなかバスが来なくて時間がかかっちゃったけど、誰も私たちを責めないでいてくれた。
「大丈夫大丈夫!そもそも今日は休みなんだし、もっとゆっくりでもよかったくらい」
「夕飯まだなら一緒に食べましょう。丁度完成したところなの」
「ありがとうございます」
まだ渡せるタイミングじゃなさそうだから、用意してくれていた夕飯をありがたくいただくことにした。
「いただきます」
カレーは少し甘めで食べやすいし、スープは野菜たっぷりで美味しい。
「…どう?口に合わなかったら遠慮なく言って」
「いえ、とっても美味しいです!…ね、白露」
《…こういう料理もあるのか》
「白露、カレー食べたことなかったの?」
《食事を摂ること自体なかったからな》
「そうなんだ。…あ、じゃあこれは?このおせんべい、すっごく美味しいんだって」
瞬君からもらった真っ白なせんべいを一口食べて、白露はまた驚いた様子だった。
和菓子より洋菓子を食べることの方が多いから、せんべいを口に入れること自体が初めてなんだろう。
《…悪くない》
「でしょ?僕も好きなんだ、こういうの」
「ちび、そのせんべいって駅前のやつか?」
「多分そうだと思う。…よく知らないけどね」
美味しくご飯を食べているうちに桜良先輩が席を立つ。
「あ、桜良先輩」
「…?どうかしたの?」
「これ、よかったら受け取ってください」
「ありがとう。今夜の夜仕事が終わったら開けてみる」
「ふたりにも買ってきたよ。どうぞ」
「「ありがとう!」」
桜良先輩から放送室に辿り着いたと連絡がきたところで、早速新校舎の見回りをはじめた。
「今夜は妖が多いね」
「おまえもそう思う?新校舎でこれだもんな…」
ポケットで何かが揺れるのを感じてスマホを見ると、お姉ちゃんから連絡がきていた。
【今来ている学園で流行っている噂があるから念のため伝えておく】
似たような内容の噂が流行っているみたいで、グループチャットを見た陽向君が苦笑していた。
「両方に繋がりがあるのかないのか…」
「どのみちまずいんじゃない?」
「放ってはおけないし、しっかり調べた方がいいんだろうけどな…」
陽向君はそう言って足を止める。
「白露、穂乃ちゃん連れて放送室まで走ってくれる?」
《…了解した》
「え?」
「大丈夫。後で追いつくから」
訳が分からないまま白露に抱きかかえられて、そのまま風のような速さで移動する。
何かいたのかもしれないし、やらないといけないことがあったのかもしれない。
はっきりしたことは分からないけど、このまま逃げていいのか分からなかった。
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