未熟な蕾ですが

黒蝶

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第28話

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不死身男に言われたとおり放送室まで向かおうとしたが、途中で攻撃を仕掛けられた。
「わっ…」
《キシシシシシ!》
ふりきることも考えたが、相手の強さが分からない以上応戦した方がいいと判断する。
主を壁際におろし刀を構えた。
《ここから撃て》
「え?」
《キシシシ!》
相手は主を狙うと思ったが、俺に向かって突進してくる。
「白露!」
《構うな。撃て》
主が撃ってこないのではと思ったが、覚悟を決めた目でこちらを見つめる。
勢いよく放たれた水は傀儡の体を包みこみ、そのまま灰と化していった。
《ギャア!》
《…すぐ終わる》
相手は言葉を発することなく姿を消した。
「ごめんなさい。白露に当たらないように狙いを定めたんだけど、大丈夫だった?」
《問題ない》
「そっか。よかった…」
安堵の声を漏らしながらもその手は震えていて、全く大丈夫そうではない。
その手を握ると、少し戸惑った様子で主は顔をあげた。
「白露…?」
《気丈に振る舞う必要はない》
「…こうするしかないって分かっていても、やっぱり慣れないんだ。相手の苦しそうな声を聞く度に、本当によかったのか分からなくなる」
俺にとっては当たり前だった世界は、おそらく多数の人間たちにとって常軌を逸したものだと知った。
人間の心というものをあまり理解できていないが、そういった場合何をすればいいか漠然と想像できている。
《…知らない多数を救えているかもしれない》
「知らない多数?」
《先程の状況でおまえが撃てなければ逃げられていた。そうなれば、新たな犠牲を生んでいただろう。
…傀儡も生者を傷つけずにすんだと思えば、悪いことではないはずだ》
「今止めたから、未来で影響を受けていたかもしれない人たちを助けられたってこと?」
《夜紅ならそう言う》
「…白露もそう思う?」
《正直に言ってしまうとよく分からない。…だが、先程の選択が間違っているとは思っていない》
こんな言葉で納得させられるか分からなかったが、主は小さく呟いた。
「そっか。…だからお姉ちゃんはあんなに悔しそうにしてたんだ」
《悔しそう?》
「うん。実は──」
夜紅も言葉が通じない相手で理性が失われていると判断した場合は祓っているらしい。
だが、はじめは迷いが生じていたと聞かされたようだ。
「今でももっと早く見つけられたら助けられたのにって思うこともあるって言ってたんだ。…やっぱりお姉ちゃんの言葉は重みがあるね」
主に背負わせまいと気をつけているのだろう。
夜紅が様々な武器を使いこなしつつ最後まで相手を見届けているのは、自らの攻撃を受け止めるためかもしれない。
「ありがとう白露。そろそろみんなと合流しようか」
《了解した》
そのまま後を追うが、その背に先程までの絶望感はない。
…先程のあれについて、主に気づかれないよう報告しなくては。
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