未熟な蕾ですが

黒蝶

文字の大きさ
50 / 78

第3項

しおりを挟む
「…ちょっと下がってなさい」
「どうして、」
あまりに突然の攻撃に、私はその場でふせることしかできなかった。
《キシシシ!》
いつもより数が多い。群れだろうか。
「この子に手を出したら消すわよ」
結月は大きな爪で相手を引き裂く。
それでも全然怯んでいる様子はない。
「まったく、これだから無感情の相手は…」
放送室に入り切らないと助けを呼べないけれど、ここを離れている間に結月が致命傷を負ってしまったら打つ手がない。
「私のことはいいから中に入りなさい」
「……」
「桜良!」
覚悟を決めてその場に立つ。
呪いのようなこの力を見せても、みんなは私をただの人として扱ってくれた。
あまり戦闘向きではないとはいえ、大切な仲間ひとり護れないでどうする。
「来ないで」
詩乃先輩から分けてもらったお札と、室星先生からもしものときにと渡されていた細い糸。
炎を出したりはできないけれど、加護の力なら穂乃さんにも負けない。
《キシ、シ…?》
相手が怯んだすきに結月の体を引っ張って、入ってこられないように結界をはる。
「ちょっと、何して、」
「あなたを置いていくなんてできない」
「あんたねえ……。まあ、でも、助かったわ。ありがと」
破られないだろうと思っていたけど、思ったより相手が強くなっているらしい。
噂の広がりが早いからか、第2形態のようなものがちらちら見え隠れしている。
「……あ」
結界が崩れると同時に、何かが私の前に立ち塞がった。
その瞬間目にうつったのは、大切な人の笑顔と舞い散る血しぶき。
「なん、で、」
「いやあ、ピンチっぽい、なって…間に合った、よかっ、た」
毎回陽向が痛い思いをするのが嫌で使えるようになりたかったのに、また護れなかった。
「【消えて。こちらに戦う意思はない。お願いだから、みんな消えて】」
視界が滲む。目の前がどうなっているかも把握できていない。
「おねが、」
「桜良」
「……死なないでって言ったのに」
「ごめん」
血を吐きながら私の頬に触れた手はとても温かくて、後悔の波が押し寄せてくる。
「謝るのは私の方。ごめんなさい」
「いいって。俺が、好きでやったこ、とだし…」
ゆっくり瞼がおりるのが見えて、泣きそうになってしまう。
「私の声じゃ届いてなかったから、ちゃら男に頼んだの」
「…ごめんなさい」
「ああ、もう!そんな辛気くさくなる必要ないの!布団で寝かせないといけないでしょ?運ぶわよ」
「…そうね」
できるだけ陽向の体を傷つけないように気をつけながら、放送室に運びいれる。
どうして陽向はこんなにぼろぼろになるまで戦ってしまうんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...