48 / 133
第3幕
幸福模様の雨上がり☆
しおりを挟む
「佐藤、準備を...って、二人ともびしょ濡れじゃない!いつもの更衣室にタオルあるから取り敢えずそれ使って...!」
「ありがとうございます」
私は真昼に手をひかれて、導かれるままに一番奥の普段は誰も使っていない更衣室に入っていく。
「ちょっとそこ座ってろ」
「...うん」
真昼はなれた手つきでタオルを出し、私の髪を優しく拭いてくれる。
「自分でやるから大丈夫...」
「いいからやらせろ」
わしゃわしゃとタオルを揺らす真昼に、私は聞いてみた。
「真昼」
「ん?」
「どうしてタオルの場所知ってたの?」
「ああ、それは...」
少しばつが悪そうにしながらも、ぼそっと呟いた声を聞き逃さなかった。
「びしょ濡れになったことがあるから」
「傘、持ってなかったの?」
「ああ、雨が降ってたわけじゃなくて...反対側からきてた自転車を避けたら、自動車に水溜まりの泥水をおもいっきりかけられた」
一瞬どういうことか分からなくて止まってしまったけれど、なんとなく理解した。
「真昼の優しさからだね」
「別に、普通に避けただけだし。...ただまあ、運がなかったというか、なんというか。そのときも店長がタオルかしてくれて、それで場所覚えてた」
「そうなんだ...」
どうしてか、少しだけほっとする。
...その答えはなんとなく分かっていたけれど、そっと胸にしまっておくことにした。
「ほら、もっと拭いてやろうか?」
わしわしと拭かれた私はもうだいぶ乾いてきていて、寧ろ真昼の方が濡れていた。
「今度は私が真昼を拭く」
「え、あ、おい...」
真昼がやってくれたようにわしわしと拭いていると、くすぐったそうに笑っていた。
「なんか、ちょっと...っ」
「もっと拭いてあげる」
「ほんと、もう、限界...っ」
ぱし、と私の手首が掴まれる。
そしてそのまま、私の頭へともっていかれた。
「待って、私はもう...ふふ」
「...やっと笑ったな」
「え?」
「なんでもない。俺は自分でやるから、もう大丈夫だ」
「...そっか、残念。もっとやりたかった」
真昼は私の方を見て、はっとした表情を見せる。
「これ、今日一日着てろ」
「どうして...?」
「なんででも」
それ以上は話してくれなかったけれど、鏡にうつった自分の姿を見て気づいた。
「真昼」
「どうした?」
「...ありがとう」
「別に」
心が温かくなっていくような感じがする。
それもこれもきっと、真昼だけが使える魔法だ。
私の心に少しだけ光がさしたような気がして小窓から空を見あげると、いつの間にか晴れ渡っていた。
「ありがとうございます」
私は真昼に手をひかれて、導かれるままに一番奥の普段は誰も使っていない更衣室に入っていく。
「ちょっとそこ座ってろ」
「...うん」
真昼はなれた手つきでタオルを出し、私の髪を優しく拭いてくれる。
「自分でやるから大丈夫...」
「いいからやらせろ」
わしゃわしゃとタオルを揺らす真昼に、私は聞いてみた。
「真昼」
「ん?」
「どうしてタオルの場所知ってたの?」
「ああ、それは...」
少しばつが悪そうにしながらも、ぼそっと呟いた声を聞き逃さなかった。
「びしょ濡れになったことがあるから」
「傘、持ってなかったの?」
「ああ、雨が降ってたわけじゃなくて...反対側からきてた自転車を避けたら、自動車に水溜まりの泥水をおもいっきりかけられた」
一瞬どういうことか分からなくて止まってしまったけれど、なんとなく理解した。
「真昼の優しさからだね」
「別に、普通に避けただけだし。...ただまあ、運がなかったというか、なんというか。そのときも店長がタオルかしてくれて、それで場所覚えてた」
「そうなんだ...」
どうしてか、少しだけほっとする。
...その答えはなんとなく分かっていたけれど、そっと胸にしまっておくことにした。
「ほら、もっと拭いてやろうか?」
わしわしと拭かれた私はもうだいぶ乾いてきていて、寧ろ真昼の方が濡れていた。
「今度は私が真昼を拭く」
「え、あ、おい...」
真昼がやってくれたようにわしわしと拭いていると、くすぐったそうに笑っていた。
「なんか、ちょっと...っ」
「もっと拭いてあげる」
「ほんと、もう、限界...っ」
ぱし、と私の手首が掴まれる。
そしてそのまま、私の頭へともっていかれた。
「待って、私はもう...ふふ」
「...やっと笑ったな」
「え?」
「なんでもない。俺は自分でやるから、もう大丈夫だ」
「...そっか、残念。もっとやりたかった」
真昼は私の方を見て、はっとした表情を見せる。
「これ、今日一日着てろ」
「どうして...?」
「なんででも」
それ以上は話してくれなかったけれど、鏡にうつった自分の姿を見て気づいた。
「真昼」
「どうした?」
「...ありがとう」
「別に」
心が温かくなっていくような感じがする。
それもこれもきっと、真昼だけが使える魔法だ。
私の心に少しだけ光がさしたような気がして小窓から空を見あげると、いつの間にか晴れ渡っていた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる