峽(はざま)

黒蝶

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終幕

覚悟と勇気☆

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「は...?」
その場がしん、として、静寂が流れる。
...本当は怖い。怖くて仕方がない。
けれど、それでも私は言葉を続けた。
「私にとっての友人というのは、見た目じゃなくて中身を見てくれる人で...人の悪口を言って楽しむ相手のことじゃない」
「千夜?いきなりどうしてそんなことを、」
「舞花。私は、可哀想なんかじゃないし、あなたの引き立て役じゃない」
「...!」
舞花は本当に何も知らなかったと思っていたようで、動揺しはじめた。
「違うの、千夜が可哀想だっていう意味じゃなくて、ただ独りで可哀想だなっていう意味で、」
「言ってること、矛盾してる。私は独りだった。舞花にとっての私が引き立て役だと分かったときからずっと...」
息を呑む気配がするけれど、それでも言葉を続ける。
「でも、今の私にはこんなにも優しい人がいて、友だちも、恋人も、カフェの人たちも...大切な人が沢山できたよ」
震えそうになるのを必死に堪えながら、思いきり告げた。
「舞花とはもう一緒にいられない。私は、無価値な私を理解しようとしてくれて、色々な優しさを持っている人たちと生きていく。今までありがとう」
黙っていた舞花が口を開いた。
「...どうして?あんなに優しくしてあげたのに、人気者の私が一緒にいてあげたのに、暗いあなたを側においてあげたのに、どうしてそんなこと言うの!?」
大声で言われて、肩がびくっとはねる。
けれど、ここで引き下がるわけにはいかない。
「本当に友だちだと思ってるなら、私の友だちを傷つけたりしない。...舞花に悪気がないのは分かってるけど、私はすごく傷ついた」
傷つけられたから傷つける、なんていうやり方はしない。
今日ここで、全てを終わらせる。
私はもう、独りじゃないから。
「沢山考えて出した答えだから。...もう話すことはない。お願いだから、私に関わらないで。それから、どれだけ私を傷つけてもいいけど周りの人を傷つけるのは許さない」
...喉が渇いてくるのが分かる。
限界が近いのに、舞花と取り巻きは下がる気配がない。
(染さんにちゃんと謝りたいし、早く呑まないと...)
「おまえ、舞花に何言い出すんだよ!」
拳が飛んでくるのが見える。
(...駄目、避けられない...)
殴ろうと飛んできていた手が宙で止まる。
私の後ろから手が伸びてきているのが目にはいる。
「さっきから黙って聞いてたけど、なんて言ってる時点でそれは友だちじゃない」
振り返ると、そこには真昼が立っていた。
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