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終幕
見境つかぬ状態★*
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「んん...」
「千夜」
起きたらしい千夜に声をかけてみるが、なんだか様子がおかしい。
「...っ、はあ」
なんとか連れ帰ったのはいいものの、千夜は錯乱しているような状態だった。
あれだけのストレスがかかったのだ、分からなくもない。
「駄、目...」
「千夜?」
「今、近寄らな、で...」
かたかたと震える千夜は、まるで何かに飢えているような様子だった。
(...予想どおりか)
「俺は大丈夫だから」
目を合わせたまま、台所の包丁を手に握る。
「まひ、る...」
今にも泣き出しそうな声で、表情で、こちらに視線を向けている。
一人になりたいのだろうと...喉を潤したいのだろうということは分かる。
だがこれは...俺なりの贖罪だ。
「...っ、ほら、呑め。いいから、思いきり呑め」
俺を赦さなくてもいい。
怒ってもいい。
だから今は、俺にできることをさせてほしい。
「ごめ、ごめん、なさい...」
やはり限界だったらしく、俺が傷をつけた方の腕にかぶりついてくる。
「...っ!」
正直、今までの比にならないほど痛みを感じる。
だが、俺はそれを受け入れるべきだ。
千夜からあの女と話す機会を奪い、友人も千夜も護れず動かなかったのだから。
それに、好きな奴の為になれるなら、いくらでもこの身を差し出す。
「...はあ、もう少し」
「好きなだけ、呑め」
少しだけ変な気分になってきたが、そんなことは関係ない。
なんとかしてやりたい...とにかく今は、それしか頭にない。
(それにしても、本当に少し恥ずかしくなってきた)
だんだん照れで頬に熱が集まるのを感じる。
「真、昼...」
「大丈夫、だから...満足するまで呑め」
その瞳には、少しずつ理性が戻りはじめている。
...どのくらいそうしていただろうか。
(まずいな、このままだと...)
少し辛くなってきた。
だんだんふらふらしてきて、視界が暗くなったりもしている。
だが、ここで踏みとどまれなければ千夜を傷つけることになる。
(もう少し耐える、絶対に...!)
「真昼、私...」
「満足、したか?」
千夜の瞳には動揺が広がっている。
何か言わなければと思うものの、何と声をかければいいのか分からない。
...いや、それを考えるほどの力が残っていなかった。
「俺は大丈夫だから。...今日のところはここでゆっくり休んでいけ」
ようやく出たのはそんな言葉で、そのまま自分の部屋に倒れこむように入る。
そしてそのまま、意識が途切れそうになる。
その瞬間、頬に雫が降ってきた。
「千夜」
起きたらしい千夜に声をかけてみるが、なんだか様子がおかしい。
「...っ、はあ」
なんとか連れ帰ったのはいいものの、千夜は錯乱しているような状態だった。
あれだけのストレスがかかったのだ、分からなくもない。
「駄、目...」
「千夜?」
「今、近寄らな、で...」
かたかたと震える千夜は、まるで何かに飢えているような様子だった。
(...予想どおりか)
「俺は大丈夫だから」
目を合わせたまま、台所の包丁を手に握る。
「まひ、る...」
今にも泣き出しそうな声で、表情で、こちらに視線を向けている。
一人になりたいのだろうと...喉を潤したいのだろうということは分かる。
だがこれは...俺なりの贖罪だ。
「...っ、ほら、呑め。いいから、思いきり呑め」
俺を赦さなくてもいい。
怒ってもいい。
だから今は、俺にできることをさせてほしい。
「ごめ、ごめん、なさい...」
やはり限界だったらしく、俺が傷をつけた方の腕にかぶりついてくる。
「...っ!」
正直、今までの比にならないほど痛みを感じる。
だが、俺はそれを受け入れるべきだ。
千夜からあの女と話す機会を奪い、友人も千夜も護れず動かなかったのだから。
それに、好きな奴の為になれるなら、いくらでもこの身を差し出す。
「...はあ、もう少し」
「好きなだけ、呑め」
少しだけ変な気分になってきたが、そんなことは関係ない。
なんとかしてやりたい...とにかく今は、それしか頭にない。
(それにしても、本当に少し恥ずかしくなってきた)
だんだん照れで頬に熱が集まるのを感じる。
「真、昼...」
「大丈夫、だから...満足するまで呑め」
その瞳には、少しずつ理性が戻りはじめている。
...どのくらいそうしていただろうか。
(まずいな、このままだと...)
少し辛くなってきた。
だんだんふらふらしてきて、視界が暗くなったりもしている。
だが、ここで踏みとどまれなければ千夜を傷つけることになる。
(もう少し耐える、絶対に...!)
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「満足、したか?」
千夜の瞳には動揺が広がっている。
何か言わなければと思うものの、何と声をかければいいのか分からない。
...いや、それを考えるほどの力が残っていなかった。
「俺は大丈夫だから。...今日のところはここでゆっくり休んでいけ」
ようやく出たのはそんな言葉で、そのまま自分の部屋に倒れこむように入る。
そしてそのまま、意識が途切れそうになる。
その瞬間、頬に雫が降ってきた。
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