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終幕
君をただ抱きしめたい★
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「真昼、ごめんなさい...。私が、私のせいで...」
「...俺が、したかったから...こうしたんだ。謝る必要なんかない」
そっと手を伸ばしてみるけれど、上手く届いたかどうかは自信がない。
...とにかく、次に目を開けたときにはもう朝陽がのぼっていた。
「...千夜?」
頭の下に、何やら柔らかいものが入っている。
それが何か気づいて声をあげてしまいそうになるが、なんとかそれだけは回避することができた。
(...これだけ出てたのか)
床を見てその色に少し驚いていると、頭上で声がした。
「真昼...」
「おう。おはよう」
あくまでいつもどおりに振る舞う。
...だって、誰も悪くない。
悪かった奴なんてきっといないのだから。
「真昼...」
「どうした?」
「真昼...っ」
ぽたぽたと、覚えのある雫が降ってくる。
やはり昨日のは千夜の涙だったのだ。
膝から頭をおこし、そっとそれを拭う。
「駄目、私の近くにいたら...」
「なんで?」
「また真昼のこと、傷つけちゃう...!」
どうしたらいいのか分からないというように手が震えている。
...俺を突き飛ばそうとしているのかもしれない。
(ここで離れたら、それはきっと愛じゃない)
半ば強引に抱きしめたものの、千夜の手はまだ右往左往しているようだった。
「俺は、おまえにならいくら噛まれようと平気だ。相手がおまえだから...誰よりも大切な奴で、愛しいから」
「でも、」
「おまえは俺が嫌いか?」
その言葉に、小さく首が横にふられたのを感じる。
「それならこれでいいだろ?人とつきあっていくうえで、全く傷つけないなんてことは多分無理だ。俺くらい不器用なら、特に。けど、おまえとなら乗り越えていける気がする」
「...!」
「沢山のことがあって、それでこうして二人で過ごせている。...それじゃ駄目か?」
瞬間、背中に腕がまわされる。
ちゃんと伝わってよかったと、それだけは感じる。
こいつが声をあげて泣くのは、恐らく初めてだ。
ただ泣き続ける俺より小さい体を、ただ抱きしめることしかできなかった。
(...もっとちゃんと伝えられればよかったんだけどな)
不器用なのが嫌になるが、今は手を離したくないと思った。
離してしまったら、いなくなってしまうような気がして...しばらくそのままの体勢でいた。
「真昼」
「どうした?」
「私...もう迷わない。真昼の側にいる」
「...不安になったらすぐ言え」
「ありがとう」
久しぶりに見たような気がする千夜の笑顔は、どこまでも眩しかった。
「...俺が、したかったから...こうしたんだ。謝る必要なんかない」
そっと手を伸ばしてみるけれど、上手く届いたかどうかは自信がない。
...とにかく、次に目を開けたときにはもう朝陽がのぼっていた。
「...千夜?」
頭の下に、何やら柔らかいものが入っている。
それが何か気づいて声をあげてしまいそうになるが、なんとかそれだけは回避することができた。
(...これだけ出てたのか)
床を見てその色に少し驚いていると、頭上で声がした。
「真昼...」
「おう。おはよう」
あくまでいつもどおりに振る舞う。
...だって、誰も悪くない。
悪かった奴なんてきっといないのだから。
「真昼...」
「どうした?」
「真昼...っ」
ぽたぽたと、覚えのある雫が降ってくる。
やはり昨日のは千夜の涙だったのだ。
膝から頭をおこし、そっとそれを拭う。
「駄目、私の近くにいたら...」
「なんで?」
「また真昼のこと、傷つけちゃう...!」
どうしたらいいのか分からないというように手が震えている。
...俺を突き飛ばそうとしているのかもしれない。
(ここで離れたら、それはきっと愛じゃない)
半ば強引に抱きしめたものの、千夜の手はまだ右往左往しているようだった。
「俺は、おまえにならいくら噛まれようと平気だ。相手がおまえだから...誰よりも大切な奴で、愛しいから」
「でも、」
「おまえは俺が嫌いか?」
その言葉に、小さく首が横にふられたのを感じる。
「それならこれでいいだろ?人とつきあっていくうえで、全く傷つけないなんてことは多分無理だ。俺くらい不器用なら、特に。けど、おまえとなら乗り越えていける気がする」
「...!」
「沢山のことがあって、それでこうして二人で過ごせている。...それじゃ駄目か?」
瞬間、背中に腕がまわされる。
ちゃんと伝わってよかったと、それだけは感じる。
こいつが声をあげて泣くのは、恐らく初めてだ。
ただ泣き続ける俺より小さい体を、ただ抱きしめることしかできなかった。
(...もっとちゃんと伝えられればよかったんだけどな)
不器用なのが嫌になるが、今は手を離したくないと思った。
離してしまったら、いなくなってしまうような気がして...しばらくそのままの体勢でいた。
「真昼」
「どうした?」
「私...もう迷わない。真昼の側にいる」
「...不安になったらすぐ言え」
「ありがとう」
久しぶりに見たような気がする千夜の笑顔は、どこまでも眩しかった。
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