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終幕
番外篇『幸せな日常』★
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「御舟、今日も愛妻弁当か?」
そう言ってからかってくるのは、俺の親友だ。
「...次ふざけたこと言ったらトマト煮持ってきてやる」
「悪かったって...ただ、そういうのいいなって思っただけだよ」
しゅんとして言われると、何も言い返すことができない。
「おまえは料理とかしないのか?」
「するにはするけど、二人くらい上手くないんだよ」
「...こういうのは気持ちだろ?」
そんな話をしていると、スマートフォンが揺れはじめる。
...間違いない、千夜からだ。
《今日の味、どうだったかな...?
卵焼き、いつもより少しだけだしを多めに入れてみたんだけど...不味くなかった?》
千夜には味が分からない。
今のところ、その打開策はまだ見つかっていない。
《少し甘いけど、これはこれで悪くないと思う。
美味かったよ》
「ラブラブだな」
「べっ、別にいいだろ?...冷めてるより」
「そういえば、その指輪って婚約指輪?」
「...ノーコメント」
そのとき、遠くの方で鐘の音が聞こえた。
「困ったことがあったら俺には教えてくれ。それじゃあ、次講義だから行ってくる!」
根はいい奴だと、恐らく誰よりも知っている。
染谷は悪い奴なんかじゃない。
(...そろそろ行かないとバイトに間に合わなくなるな)
自転車を漕いでいると、カフェの前に猫がいるのを見つけた。
「...よしよし」
撫でてみるとにゃあ、と元気よく鳴いて、心が癒される。
「こんにちは。前にいるあの猫、誰かの飼い猫ですか?」
「ああ、あれは今日シフトの子の猫ちゃんよ」
店長は猫にご飯をあげながらとても嬉しそうにしていて、そんな店長をじっと見ているシェフがいて...その後ろに、千夜が立っていた。
「真昼」
「お疲れ。大丈夫か?」
色々な意味をこめてそう聞いてみたものの、千夜はただ頷くだけだった。
「...これで乗り切れそうか?」
「あ、ありがとう...」
どうして気づいたのか不思議そうな顔をしている千夜が愛しくて、どんな反応をしたらいいのか分からなくなる。
「はいはい、いちゃいちゃしてないで仕事仕事!...羨ましいよ、御舟。私に佐藤さんちょうだい」
「駄目です、こいつは俺のなんで」
「...!」
恥ずかしがる千夜、わいわい盛りあがっている先輩...そのおかげで、今日も楽しく仕事ができた。
...そして夜。
今日は『遅番』の日だ。
「千夜、大丈夫か?」
「う、うん...」
「もし無理だと思ったらすぐ言え」
「...ありがとう」
大学へ行き、バイトして、少しだけ欲求を抑えるのに苦戦している千夜を護る。
...この日常は、きっと奇跡の連続でできているのだ。
そう言ってからかってくるのは、俺の親友だ。
「...次ふざけたこと言ったらトマト煮持ってきてやる」
「悪かったって...ただ、そういうのいいなって思っただけだよ」
しゅんとして言われると、何も言い返すことができない。
「おまえは料理とかしないのか?」
「するにはするけど、二人くらい上手くないんだよ」
「...こういうのは気持ちだろ?」
そんな話をしていると、スマートフォンが揺れはじめる。
...間違いない、千夜からだ。
《今日の味、どうだったかな...?
卵焼き、いつもより少しだけだしを多めに入れてみたんだけど...不味くなかった?》
千夜には味が分からない。
今のところ、その打開策はまだ見つかっていない。
《少し甘いけど、これはこれで悪くないと思う。
美味かったよ》
「ラブラブだな」
「べっ、別にいいだろ?...冷めてるより」
「そういえば、その指輪って婚約指輪?」
「...ノーコメント」
そのとき、遠くの方で鐘の音が聞こえた。
「困ったことがあったら俺には教えてくれ。それじゃあ、次講義だから行ってくる!」
根はいい奴だと、恐らく誰よりも知っている。
染谷は悪い奴なんかじゃない。
(...そろそろ行かないとバイトに間に合わなくなるな)
自転車を漕いでいると、カフェの前に猫がいるのを見つけた。
「...よしよし」
撫でてみるとにゃあ、と元気よく鳴いて、心が癒される。
「こんにちは。前にいるあの猫、誰かの飼い猫ですか?」
「ああ、あれは今日シフトの子の猫ちゃんよ」
店長は猫にご飯をあげながらとても嬉しそうにしていて、そんな店長をじっと見ているシェフがいて...その後ろに、千夜が立っていた。
「真昼」
「お疲れ。大丈夫か?」
色々な意味をこめてそう聞いてみたものの、千夜はただ頷くだけだった。
「...これで乗り切れそうか?」
「あ、ありがとう...」
どうして気づいたのか不思議そうな顔をしている千夜が愛しくて、どんな反応をしたらいいのか分からなくなる。
「はいはい、いちゃいちゃしてないで仕事仕事!...羨ましいよ、御舟。私に佐藤さんちょうだい」
「駄目です、こいつは俺のなんで」
「...!」
恥ずかしがる千夜、わいわい盛りあがっている先輩...そのおかげで、今日も楽しく仕事ができた。
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「千夜、大丈夫か?」
「う、うん...」
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...この日常は、きっと奇跡の連続でできているのだ。
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