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第7話✓
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会話って意外と難しい。
「夏霧、何してるんだ?」
「あ、真島先生。授業じゃないの?」
「今は休み。それ、手話の本?」
「ちょっとでも言葉を理解できれば、伝えたい気持ちも分かるようになるのかなって…」
真島先生は定時制と通信制を受け持つ先生で、一応定時制での俺の担任だ。
時々抜けてるけど、生徒の些細な変化も見逃さない先生だと思う。
「室星先生に借りたのか」
「うん。好きなだけ持ってっていいって言ってくれたんだ」
室星先生というのは昼間制での担任の先生で、誰にでも分け隔てなく接する人だ。
「そんなスマートに本を貸したりできるのか。相変わらずすごいな…」
「先生だって充分すごいでしょ」
「そう言ってもらえるとありがたいよ」
室星先生は、生徒からモテたり先生たちからも慕われることが多い。
俺としては真島先生だっていい先生だと思うんだけど、それは人それぞれなんだろう。
「…で、数学の宿題ちゃんとやったか?」
「一応やったけど、多分最後の問題間違えてる」
「そろそろ授業はじめるから、きっちり答え合わせするぞ」
「分かりました、先生」
真島先生は真面目な人だ。
だけど、りっ君には俺だけが知ってるであろう別の一面がある。
「はあ、疲れた…」
「お疲れ様です」
「相変わらず真面目なふりして授業受けるんだな」
「それはそっちもでしょ?学園ではりっ君禁止だから、頑張って真島先生って呼んでるのに」
「まあ、そう言うなって。俺だってみいって呼ばないようにしてるだろ?」
俺たちは昔からの幼馴染で、近所のお兄さんとして慕っていた時期がある。
りっ君が家の都合で引っ越してしまってからは文通でやりとりしていた。
今でも連絡を取り合う仲ではあるけど、俺の事情を知っているからか昔より距離ができた気がしている。
「…りっ君が俺と距離を取ろうとするのは、何か理由があるの?」
りっ君はぽかんとした後、声をあげて笑った。
「なんでそんなに笑うの?割と真面目に悩んでたのに…」
「ごめんごめん。俺が近づきすぎたら、みいが友だちを作らないんじゃないかと思ったんだ。
…誰かと関わることを諦めないでほしいって思ってたけど、杞憂だったみたいだな」
頭をわしわし撫でられて、りっ君から笑顔を向けられた。
なんだ、俺のことを助けようとしてくれていたんだ。…知らなかった。
「ありがとう。だけど、心配しなくても大丈夫」
「その言葉、信じてるから」
先に行ってしまった真島先生の背中を見送り、手話の本に目を通す。
定時制では真島律先生がいて、昼間制では陽向という友人や室星先生がいて…最近は、桜雪ちゃんがいる。
もっと知りたいなんて思うのはどうしてだろう。
…この気持ちをどう表現すればいいのか、俺にはまだ分からない。
「夏霧、何してるんだ?」
「あ、真島先生。授業じゃないの?」
「今は休み。それ、手話の本?」
「ちょっとでも言葉を理解できれば、伝えたい気持ちも分かるようになるのかなって…」
真島先生は定時制と通信制を受け持つ先生で、一応定時制での俺の担任だ。
時々抜けてるけど、生徒の些細な変化も見逃さない先生だと思う。
「室星先生に借りたのか」
「うん。好きなだけ持ってっていいって言ってくれたんだ」
室星先生というのは昼間制での担任の先生で、誰にでも分け隔てなく接する人だ。
「そんなスマートに本を貸したりできるのか。相変わらずすごいな…」
「先生だって充分すごいでしょ」
「そう言ってもらえるとありがたいよ」
室星先生は、生徒からモテたり先生たちからも慕われることが多い。
俺としては真島先生だっていい先生だと思うんだけど、それは人それぞれなんだろう。
「…で、数学の宿題ちゃんとやったか?」
「一応やったけど、多分最後の問題間違えてる」
「そろそろ授業はじめるから、きっちり答え合わせするぞ」
「分かりました、先生」
真島先生は真面目な人だ。
だけど、りっ君には俺だけが知ってるであろう別の一面がある。
「はあ、疲れた…」
「お疲れ様です」
「相変わらず真面目なふりして授業受けるんだな」
「それはそっちもでしょ?学園ではりっ君禁止だから、頑張って真島先生って呼んでるのに」
「まあ、そう言うなって。俺だってみいって呼ばないようにしてるだろ?」
俺たちは昔からの幼馴染で、近所のお兄さんとして慕っていた時期がある。
りっ君が家の都合で引っ越してしまってからは文通でやりとりしていた。
今でも連絡を取り合う仲ではあるけど、俺の事情を知っているからか昔より距離ができた気がしている。
「…りっ君が俺と距離を取ろうとするのは、何か理由があるの?」
りっ君はぽかんとした後、声をあげて笑った。
「なんでそんなに笑うの?割と真面目に悩んでたのに…」
「ごめんごめん。俺が近づきすぎたら、みいが友だちを作らないんじゃないかと思ったんだ。
…誰かと関わることを諦めないでほしいって思ってたけど、杞憂だったみたいだな」
頭をわしわし撫でられて、りっ君から笑顔を向けられた。
なんだ、俺のことを助けようとしてくれていたんだ。…知らなかった。
「ありがとう。だけど、心配しなくても大丈夫」
「その言葉、信じてるから」
先に行ってしまった真島先生の背中を見送り、手話の本に目を通す。
定時制では真島律先生がいて、昼間制では陽向という友人や室星先生がいて…最近は、桜雪ちゃんがいる。
もっと知りたいなんて思うのはどうしてだろう。
…この気持ちをどう表現すればいいのか、俺にはまだ分からない。
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