ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第8話

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「お疲れ様でした」
「お疲れ」
学園での生活も仕事の時間も楽しい。
誰かと話すとき、反射的に身構えてしまうことがある。
「こんばんは。今日も寒いですね」
「そうですね」
近所の人との最低限の会話でさえ緊張してしまう。
あるマンションの一室、俺の生活はほとんどそこで完結する。
近所の人たちも優しいし、傷つくこともない。
予習を終えてゲームしようと思ったら、メッセージが届いた。
【お久しぶりです。元気にしていらっしゃいますか?黒川も心配しています。
もし気が向いたら、いつでも連絡を……】
そこまで読んで画面を消した。
読めば読むほど憂鬱になるのが分かっているからだ。
またスマホが鳴ってスルーしようとしたけど、表示された名前を見て体を起こす。
【こんにちは。古書店、今日はお休みになるのでシフト調整で別日になるみたいです】
【休みになるなんて知らなかった…。教えてくれてありがとう】
【伝えてほしいって頼まれただけなので…お役にたててよかったです】
桜雪ちゃんと話している間だけは肩の力が抜ける。
りっ君もそうだけど、恐らく今1番力を抜いて話せるのは彼女だ。
初めて会ったときは怖がらせてしまったと思っていたのに、こんなふうに関係が続いていくのは嬉しい。
会話が終わったと思ったら、向こうから話しかけてくれた。
【夏霧さん】
【どうしたの?】
【もしよかったら、駅近くのプラネタリウムに行きませんか?】
突然の誘いにただ驚く。
【どうして俺のことを誘ってくれたの?】
【夏霧さんにお世話になっているので、チケットを渡したかったんです】
一緒に行くのかと思ったら、チケットだけ渡してくれようとしているのか。
もしかすると、一緒にでかけて迷惑をかけたくないと思っているのかもしれない。
【桜雪ちゃんが嫌じゃなければ一緒に行かない?】
返事がかえってこなくなり、困らせてしまったのだと感知する。
【私が一緒に行っていいんですか?】
【勿論!というより、寧ろふたりで行きたいなって思ってる。駄目かな?】
少し間があいたところで、ぱっと返信が表示された。
【行ってみたいです。都合がいい日を教えてください】
いつもは可愛らしい絵文字やスタンプがついているけど、今日はそれがない。
未だに迷っているのか、自分なんかって思っているのか。
どう返信しようか迷ったが、日付と一言添えて送った。
【明後日の午後はどうかな?桜雪ちゃんと一緒に行けるならいつでも飛んでいくけどね】
軽かったかと思っていると、桜雪ちゃんから届いたメッセージにほっこりした。
【明後日の午後、駅前でお待ちしています。私も夏霧さんと一緒にいられるの、楽しみです】
嘘偽りない、真っ直ぐな言葉。
凍りかけていた心が一瞬でひだまりのように温かくなった。
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