ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第17話

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「八坂、おはよう。授業には慣れてきたか?」
室星先生の言葉に頷いて、一礼してから自分の教室へ向かう。
私は他の人たちみたいに全教科取っているわけではないので、こんなに朝早くから学校に来たのは久しぶりだ。
「それでは、ホームルームはここまでにして…皆さん、授業に遅れないように行ってくださいね」
通信制は、私にとって過ごしやすい世界だった。
声が出ないから受け入れてもらえないかもしれないと思っていたのに、年齢関係なく嫌なことを言ってくる人なんていない。
ここでなら卒業まで楽しく過ごせるかもしれないと思っている。
休み時間、次の授業は午後からだったので帰ろうか迷っていたけれど、旧校舎へ行くことにした。
別棟とはいえ昼間制の生徒が部活動をしている可能性があるので、できるだけ新校舎には近づきたくない。
「……」
両手を合わせて、少し早いお昼ご飯を食べようとしたら声をかけられた。
「桜雪ちゃん?」
「……!【おはようございます】」
慌てて手話で挨拶すると、穂さんはふっと笑って近づいてきた。
「今からお昼?俺も一緒に食べていい?」
日曜日にいるなんて珍しいなと思いながら、すぐに首を縦にふった。
「ありがとう。授業はないの?」
「【今日は1時限目と5時限目の授業なので、今は大丈夫です】」
「そうなんだ。…昼間制で真面目に授業受けてたんだね」
「【試験も受けました】」
実は高卒認定試験を2科目だけ受けて合格している。
それが単位としてカウントされているから、今の余裕を持った通い方ができているのだ。
「え、あれに受かったの!?すごいね」
「【穂さんの方がすごいです。私は穂さんみたいに定時制に通いながら昼間制にも通いながら、バイトもこなすなんてとてもできません】」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな」
穂さんはにっこり笑って、持っていた鞄からお弁当が現れる。
中に入っていたのは生姜焼きだった。
「いただきます」
「…【穂さんは、日曜日も通学しているんですか?】」
「通学というか、勝手にやってる部活動かな。何年か前まで天文部があったんだけど廃部になっちゃって…。
誰かが道具を手入れしてるみたいだから、勝手に部室に入って大きな望遠鏡を覗いてるんだ」
天体観測ができる場所なら何ヵ所か知っているけれど、小さめのものでしか見たことがない。
少し羨ましく思いつつ、【楽しそうですね】と答える。
「桜雪ちゃん、そのお弁当自分で作ったの?いいなあ、美味しそう…」
「【卵焼きはいかがですか?】」
「え、くれるの!?それじゃあありがたく…」
口に合わなかったらどうしようと思っていたけれど、穂さんの表情を確認して杞憂だったと安心した。
「美味しい…!自分で焼くとこんなにふわふわにならないんだ」
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