ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第21話

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「それじゃあみんな、お疲れ様」
楽器屋のバイトの次は古書店のヘルプだ。
この期間は模試やら試験やらで予定が合わなくなる人が多く、平日の昼間より休日の夜入る日が増える。
「夏霧君、ヘルプ要員ありがとうございます。いつも助かっています」
「たまたま入れた日に来ただけなので…頑張ります」
たしかに普段より人が少ない。
いつもなら配達の梱包も届いた本の陳列準備ももっと人がいるはずなのに、ダンボールを開けながら配達用の本を準備している猛者がいる。
「あの…俺、本の陳列準備の方やります」
「ありがとう」
この職場も働きやすい。
本好きとしては苦にならないし、寧ろシフトの融通を利かせてもらって助かっている。
「お疲れ様でした」
最後まで残っていた先輩たちに挨拶して、そのまま家路についた。
そういえばと帰り着いたところでスマホを取り出し、桜雪ちゃんに返事を送る。
【ごめんね。さっきはバイト中だったんだ。今はもう平気?返事はゆっくりでいいからゆっくり休んでね。
追伸:もしよければ、今度うちでクリスマスパーティーもどきをしませんか?誰か呼んでもいいし、ふたりきりでも構わないよ】
どんな返事が返ってくるだろうと少しわくわくしながら電源を落とす。
流石にこんな遅い時間に返事はこないだろう。
……と思ったものの、寝返りをうっては気になるを繰り返している。
充電が終わっているのを確認して電源を入れると、やっぱり返信はなくて広告とアプリのお知らせだけが届いた。
朝になって連絡を入れた相手はりっ君だ。
『どうした?』
「りっ君が通信制の先生もしてるなんて聞いてないんだけど」
『言ってなかったからな』
ふっと笑う声に少し拗ねながらそれとなく桜雪ちゃんのことを聞いてみる。
「りっ君から見た桜雪ちゃんってどんな人?」
『八坂か…まだ2ヶ月くらいしか見てないけど、思いやりがある生徒だとは感じてる。
…ただ、自分の考えを抑えこんでるようにも見えるな。みいが手話を覚えていたのは八坂と会話するためか?』
「まあ、そんなところ。時々手が動いてるから、話したいことを我慢してるときもあるんだろうなって…」
『おまえもいい奴だな。けど、ふたりとも自分だけで抱えこむところは似てる』
りっ君からの言葉にどきりとしたけど、平常心をこころがけながら話していく。
「桜雪ちゃんは抱えこんでるものがあるかもね。俺が知らないだけで、沢山」
『……人のこと言えないだろ』
「え、何の話?」
『俺今日朝から出勤だからそろそろ行く。また時間あるときに電話してくれ』
「りっ君からもかけてよ。大抵出られるから」
『時間があるときにな』
桜雪ちゃんと出会ってもう2ヶ月経ったんだと思うとあっという間だった気がする。
もう少し一緒にいたら、知らない一面も見えてくるのかもしれない。
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