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第20話
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「…すみません先生、俺もう行かないと」
「そうなの?八坂さんが起きたら伝えておくね」
「ありがとうございます。失礼します」
桜雪ちゃんのことは心配だけど、バイト先に遅れて迷惑をかけるわけにはいかない。
一応置き手紙は残してきたし大丈夫だろう。
「あれ、穂君?早いね」
「こんにちは。そんなに早くないと思いますけど…」
「他の人たち、ちょっと遅れるって連絡があったんだ。模試を受けに行ってる子が多くて…電車に乗りそこねたらしい」
真面目な生徒たちは模試を受けに行くこともあるだろう。
絶対に受けたくないけど、ひとつだけ受けないといけないものがある。
「穂君もテスト近い感じ?」
「まあ、そんなところです。来週校内で実力テストがあって…」
「最近の子たちは真面目だな…。俺はいつもノー勉だったよ。点数がよかったらかっこよかったんだろうけど、全然だった」
にっこり笑っている楽器屋の店長…実はこの町では生ける伝説になっている。
実際にその場にいたわけではないが、町の喧嘩を歌とギター1本で止めたらしい。
感謝状の受け取りを拒否したとかいう話も聞いて入るものの、誰も本人に聞く勇気はないようだ。…俺も含めて。
「穂君はなりたいものとかある?」
「まだ迷ってます。はっきりこれってものはないかもしれません」
「じゃあ、もし決められなくて気が向いたらうちで正社員待遇で雇おう」
「いいんですか?」
「勿論。他と掛け持ちしてもらって構わないし、真面目に仕事してくれる人材なら歓迎するよ」
楽器の手入れのしかたは分かるし、ここにいる時間は楽しい。
けど、俺がそんな幸福に浸ってしまっていいのか分からなかった。
「考えさせてください」
「今すぐこの場で答えを出せなんて言わないよ。…人生は悩んでこそだろうから」
ここを含め、バイト先の店主の皆さんは優しい。
弦を張り替えたギターのチューニングをしていると、右手に痺れがはしった。
お客さんのギターでここまで酷くなったことはなかったのにと思ったけど、明るい未来に目を向けようとしたからだと気づく。
…そんなもの、俺が掴んでいいとは思えない。
「穂君?もしかして具合悪い?」
「あ、えっと…すみません、少し休憩入ってもいいですか?」
「いいよ。今お客誰もいないし、もうすぐ他のバイトの子たちも来られそうだから。
無理そうだったらそのまま早退しちゃって大丈夫だから」
「すみません…ありがとうございます」
店長には手の痺れがおこることがあるとだけ説明してある。
ひと息ついたところでポケットのスマホを確認すると、1件のメッセージが届いていた。
【今日はすみませんでした。助けてもらってばかりで本当に申し訳ないです。
ひとりだったらきっと動けてなかったと思います。ありがとうございました。今度何かお礼させてください】
「真面目だな…」
桜雪ちゃんの若干固いメッセージにお疲れ様スタンプで返す。
素っ気ない気もしたけど、文面を考えるほど余裕がない。
右手の痺れが少しおさまったところで仕事に戻った。
「そうなの?八坂さんが起きたら伝えておくね」
「ありがとうございます。失礼します」
桜雪ちゃんのことは心配だけど、バイト先に遅れて迷惑をかけるわけにはいかない。
一応置き手紙は残してきたし大丈夫だろう。
「あれ、穂君?早いね」
「こんにちは。そんなに早くないと思いますけど…」
「他の人たち、ちょっと遅れるって連絡があったんだ。模試を受けに行ってる子が多くて…電車に乗りそこねたらしい」
真面目な生徒たちは模試を受けに行くこともあるだろう。
絶対に受けたくないけど、ひとつだけ受けないといけないものがある。
「穂君もテスト近い感じ?」
「まあ、そんなところです。来週校内で実力テストがあって…」
「最近の子たちは真面目だな…。俺はいつもノー勉だったよ。点数がよかったらかっこよかったんだろうけど、全然だった」
にっこり笑っている楽器屋の店長…実はこの町では生ける伝説になっている。
実際にその場にいたわけではないが、町の喧嘩を歌とギター1本で止めたらしい。
感謝状の受け取りを拒否したとかいう話も聞いて入るものの、誰も本人に聞く勇気はないようだ。…俺も含めて。
「穂君はなりたいものとかある?」
「まだ迷ってます。はっきりこれってものはないかもしれません」
「じゃあ、もし決められなくて気が向いたらうちで正社員待遇で雇おう」
「いいんですか?」
「勿論。他と掛け持ちしてもらって構わないし、真面目に仕事してくれる人材なら歓迎するよ」
楽器の手入れのしかたは分かるし、ここにいる時間は楽しい。
けど、俺がそんな幸福に浸ってしまっていいのか分からなかった。
「考えさせてください」
「今すぐこの場で答えを出せなんて言わないよ。…人生は悩んでこそだろうから」
ここを含め、バイト先の店主の皆さんは優しい。
弦を張り替えたギターのチューニングをしていると、右手に痺れがはしった。
お客さんのギターでここまで酷くなったことはなかったのにと思ったけど、明るい未来に目を向けようとしたからだと気づく。
…そんなもの、俺が掴んでいいとは思えない。
「穂君?もしかして具合悪い?」
「あ、えっと…すみません、少し休憩入ってもいいですか?」
「いいよ。今お客誰もいないし、もうすぐ他のバイトの子たちも来られそうだから。
無理そうだったらそのまま早退しちゃって大丈夫だから」
「すみません…ありがとうございます」
店長には手の痺れがおこることがあるとだけ説明してある。
ひと息ついたところでポケットのスマホを確認すると、1件のメッセージが届いていた。
【今日はすみませんでした。助けてもらってばかりで本当に申し訳ないです。
ひとりだったらきっと動けてなかったと思います。ありがとうございました。今度何かお礼させてください】
「真面目だな…」
桜雪ちゃんの若干固いメッセージにお疲れ様スタンプで返す。
素っ気ない気もしたけど、文面を考えるほど余裕がない。
右手の痺れが少しおさまったところで仕事に戻った。
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