ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第19話✓

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ベッドの上の桜雪ちゃんの顔色が悪くて心配になるけど、今の俺にはただ側にいることだけだ。
「夏霧君」
「あ、白井先生」
起こさないように小声で話して、一旦桜雪ちゃんから離れる。
なんだか苦しそうな顔をしているからこのまま放っておきたくないけど、どうしても聞いておきたいことがあった。
「桜雪ちゃんって、どこか悪いんですか?」
「夏霧君はフラッシュバックって知ってるよね?…八坂さんはフラッシュバックをおこすと息が苦しくなったり、貧血のような症状をおこすことがあるみたい。
失声症のこともそうだけど、本当に沢山苦しい思いをしてきた人だと思う」
「しっせいしょう?」
「八坂さんの声が出ないのは生まれつきじゃないんだ。主な原因はストレスで、症状も原因も治療にかかる時間もかなり個人差があるの」
知らなかった。俺はやっぱり桜雪ちゃんについて知らないことが多い。
猫が好きなこと、星にも興味があること、沢山の本を読んでいること…過去のことは踏み込めなかった。
自分も話しづらいことがあるのに、相手にだけ教えろなんて言うのは失礼だろうと思っていたから。
ただ、病気の症状についてはもう少し聞いておくべきだったと反省した。
「女子生徒たちの笑い声を聞いてから、様子がおかしかったんです。…関係あったりするんでしょうか?」
「詳しいことはあまり言えないけど、もし体調が悪そうだったら室星先生か私に知らせてくれる?
真島先生は受け持ったばかりだから分からないことも多いだろうし…」
「りっく…真島先生が担任やってるんですか?」
それは初耳だ。てっきり通信制には関わっていないと思っていた。
「そういえば、夏霧君は最近どう?」
「今のところは平気です。ありがとうございます」
先生が言っているのは手の痺れについてだろう。
できるだけいつもどおりなふりをして、近くの椅子に座らせてもらった。
「夏霧君、時間は大丈夫?」
「はい。あの…もう少し、桜雪ちゃんの側についてていいですか?」
「勿論。ふたりは仲がいいのね」
「バイト先が同じで、時々話すので…」
旧校舎で出会った仲です、とは言えない。
白井先生もそれ以上は深く聞かずにいてくれて、職員室に顔を出してくるとまた出ていってしまった。
「…桜雪ちゃんも大変な思いをしてきたんだろうね」
まだ過去に踏みこむ勇気はないけど、いつか困っているときに助けられるくらいの知識は身につけておきたい。
さっきより顔色がよくなった桜雪ちゃんの隣で、バイトの時間まで本を読んで過ごした。
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