ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第31話*

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「会計委員の書類、たしかに預かりました」
次の通学日、穂さんと仕上げた書類を受け取ってもらうことができた。
沢山直したから遅くなってしまったけれど、先生のにこやかな表情にほっとする。
「八坂さん、今日の授業は何時限目?」
指を使って説明するとなんとか分かってもらえた。
先生だって忙しいのに引き止めるわけにはいかない。
「3と6時限目か…。多分来週の発達と保育は調理実習になるから、エプロンを用意しておいた方がいいよ」
真島先生の優しい言葉に一礼して、旧校舎に足を踏み入れる。
屋上や放送室、監査室以外からはほとんど声がしない。
だから安心して本を読んだり自習することができる。
そういえば、調理実習ということは人と話さないといけないということだろうか。
授業を受けている人たちとは1度も話したことがないし、そもそもどうやって話せばいいのか分からない。
「……」
猫カフェからの連絡事項を読みながら、どうするのが1番いいか考えていた。
休むのも選択のひとつだろうけど、もし体調を崩して行けない日が続いたら出席日数が足りなくなるかもしれない。
あれこれ迷っているうちに、2時限目の終わりを知らせるチャイムがなった。
「全員揃ってる…かな。授業をはじめます」
丁度発達と保育の授業だ。レポートの答え合わせをしながら、先日の出来事をつい思い返してしまう。
穂さんに助けられて、一緒にお茶を飲んで…もっと一緒にいたいと思ってしまった。
「今日はここまでにしておきましょう。レポートを提出していってね」
できるだけ迷惑にならないようにと考えて、1番最後に提出した。
「【調理実習ってどんなことをするんですか?】」
「子どもが食べられるお菓子作り。実習は休む人も多いから、参加人数はそんなに多くないと思うよ」
この先生も、私が言おうとしていることを察知してくれた。
一礼してそのまま旧校舎へ戻る。
こんなに優しい世界があるなんて知らなかった。
今までの私だったら、こんなに心穏やかに過ごせていない。
「……」
久しぶりに開いたノートに目を通して息を吐く。
いつもなら自分で歌ってみて確認できたけど、これからはそういうわけにもいかない。
「……」
マスクの中で口を大きく開けてみたものの、やっぱり声にならなかった。
《変な声…ウケる》
《あいつだろ?よく喋れるよな》
嫌なことを思い出して、鞄に入れていた小さいうさぎのマスコットを抱きしめる。
どうしても叶えたかったことを思い出しながら、苦しくなった息を少しずつ吐き出した。
【詞はできました。確認お願いします】
チャットアプリで送信してすぐスマホから目を離す。
早く授業を終わらせてバイトに行きたい。
…猫カフェや古書店にいれば、嫌なことを全部忘れられるから。
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