ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第44話

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「すまなかった」
室星先生に頭を下げられて、首を横にふる。
「僕も申し訳ないです。近くを回っていたのに気づくのが遅かった…」
真島先生にも謝られて、申し訳なさが倍増する。
「先生たちが謝ったら桜雪ちゃん自分を責めちゃいます」
「それもそうか…。あのふたりはもう来ないから安心してほしい」
「次来たらどうなるか、しっかり教育しておきましたので」
ふたりの目が笑っていない気がするけれど、お礼だけはしっかり伝えた。
「桜雪ちゃん、ちょっといい?」
穂さんの言葉に頷くと、そのまま腕をひかれて歩いていく。
辿り着いたのは、いつも休憩に使っている旧校舎の教室だった。
「ここならふたりきりだから、誰かと傷つけあう心配はないでしょ?」
穂さんにも気を遣わせてしまったんだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「大丈夫だよ。桜雪ちゃんがどう感じるか分からないけど、迷惑だなんて思ってないから。
俺も静かな場所が好きだって言ったでしょ?…たまにならにぎやかなのもいいけど、これくらいの明るさが丁度よかったりするんだよね…」
明かりは窓から入る夕焼けだけで、片づけが終わった人たちから帰っているであろう声がする。
「【穂さんは帰らなくていいんですか?】」
「俺?もう少しここにいようかな」
相変わらず書き終わるまで待ってくれて、ただ黙って一緒にいてくれる。
本当に優しい人だな…なんて考えていた。
「そうだ、ちょっと飲み物買ってくるね。お茶でいい?」
100円玉を2枚渡して買ってきてもらうことにした。
今の私が動いたら、余計に迷惑をかけてしまいそうだから。
ポケットの中のお守りを取り出して、両手でぎゅっと握りしめる。
《約束だよ。どんなに離れていても、私たちは……》
なんだか少し懐かしい。
窓の外をぼんやり眺めていると、お守りが飛ばされそうになった。
なんとか掴めたけれど、そのまま体勢を崩してしまう。
「……!」
「桜雪!」
後ろから体を掴まれて、なんとか落ちずにすんだ。
振り返ると穂さんが不安そうな顔をしている。
「…落ちたら痛いじゃすまないよ?」
「【ごめんなさい】」
「何してたの?」
「…【落としそうになったので掴んだら、そのまま体勢を崩してしまって…】」
「そうだったんだ。危ないから気をつけてね」
ほっとした様子の穂さんを見てはっとする。
そういえばさっき、桜雪って呼ばれた…?
「お茶、まだ残ってたから買ってきた、よ……」
何故か穂さんは固まったまま動かなくなってしまう。
困惑していると、勢いよく頭を下げられた。
「ごめん!思わず呼び捨てにしちゃって…嫌だった?」
首を横にふって、メモに書いた言葉を伝える。
「【寧ろ心地よかったです。胸がぽかぽかしました。これからもそう呼んでもらえませんか?】」
「分かった。えっと…それなら、いつか俺のことも呼び捨てにしてほしいな。すぐにとは言わないから。…お願い桜雪」
やっぱり嫌な感じがしない。
穂さんは魔法使いだ。いつだって私の心を温めてくれるから…。
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