ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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逆境を壊す

第53話

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カフェが休みになる年始はずっと家でこゆきと一緒にいた。
慣れていない場所だから嫌がるんじゃないかと思っていたけど、思い過ごしだったらしい。
「……」
にゃん、と可愛く鳴くこゆきは、随分元気になったみたいだ。
ミルクを飲んで、新しく買ったおもちゃで遊んで…ケージから出て小さなこたつで寝ている。
カーペットの上がお気に入りみたいで、スイッチを入れると安心したように寝そべっていた。
【こんにちは。もしよければ、一緒にご飯食べに行かない?】
【ごめんなさい。今日は予定があって行けません】
穂さんからの誘いを断るのは少し辛かったけど、今はこゆきの近くにいたい。
それから数時間して、インターホンが鳴る。
覗き穴から確認すると、穂さんがそわそわしながら立っていた。
「……!」
「こんにちは。急に来てごめん。もしかしたら具合が悪いのかなって思って…」
私がちゃんと説明していなかったから、勘違いさせてしまったみたいだ。
扉を開けて、つい部屋に招き入れてしまった。
「お邪魔します」
「【どうぞ】」
こゆきが怖がるようなら事情を話して帰ってもらおう…そう思っていたけれど、こゆきの方から近づいていた。
「わっ…猫?可愛い。飼ってるの知らなかった」
「【最近飼いはじめたばかりです】」
それからできるだけ早く書いて説明した。
細かいことは省きつつ、バイト先の保護猫カフェにいたこと、こゆきは片耳が潰されてしまっていて恐らく聞こえていないこと…私に懐いてくれたこと。
「そうだったんだ。俺のことは好きでいてくれるかな?」
こゆきは自分の顎を撫でている穂さんの指先にじゃれついている。
怖がる様子もないし、寧ろ楽しく遊んでいるみたいだった。
「【穂さんがいい人だって分かってるみたい】」
「え、そうなの?嬉しいな。…そうだ、猫用の歯みがきガムなら持ってるけど食べてくれるかな?」
こゆきははじめ不思議そうにしていたけれど、少しずつ口に入れて味を確かめている。
こゆきなりに味わって食べているみたいだ。
「よかった、喜んでもらえたみたい」
嬉しそうに笑っている穂さんを見ていると、私も自然と頬が緩む。
「これからお昼注文しようと思ってたんだけど、迷惑じゃなければここで食べていってもいい?」
こゆきも懐いているみたいだし、私ももっと一緒にいたいと思った。
「【勿論】」
「ありがとう。お昼、何にしようかな…何か食べたいものある?」
穂さんは何枚もチラシを見せてくれて、沢山ある中でも気になったものを指さした。
…そういえば、このマンションに住みはじめてから人をあげたのは初めてだ。
それをつい意識してどきどきした。
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