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逆境を壊す
第55話
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「お疲れ様でした」
1日が終わって、一緒に仕事をした人たちと別れる。
まだ憂鬱な気分ではあるものの、桜雪にもらったペンを握りしめたら少し気が楽になった。
「…なんか元気ないな」
「りっ君…」
「あのポスターのせいか?」
少しとはいえ、事情を知っているりっ君を欺くことはできない。
「まあ、そんなところ。りっ君はこれから仕事?」
「通信制の課題プリントを作りに行くつもりだったが、また今度にする。
取り敢えず今から俺の家に来い。…夜のバイトが休みなら拒否権はないからな」
りっ君に迷惑をかけたくなかったのに、さっきからずっと右手がしびれて感覚がない。
このままバイクを動かすのは危険だと判断して、バイクと一緒にりっ君の隣を歩いた。
「…それ、昔から好きだろ?」
「ありがとう」
ホットココアを飲みながら、少しだけ昔のことを考える。
楽器が好きで、音楽に関わる仕事も好きで…将来絶対になりたいものがあった。
「…熱っ」
「もうちょっとゆっくり飲め」
「そうだね。…ねえ、りっ君。デートってどんなところに行くのがいいのかな」
話題を変えたかったのが半分、本当に悩んでいたのが半分。
そんな中途半端な問いを、りっ君は真面目に考えてくれた。
「相手が好きなものは知ってるか?」
「猫かな。あと、時々夜空を見てたから多分星も好き。読書は推理小説が主で…最近子猫を引き取った」
「となると、遠出は難しそうだな。植物園は屋外が苦手だとどうなるか…」
ぶつぶつ話しながら、りっ君は1枚の広告を見せてくれた。
「ここならどうだ?」
「この小さな町に水族館ができたの?」
「そうらしい。オープンして2週間くらいだし、朝早くか夜遅くなら人通りも少ないはずだ」
「いいね、楽しそう。早速訊いてみるよ」
俺の疎い部分をりっ君はよく知ってる。
聞いたことなかったけど、彼にも恋人がいるのだろうか。
「…それで、今でも楽器触ってるのか?」
逸らしきれていなかった。
「まあ、それなりには。前ほど長時間じゃないし、フルで1曲やってって言われても多分できない」
「みいが楽しんでやってるならそれでいい」
親友のそんな一言にいつだって救われてきた。
今の生活に馴染めたのも、これも自分だって思えたのも、全部りっ君がいてくれたからだ。
独りだったらきっと暗闇の中で立ち尽くしていただろう。
「りっ君は優しいね」
「俺は自分が思ったように行動してるだけだ」
「照れてる?耳まで真っ赤だよ」
「…今はこっち見るな」
分かりづらいと言われることもあるみたいだけど、すぐ照れるところは昔から変わらない。
「何か心配事があったらすぐ相談しろ。いいな?」
「ありがとう。そうさせてもらうね」
頼りっぱなしじゃいられない。
せめて何かお礼の品を渡したいけど、自分中心で考えてしまいそうだ。
「…桜雪、来てくれるかな」
1日が終わって、一緒に仕事をした人たちと別れる。
まだ憂鬱な気分ではあるものの、桜雪にもらったペンを握りしめたら少し気が楽になった。
「…なんか元気ないな」
「りっ君…」
「あのポスターのせいか?」
少しとはいえ、事情を知っているりっ君を欺くことはできない。
「まあ、そんなところ。りっ君はこれから仕事?」
「通信制の課題プリントを作りに行くつもりだったが、また今度にする。
取り敢えず今から俺の家に来い。…夜のバイトが休みなら拒否権はないからな」
りっ君に迷惑をかけたくなかったのに、さっきからずっと右手がしびれて感覚がない。
このままバイクを動かすのは危険だと判断して、バイクと一緒にりっ君の隣を歩いた。
「…それ、昔から好きだろ?」
「ありがとう」
ホットココアを飲みながら、少しだけ昔のことを考える。
楽器が好きで、音楽に関わる仕事も好きで…将来絶対になりたいものがあった。
「…熱っ」
「もうちょっとゆっくり飲め」
「そうだね。…ねえ、りっ君。デートってどんなところに行くのがいいのかな」
話題を変えたかったのが半分、本当に悩んでいたのが半分。
そんな中途半端な問いを、りっ君は真面目に考えてくれた。
「相手が好きなものは知ってるか?」
「猫かな。あと、時々夜空を見てたから多分星も好き。読書は推理小説が主で…最近子猫を引き取った」
「となると、遠出は難しそうだな。植物園は屋外が苦手だとどうなるか…」
ぶつぶつ話しながら、りっ君は1枚の広告を見せてくれた。
「ここならどうだ?」
「この小さな町に水族館ができたの?」
「そうらしい。オープンして2週間くらいだし、朝早くか夜遅くなら人通りも少ないはずだ」
「いいね、楽しそう。早速訊いてみるよ」
俺の疎い部分をりっ君はよく知ってる。
聞いたことなかったけど、彼にも恋人がいるのだろうか。
「…それで、今でも楽器触ってるのか?」
逸らしきれていなかった。
「まあ、それなりには。前ほど長時間じゃないし、フルで1曲やってって言われても多分できない」
「みいが楽しんでやってるならそれでいい」
親友のそんな一言にいつだって救われてきた。
今の生活に馴染めたのも、これも自分だって思えたのも、全部りっ君がいてくれたからだ。
独りだったらきっと暗闇の中で立ち尽くしていただろう。
「りっ君は優しいね」
「俺は自分が思ったように行動してるだけだ」
「照れてる?耳まで真っ赤だよ」
「…今はこっち見るな」
分かりづらいと言われることもあるみたいだけど、すぐ照れるところは昔から変わらない。
「何か心配事があったらすぐ相談しろ。いいな?」
「ありがとう。そうさせてもらうね」
頼りっぱなしじゃいられない。
せめて何かお礼の品を渡したいけど、自分中心で考えてしまいそうだ。
「…桜雪、来てくれるかな」
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