ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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逆境を壊す

第66話*

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あれから数日が経った。
こゆきを撫でながら穂さんからのメッセージを待つ。
話しているときは濁していたけれど、多分もうひとりのメンバーの方は…。
「……!」
ふと時計を見ると、もう出ないと仕事に間に合わなくなる時間になっている。
こゆきにケージに入ってもらって、小走りで仕事に向かう。
「八坂さん、こんにちは」
一礼して更衣室に入る。
それからはいつもどおりの時間を過ごして、古書店の仕事に行くためにこゆきを預けたまま外に出た。
本当は夕飯を食べに行くのもいいと思ったけれど、その前にどうしても行きたい場所がある。
「……」
旧校舎の、誰もいない教室。
穂さんと初めて会った場所でもある。
ここでなら会えると思っていたけれど、残念ながら彼はいなかった。
「なんでそんなに落ちこんでるんだ」
「そんな元気なさそうに見える?」
「見える」
「りっ君、容赦ないね」
ふたり分の話し声が聞こえてきて、どちらも聞き覚えがあるものだった。
「…この前黒川に会った。それで、ちょっと心の整理ができなくて……」
「黒川って、SKIRDのクロか」
「うん。色々あって、桜雪に助けてもらったんだ。沢山話したけど、桜雪の負担になったんじゃないかと今更不安になってる」
「おまえは心配しすぎなんだよ。…八坂は嫌なら嫌って、おまえ相手なら言えるんじゃないか?」
「そうだといいけど…」
まさか不安にさせてしまっているとは思わなかった。
どうしてもその場を離れることができなくて、盗み聞きという形で穂さんの気持ちを聞いていく。
「いいか、みい。人付き合いっていうのは死ぬほど難しい。もやもやしたり悩むことも多いだろう。
けど、だからこそ絆というものが美しいんだと俺は思ってる。固い絆を繋げる相手を見つけろ。…まあ、今のおまえにはもうそういう相手がいそうだがな」
「固い絆…りっ君とも?」
「まあ、そうだな。少なくとも俺はみいと繋がれてると思ってる」
いつもと口調が違うからか、真島先生の言葉は心にずっしり響く。
ただ、それは決して冷たいものではなかった。
ゆっくり後ずさっていると、ぎしぎし音が鳴ってしまう。
「……!」
「俺はもう行く。あとは自分でちゃんと話せ。いいな?」
「え?」
中から出てきた真島先生は、ぱっと走り書きした紙切れを渡して去っていく。
そこには、心温まる言葉が綴られていた。
【俺の話し方の素はこれ。関係はみいに直接尋ねるといい。
旧校舎にはできるだけ人を入れないようにするから、思う存分話して。あいつを救ってくれてありがとう】
ちゃんと助けになれたかなんて分からない。
…覚悟を決めて、目の前の扉を開けた。
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