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逆境を壊す
第68話
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それからすぐに校舎を出て、夜の古書店での仕事をこなした。
「お疲れ」
「……!」
穂が迎えに来てくれていたみたいで、なんだか緊張してしまう。
こんなふうに名前を呼ぶのも、キスをしたことも。
色々思い出して、だんだん恥ずかしくなってきた。
「今日は、お客さん多かったね」
一応頷いたけれど、穂にはちゃんと見えただろうか。
「…ねえ桜雪。俺のこと、また穂って呼んでくれる?」
その言葉にも首を縦にふる。
しばらく沈黙が流れて、猫カフェに辿り着いた。
「八坂さん、お疲れ様。こゆきはゆっくり寝ているから、ケージに入れて運んでくるね」
一礼して待っていると、売り物のクッキーを渡される。
「ふたりで食べて。猫用のものはそっちの袋に入れたから」
店主さんには感謝しかない。
声が出ない私をずっと気遣ってくれて、いつも声をかけてくれたのも嬉しかった。
これからもこの場所で頑張っていきたい。
「着いちゃったね」
「…【少し、寂しい】」
「そっか。寂しいって思ってくれたんだ。【すごく嬉しい】…なんて言ったら失礼かな?」
手話を交えながら、穂と会話していくのは楽しい。
彼にはきっと明日もぎっしり予定があって、精神的疲労もたまっているはずだから早く休んでほしい…そう思うのに、どうしても気持ちを抑えられなかった。
「……」
「桜雪?」
ひとりにしたら霧のように消えてしまわないか心配になって、つい袖を掴んでしまう。
思っていることを察されたのか、穂はふっと笑って優しく撫でた。
「俺はもう大丈夫だよ。桜雪と一緒にいる未来を選ぶって決めたんだから」
街灯に照らされる彼の表情には迷いがなかった。
それなら、私にできることは信じることだけだ。
「【おやすみなさい】」
「また明日連絡するね」
ケージに入ったこゆきをそっとお気に入りのベッドに寝かせて自分も眠る。
ここ数日、色々なことがあって少し疲れていたのかもしれない。
気を張りすぎていたと反省しつつ、穂の笑顔を思い出してひとりどきどきしていた。
……翌日の夕方、いつものようにこゆきを預かってもらった帰り、突然腕を掴まれる。
「……!」
振りほどこうとすると、相手は焦ったように声をかけてきた。
「驚かせてごめん。少し話を聞いてもらえないかな?」
近くのカフェに入って話をすることになってしまったけれど、どうしてこの人が私を探していたんだろう。
「申し訳ないんだけど、霧のことを教えてほしいんだ。今どんなふうに過ごしているかとか、簡単にでいいから」
「……」
私はその言葉に首を横にふる。
それでも相手は諦めてくれない。
「そう言わずにさ…お願い。俺は霧とステージで、」
「【申し訳ありませんが、私が話せることはありません。…人のことを勝手に話せません。
先日防犯ブザーを鳴らしたことは謝ります。でも…黒川さんだって、自分のことを全然知らない人に勝手に話されたら嫌でしょう?】」
しつこい男にメモを突き出す。
…これで諦めて帰ってくれるだろうか。
「お疲れ」
「……!」
穂が迎えに来てくれていたみたいで、なんだか緊張してしまう。
こんなふうに名前を呼ぶのも、キスをしたことも。
色々思い出して、だんだん恥ずかしくなってきた。
「今日は、お客さん多かったね」
一応頷いたけれど、穂にはちゃんと見えただろうか。
「…ねえ桜雪。俺のこと、また穂って呼んでくれる?」
その言葉にも首を縦にふる。
しばらく沈黙が流れて、猫カフェに辿り着いた。
「八坂さん、お疲れ様。こゆきはゆっくり寝ているから、ケージに入れて運んでくるね」
一礼して待っていると、売り物のクッキーを渡される。
「ふたりで食べて。猫用のものはそっちの袋に入れたから」
店主さんには感謝しかない。
声が出ない私をずっと気遣ってくれて、いつも声をかけてくれたのも嬉しかった。
これからもこの場所で頑張っていきたい。
「着いちゃったね」
「…【少し、寂しい】」
「そっか。寂しいって思ってくれたんだ。【すごく嬉しい】…なんて言ったら失礼かな?」
手話を交えながら、穂と会話していくのは楽しい。
彼にはきっと明日もぎっしり予定があって、精神的疲労もたまっているはずだから早く休んでほしい…そう思うのに、どうしても気持ちを抑えられなかった。
「……」
「桜雪?」
ひとりにしたら霧のように消えてしまわないか心配になって、つい袖を掴んでしまう。
思っていることを察されたのか、穂はふっと笑って優しく撫でた。
「俺はもう大丈夫だよ。桜雪と一緒にいる未来を選ぶって決めたんだから」
街灯に照らされる彼の表情には迷いがなかった。
それなら、私にできることは信じることだけだ。
「【おやすみなさい】」
「また明日連絡するね」
ケージに入ったこゆきをそっとお気に入りのベッドに寝かせて自分も眠る。
ここ数日、色々なことがあって少し疲れていたのかもしれない。
気を張りすぎていたと反省しつつ、穂の笑顔を思い出してひとりどきどきしていた。
……翌日の夕方、いつものようにこゆきを預かってもらった帰り、突然腕を掴まれる。
「……!」
振りほどこうとすると、相手は焦ったように声をかけてきた。
「驚かせてごめん。少し話を聞いてもらえないかな?」
近くのカフェに入って話をすることになってしまったけれど、どうしてこの人が私を探していたんだろう。
「申し訳ないんだけど、霧のことを教えてほしいんだ。今どんなふうに過ごしているかとか、簡単にでいいから」
「……」
私はその言葉に首を横にふる。
それでも相手は諦めてくれない。
「そう言わずにさ…お願い。俺は霧とステージで、」
「【申し訳ありませんが、私が話せることはありません。…人のことを勝手に話せません。
先日防犯ブザーを鳴らしたことは謝ります。でも…黒川さんだって、自分のことを全然知らない人に勝手に話されたら嫌でしょう?】」
しつこい男にメモを突き出す。
…これで諦めて帰ってくれるだろうか。
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