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逆境を壊す
第71話
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「ねえ、クロが主催のやつ行くでしょ?」
「勿論!どんな感じになるのか楽しみだね」
町行く人の何気ない会話が耳に届く。
コンサートに直接関わることはしない。
ただ、成功を勝手に祈っておくことにしよう。
「桜雪も今日シフト?」
元気よく頷く桜雪の手に触れる。
やっぱりまだ少し痛むのか、びくりと体を震わせていた。
「…ごめん。痛かった?」
彼女は首を横にふったけど、テーピングが巻かれたそこはやっぱり痛そうだ。
「今日もよろしくお願いします」
「うん。よろしく」
先輩たちに挨拶して、ふたりでポップやコーナーの飾りつけを用意する。
……あの日以来、黒川とは会っていない。
事務所の番号にも、もう連絡してこないでほしいということと感謝の言葉を返信して迷惑メール振り分けにした。
何度が届いているのかもしれないけど、読みたいとは思えない。
「…仕事が終わったら、また深夜カフェに行こうか」
桜雪はぱっと目を輝かせ、楽しそうに手を動かす。
予定が合わないことも多い俺たちは、一緒にいられる時間を大切にしようと話をした。
ひとりの時間だって大切だし、お互い特に窮屈な思いはしていない…と、思う。
「……」
「どうしたの?」
「【あの人、多分何か探してる】」
「声かけてくるね。…お客様、何か探しものですか?」
桜雪は人の心にすぐ気づく。
見つけたら手話で話した後、指でさして教えてくれるのだ。
「ありがとう。そちらのお嬢さんも、手伝ってくれて助かりました」
桜雪はぺこぺこ頭を下げ、俺もその隣でお客様を見送る。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
軽く頭を下げてふと顔をあげると、電柱に貼られた黒川のイベントの広告が目に入る。
いつもなら手がしびれるはずなのに、今は全然気にならない。
「【大丈夫?】」
「大丈夫だよ。ありがとう。…仕事、終わらせよう」
ふたりでやればあっという間だ。
憂鬱になることもなく、そのまま特設コーナーを作り終えた。
「えっと…【お疲れ様】」
「……!【お疲れ様。いつ覚えたの?】」
「うーん…いつの間にか?」
ハイタッチをして、そのまま奥の倉庫に入る。
まだ梱包作業が残っていて、とてもすぐに終わらせられるような量ではない。
それでも、前よりずっと楽しく仕事できているような気がする。
「送っていくよ。まずは猫カフェに寄ってからだね」
「【今日はお泊りで…】」
「そうなんだ。それじゃあ、深夜カフェに行こうか」
こゆきも少しは安心して過ごせるようになってきたのかもしれない。
桜雪の笑顔を見て、また抱きしめたくなってしまう。
……気づけば春が、もう近い。
「勿論!どんな感じになるのか楽しみだね」
町行く人の何気ない会話が耳に届く。
コンサートに直接関わることはしない。
ただ、成功を勝手に祈っておくことにしよう。
「桜雪も今日シフト?」
元気よく頷く桜雪の手に触れる。
やっぱりまだ少し痛むのか、びくりと体を震わせていた。
「…ごめん。痛かった?」
彼女は首を横にふったけど、テーピングが巻かれたそこはやっぱり痛そうだ。
「今日もよろしくお願いします」
「うん。よろしく」
先輩たちに挨拶して、ふたりでポップやコーナーの飾りつけを用意する。
……あの日以来、黒川とは会っていない。
事務所の番号にも、もう連絡してこないでほしいということと感謝の言葉を返信して迷惑メール振り分けにした。
何度が届いているのかもしれないけど、読みたいとは思えない。
「…仕事が終わったら、また深夜カフェに行こうか」
桜雪はぱっと目を輝かせ、楽しそうに手を動かす。
予定が合わないことも多い俺たちは、一緒にいられる時間を大切にしようと話をした。
ひとりの時間だって大切だし、お互い特に窮屈な思いはしていない…と、思う。
「……」
「どうしたの?」
「【あの人、多分何か探してる】」
「声かけてくるね。…お客様、何か探しものですか?」
桜雪は人の心にすぐ気づく。
見つけたら手話で話した後、指でさして教えてくれるのだ。
「ありがとう。そちらのお嬢さんも、手伝ってくれて助かりました」
桜雪はぺこぺこ頭を下げ、俺もその隣でお客様を見送る。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
軽く頭を下げてふと顔をあげると、電柱に貼られた黒川のイベントの広告が目に入る。
いつもなら手がしびれるはずなのに、今は全然気にならない。
「【大丈夫?】」
「大丈夫だよ。ありがとう。…仕事、終わらせよう」
ふたりでやればあっという間だ。
憂鬱になることもなく、そのまま特設コーナーを作り終えた。
「えっと…【お疲れ様】」
「……!【お疲れ様。いつ覚えたの?】」
「うーん…いつの間にか?」
ハイタッチをして、そのまま奥の倉庫に入る。
まだ梱包作業が残っていて、とてもすぐに終わらせられるような量ではない。
それでも、前よりずっと楽しく仕事できているような気がする。
「送っていくよ。まずは猫カフェに寄ってからだね」
「【今日はお泊りで…】」
「そうなんだ。それじゃあ、深夜カフェに行こうか」
こゆきも少しは安心して過ごせるようになってきたのかもしれない。
桜雪の笑顔を見て、また抱きしめたくなってしまう。
……気づけば春が、もう近い。
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