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隠れていたもの
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いつものようにハーブを摘み、間引きも終わらせる。
花がすくすく成長しているのを見るだけで楽しくなってきて、町へ買い出しに行く度少しずつ植えていた。
それが先日、ようやく芽吹きはじめたのだ。
「...お客様だ」
今宵も誰かがこの建物にやってくる。
それにしても、最近は本当に夜間営業が多い。
それだけ眠れない症状を抱えた人間が多いということだろうか。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
その少女は一礼し、そのまま近くの椅子に腰かける。
「取り敢えず飲み物をお持ちしますね」
彼女の表情は曇ったままで、やがて項垂れてしまう。
何から話すべきか迷ったが、このまま放っておくわけにはいかない。
「お客様、まずは入浴されてください」
「え...?」
よく見ると少女は泥だらけで、カッターシャツには血が滲んでいるようだった。
「バスタオルはそちらにあるものを使っていただいて大丈夫ですし、着替えは恐らくこちらに仕舞われているものがサイズが合うと思いますので」
「あ、ありがとうございます」
彼女が脱衣所に入ったのを確認してから再び料理に戻る。
だが、それだけではいけないと思い直し、救急箱を用意した。
包帯の備蓄がもう少なくなってきている。
あまり気は進まないが、町に行くしかないだろう。
「あの...ありがとうございました」
「着ていらっしゃったものは洗濯できます。流石に女性の物に触れることはできませんので、お客様自身にやっていただくことになりますが...」
「それなら、借りてもいいですか?」
「勿論です」
彼女の姿が見えなくなり、一先ず淹れ直した飲み物を用意する。
「お客様、よろしければこちらをお召し上がりください」
「ありがとうございます。...いただきます」
やはり腕には傷があり、それがどうついたのかは想像できた。
『お客様によっては訊かれたくないと考えていることがあったりする。
それを見極められないと、お客様を傷つけてしまうよ』
つまり、はっきり言ってしまっていいかは別問題になるということだ。
「お客様、よろしければその傷を診せていただいてもよろしいでしょうか?」
「...?はい」
血が止まらなくなっているのか、少女がそう答えた瞬間赤が滴り落ちていく。
「ごめんなさい、私...」
「慌てなくて大丈夫ですよ。そこまで本格的な処置はできませんが、このくらいならなんとかなりますから」
傷が縫うほど深いわけではなさそうなことだけが唯一の救いだ。
なんとか止血し、念のためガーゼで保護しておいた方がいいだろう。
色々考えつつ新しいタオルを渡した。
「しばらくこれで傷口を軽く押さえておいてください。止血が終わってから応急処置をします」
花がすくすく成長しているのを見るだけで楽しくなってきて、町へ買い出しに行く度少しずつ植えていた。
それが先日、ようやく芽吹きはじめたのだ。
「...お客様だ」
今宵も誰かがこの建物にやってくる。
それにしても、最近は本当に夜間営業が多い。
それだけ眠れない症状を抱えた人間が多いということだろうか。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
その少女は一礼し、そのまま近くの椅子に腰かける。
「取り敢えず飲み物をお持ちしますね」
彼女の表情は曇ったままで、やがて項垂れてしまう。
何から話すべきか迷ったが、このまま放っておくわけにはいかない。
「お客様、まずは入浴されてください」
「え...?」
よく見ると少女は泥だらけで、カッターシャツには血が滲んでいるようだった。
「バスタオルはそちらにあるものを使っていただいて大丈夫ですし、着替えは恐らくこちらに仕舞われているものがサイズが合うと思いますので」
「あ、ありがとうございます」
彼女が脱衣所に入ったのを確認してから再び料理に戻る。
だが、それだけではいけないと思い直し、救急箱を用意した。
包帯の備蓄がもう少なくなってきている。
あまり気は進まないが、町に行くしかないだろう。
「あの...ありがとうございました」
「着ていらっしゃったものは洗濯できます。流石に女性の物に触れることはできませんので、お客様自身にやっていただくことになりますが...」
「それなら、借りてもいいですか?」
「勿論です」
彼女の姿が見えなくなり、一先ず淹れ直した飲み物を用意する。
「お客様、よろしければこちらをお召し上がりください」
「ありがとうございます。...いただきます」
やはり腕には傷があり、それがどうついたのかは想像できた。
『お客様によっては訊かれたくないと考えていることがあったりする。
それを見極められないと、お客様を傷つけてしまうよ』
つまり、はっきり言ってしまっていいかは別問題になるということだ。
「お客様、よろしければその傷を診せていただいてもよろしいでしょうか?」
「...?はい」
血が止まらなくなっているのか、少女がそう答えた瞬間赤が滴り落ちていく。
「ごめんなさい、私...」
「慌てなくて大丈夫ですよ。そこまで本格的な処置はできませんが、このくらいならなんとかなりますから」
傷が縫うほど深いわけではなさそうなことだけが唯一の救いだ。
なんとか止血し、念のためガーゼで保護しておいた方がいいだろう。
色々考えつつ新しいタオルを渡した。
「しばらくこれで傷口を軽く押さえておいてください。止血が終わってから応急処置をします」
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