路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get engaged. -In linear light-

第51話

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ー**ー
俺たちはまず、シチューを食す。
「ニンジンが多いですね...。私はニンジンが好きなので、とても嬉しいです!」
「喜んでくれてよかった」
正直、まずいと言われてしまうのではないかとひやひやしていた。
シチューなんて、作るのは久しぶりだったから。
俺もメルも、あっという間に完食してしまった。
「美味しかったです。カムイ、ありがとうございます」
「俺は、俺がやりたいようにやっただけだから」
メルに笑ってほしかったから、なんて口が裂けても言えない。
「そろそろ、外に出てみようか」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(この時間帯のはずなんだけど...)
砂浜の上にシートを敷いて座りながら、俺は空を見上げる。
隣ではメルがうとうとしている...。
(疲れてるよな...)
俺はメルに、一応持ってきておいたブランケットをそっとかける。
「カムイ...?」
「大丈夫?眠いなら先に寝ててもいいよ?」
「い、いえ!絶対に寝ません」
本当に面白い子だな、と思う。
メルの頭をそっと撫でていると...
(...!)
「メル、ちょっと起きられる?空を見て」
「...!わあ...綺麗です!」
それは、大量の流れ星。
何年かに一度の、この時季にしか見られない、貴重な光景である。
「流星群っていうんだよ。流れ星がいっぱい流れてるでしょ?」
「はい!えっと...確か、お願い事をしてもいいんですよね?」
「うん。俺も何かお願いするよ」
俺は目を閉じて、そっと祈る。
(俺はどうなってもいいから...メルがずっと幸せでいられますように)
「綺麗ですが、流れるのが早いです...」
「お願い事はした?」
「はい!バッチリです!」
メルはにこにこと笑っている。
今のタイミングなら、聞けるのかもしれない。
「メル、一つ教えてほしいことがある」
「なんでしょうか?」
「海に入ったとき、どうして元気がなかったの?」
ー*ー
やっぱりカムイには見抜かれてしまっていた。
(ここまでバレてしまったのなら、言うしかありませんよね)
「...カムイと、違ったからです」
「ん?」
「カムイは海の水が冷たいと言ってましたが、私にとってはちっとも寒くなかったんです。だから...色々ずれているな、と思いまして...」
カムイは無言で私を抱きしめてくれた。
「感覚がずれてる?そんなことないよ。だってそれは、人それぞれのものだから」
「人それぞれ、ですか?」
「うん。例えば...あの流星群を見ても、綺麗だと思わない人がいるかもしれない。雨が好きな人もいれば、晴れが好きな人もいる。食べ物の好みだって、人それぞれでしょ?なんだって、人それぞれなんだよ」
全て、人それぞれ。
それが『個性』というものなのだろうか。
カムイは言葉を続ける。
「みんなそれぞれ違うんだ。だから、メルの感覚がずれているとかそういうわけじゃなくて、それはあくまで個人差というものなんだと思うよ。俺は、どんなメルでも好きだけどね」
「カムイ...」
好きという言葉を、
愛してるという言葉を、
ありがとうという言葉を...いくら伝えても伝え足りない。
私は、カムイの頬にキスをした。
「...!」
ー**ー
...今のは反則だ。
可愛すぎてどうしようもなくなる。
「ありがとうございます、カムイ」
メルはまた、ふわふわな笑顔をこちらに見せる。
「どういたしまして」
俺は今すぐにでも口づけてしまいたい衝動を抑え、平然を装って答えた。
それからしばらく沈黙が続き...とん、と肩が少しだけ重くなる。
「すぅ...」
メルがぐっすり眠ってしまっていた。
(風邪をひいては大変だ)
俺はメルを横抱きにし、急いでコテージのなかへと戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんとかベッドにメルを寝かせる。
俺はベッドから離れようとしたのだが、
「んん...」
メルが腕を離してくれない。
やんわりとどけようとしても、全く動かない。
「ん...」
「⁉」
俺はいきなりベッドに倒される。
そのまま腰に腕を回され、完全に動きを封じられた。
本当は、少しだけ仕事をするつもりだったのだが...
こんな日があってもいいかと俺は素直にメルを抱きしめかえす。
(幸せそうな顔をしているな...よかった)
メルは楽しい夢でも見ているのか、寝顔がとても穏やかだ。
海の色が好きだと言うメルを、どうしても海に連れてきたかった。
メルが嫌がるんじゃないかと心配していたが、結果的にはオッケーだったようだ。
「メル...」
俺はこの名前を、この先ずっと呼び続けられるだろうか。
そんなことを考えながらしばらく愛しいメルの寝顔を見ていたが...やがて俺にも睡魔が襲いかかってくる。
「おやすみ」
目を閉じる前...正確には意識がとぶ前に、メルの唇にそっとキスをおとした。
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