111 / 220
Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第71話
しおりを挟む
ー*ー
私はいつの間にか、カムイの腕のなかにいた。
「カムイ...?」
「...ワガママ言ってもいい?」
「わがまま、ですか?」
カムイは私を強く抱きしめる。
「うん。...このまま、二人だけで過ごしたい」
「...!」
滅多にこうしてほしいと言わないカムイが、今こうして私にわがままだと言いながら、ささやかなことを言ってくる。
(私は、もっとたくさんワガママを言っているのに...)
「...ダメかな?」
こう聞かれると、私は断ることができない。
「勿論です!」
私にできることがあるのなら、私はやってみたい。
「ごめんね...。ありがとう」
「いえ、私にできることなら、なんでもしますから!」
珍しく弱々しいカムイを、支えたいと思った。
ー**ー
「もう少しだけ、このままいてもいいかな?」
「はい」
メルのその声だけで安心する。
何故こんなふうになってしまったのか、自分でも分からない。
(独占欲、か...)
たまたま近くを通りかかった男がきみの方を見ていて、みんなを気にするきみを独り占めしたくて...なんて言えるわけはない。
だが、制御不能なそんな気持ちが俺の心のなかにあるのも事実だ。
つい抱きしめる腕に力が入ってしまった。
「...っ」
「ごめん!」
俺はすぐに離した。
「いえ、大丈夫です」
メルはいつものようににこにこしている。
「カムイが甘えてきてくれて...私、嬉しかったです」
そんなことを言うメルに、俺はキスをしていた。
「明日は、結婚式当日だね」
「はい!ナタリーさんの花嫁さん姿...楽しみです!」
「装飾とか壊してそうだけど...」
「こ、壊したりしてなかったですよ?たしかにちょっとネックレスが曲がってましたけど...」
俺は思わず笑ってしまった。
「それを壊したっていうんじゃない?」
「...!そうですね」
メルもキラキラとした笑顔になった。
ー*ー
「おまえたち、今日はゆっくり休めたか?」
夕食会場でエリックさんに声をかけられた。
「ん?...今日はいい日だったよ」
私はカムイに抱きよせられる。
「⁉」
「...俺に自慢しているつもりなのか?」
「いや、ぶつかりそうになってたから肩を抱きよせただけだよ」
カムイはいつも突然で、私の心臓は壊れそうだ。
「準備は終わった?」
「ああ」
「明日は楽しみですね」
「そうだな」
三人で話していると、ベンさんにそっくりな男性が近づいてくる。
「ダン、さん」
私が後ずさりそうになるのを、カムイが支えてくれる。
「ダン、メルを怖がらせるようなことは...」
「いや、今日はお礼を言いにきただけだよ」
ダンさんは頭を下げる。
「これからも仲良くしてやってほしいだよ」
「...!はい!」
「当たり前だろう」
「ああ、当然だ」
「それじゃあおいらは戻るぞお」
その場からダンさんがいなくなったあと、私はカムイに囁いた。
「ありがとうございます、カムイ」
「...!」
ー**ー
本人にそんなつもりがないのは分かっている。
だが...耳許で囁くのは反則だ。
「カムイ?」
メルが不思議そうに俺の顔をのぞく。
「ううん、なんでもない」
「おまえ、」
俺は目線で黙っていろとエリックに合図した。
「俺はそろそろ戻る」
そう言ってこの場を去ろうとしたエリックは足を止めた。
「そういえば...おまえたちも明日の下見、一緒にくるか?」
「見張りってこと?」
「そうだ。おかしな点がないか、調べるんだ。いくら俺が警官とはいえ、一人では見落とす可能性がある」
「カムイ、私、行きたいです」
メルが望むなら、俺が断る理由はない。
大切な友人の結婚式だ。
万全に万全を重ねなくてはならない。
「いいよ。じゃあ、式の三十分前集合でいい?」
「ああ。それではな」
エリックは今度こそ去っていった。
「俺たちも部屋に戻ろうか」
ー*ー
部屋に戻ると、ふっと緊張が解けた。
「...っ、メル」
「ごめんなさい...」
足の力が抜け、立てなくなってしまう。
「いいよ、今日はもう入浴は済ませているし、あとは着替えるだけでしょ?ネグリジェはベッドの近くにたたんであったよね?」
「ありがとうございます...」
カムイがネグリジェをとってきてくれる。
「じゃあ俺は隣の部屋で着替えてくるから...着替え終わったら呼んでね」
「はい!」
私はもたもたしながらも着替えを済ませる。
「カムイ、終わりました」
「ん、じゃあそっちに行くね」
カムイはそっと私の隣に横になる。
それから、ぎゅっと抱きしめられる。
「...明日は早いし、緊張してるでしょ?だから、今日はもうおやすみ」
「はい、おやすみなさい...」
私もカムイも、あっという間に眠りに落ちていた。
ー**ー
翌日。
「メル、本当にその格好でいいの?」
「はい!」
メルが選んだのは、パーティードレス...ではなく、俺がいつも着るような、パンツスタイルのものだった。
メル曰く、その方が動きやすいらしい。
この場所では、黒の衣装は基本的に禁止されていないので俺もそういう服装だ。
「取り敢えず教会に行こうか」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「エリックさん、おはようございます」
「おはよう」
「もうチェック終わらせたの?」
「そんなわけないだろう。こんな短時間で終わるわけが...」
いつものように言いあっていると、メルがステンドグラスの前で止まった。
「...ここだけ、前にきたときと向きが違います」
「それは変だね。しかもわざわざネジで固定してある。普通はこんなことしない」
「はずせないのか?」
「叩き割ればはずれるよ」
「...仕方ない」
エリックは工具箱の中からハンマーをとりだし、思いきり割った。
そこからでてきたのは、最悪なものだった。
「...嘘だろ」
「これって...」
二人が驚いているなか、俺はその箱を取り出した。
そしてその中には、手紙が入っていた。
『きみにとって邪魔なものは、僕がお片づけしてあげるよ』
何故?どうしてあいつがここに...。
それよりも今は、この箱を止めなければならない。
「エリック、協力してくれる?」
「私もお手伝いさせてください!」
「うん、お願いするよ」
三人でなんとかしようと覚悟を決めた。
ーー式がはじまるまで、あと三十分。
私はいつの間にか、カムイの腕のなかにいた。
「カムイ...?」
「...ワガママ言ってもいい?」
「わがまま、ですか?」
カムイは私を強く抱きしめる。
「うん。...このまま、二人だけで過ごしたい」
「...!」
滅多にこうしてほしいと言わないカムイが、今こうして私にわがままだと言いながら、ささやかなことを言ってくる。
(私は、もっとたくさんワガママを言っているのに...)
「...ダメかな?」
こう聞かれると、私は断ることができない。
「勿論です!」
私にできることがあるのなら、私はやってみたい。
「ごめんね...。ありがとう」
「いえ、私にできることなら、なんでもしますから!」
珍しく弱々しいカムイを、支えたいと思った。
ー**ー
「もう少しだけ、このままいてもいいかな?」
「はい」
メルのその声だけで安心する。
何故こんなふうになってしまったのか、自分でも分からない。
(独占欲、か...)
たまたま近くを通りかかった男がきみの方を見ていて、みんなを気にするきみを独り占めしたくて...なんて言えるわけはない。
だが、制御不能なそんな気持ちが俺の心のなかにあるのも事実だ。
つい抱きしめる腕に力が入ってしまった。
「...っ」
「ごめん!」
俺はすぐに離した。
「いえ、大丈夫です」
メルはいつものようににこにこしている。
「カムイが甘えてきてくれて...私、嬉しかったです」
そんなことを言うメルに、俺はキスをしていた。
「明日は、結婚式当日だね」
「はい!ナタリーさんの花嫁さん姿...楽しみです!」
「装飾とか壊してそうだけど...」
「こ、壊したりしてなかったですよ?たしかにちょっとネックレスが曲がってましたけど...」
俺は思わず笑ってしまった。
「それを壊したっていうんじゃない?」
「...!そうですね」
メルもキラキラとした笑顔になった。
ー*ー
「おまえたち、今日はゆっくり休めたか?」
夕食会場でエリックさんに声をかけられた。
「ん?...今日はいい日だったよ」
私はカムイに抱きよせられる。
「⁉」
「...俺に自慢しているつもりなのか?」
「いや、ぶつかりそうになってたから肩を抱きよせただけだよ」
カムイはいつも突然で、私の心臓は壊れそうだ。
「準備は終わった?」
「ああ」
「明日は楽しみですね」
「そうだな」
三人で話していると、ベンさんにそっくりな男性が近づいてくる。
「ダン、さん」
私が後ずさりそうになるのを、カムイが支えてくれる。
「ダン、メルを怖がらせるようなことは...」
「いや、今日はお礼を言いにきただけだよ」
ダンさんは頭を下げる。
「これからも仲良くしてやってほしいだよ」
「...!はい!」
「当たり前だろう」
「ああ、当然だ」
「それじゃあおいらは戻るぞお」
その場からダンさんがいなくなったあと、私はカムイに囁いた。
「ありがとうございます、カムイ」
「...!」
ー**ー
本人にそんなつもりがないのは分かっている。
だが...耳許で囁くのは反則だ。
「カムイ?」
メルが不思議そうに俺の顔をのぞく。
「ううん、なんでもない」
「おまえ、」
俺は目線で黙っていろとエリックに合図した。
「俺はそろそろ戻る」
そう言ってこの場を去ろうとしたエリックは足を止めた。
「そういえば...おまえたちも明日の下見、一緒にくるか?」
「見張りってこと?」
「そうだ。おかしな点がないか、調べるんだ。いくら俺が警官とはいえ、一人では見落とす可能性がある」
「カムイ、私、行きたいです」
メルが望むなら、俺が断る理由はない。
大切な友人の結婚式だ。
万全に万全を重ねなくてはならない。
「いいよ。じゃあ、式の三十分前集合でいい?」
「ああ。それではな」
エリックは今度こそ去っていった。
「俺たちも部屋に戻ろうか」
ー*ー
部屋に戻ると、ふっと緊張が解けた。
「...っ、メル」
「ごめんなさい...」
足の力が抜け、立てなくなってしまう。
「いいよ、今日はもう入浴は済ませているし、あとは着替えるだけでしょ?ネグリジェはベッドの近くにたたんであったよね?」
「ありがとうございます...」
カムイがネグリジェをとってきてくれる。
「じゃあ俺は隣の部屋で着替えてくるから...着替え終わったら呼んでね」
「はい!」
私はもたもたしながらも着替えを済ませる。
「カムイ、終わりました」
「ん、じゃあそっちに行くね」
カムイはそっと私の隣に横になる。
それから、ぎゅっと抱きしめられる。
「...明日は早いし、緊張してるでしょ?だから、今日はもうおやすみ」
「はい、おやすみなさい...」
私もカムイも、あっという間に眠りに落ちていた。
ー**ー
翌日。
「メル、本当にその格好でいいの?」
「はい!」
メルが選んだのは、パーティードレス...ではなく、俺がいつも着るような、パンツスタイルのものだった。
メル曰く、その方が動きやすいらしい。
この場所では、黒の衣装は基本的に禁止されていないので俺もそういう服装だ。
「取り敢えず教会に行こうか」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「エリックさん、おはようございます」
「おはよう」
「もうチェック終わらせたの?」
「そんなわけないだろう。こんな短時間で終わるわけが...」
いつものように言いあっていると、メルがステンドグラスの前で止まった。
「...ここだけ、前にきたときと向きが違います」
「それは変だね。しかもわざわざネジで固定してある。普通はこんなことしない」
「はずせないのか?」
「叩き割ればはずれるよ」
「...仕方ない」
エリックは工具箱の中からハンマーをとりだし、思いきり割った。
そこからでてきたのは、最悪なものだった。
「...嘘だろ」
「これって...」
二人が驚いているなか、俺はその箱を取り出した。
そしてその中には、手紙が入っていた。
『きみにとって邪魔なものは、僕がお片づけしてあげるよ』
何故?どうしてあいつがここに...。
それよりも今は、この箱を止めなければならない。
「エリック、協力してくれる?」
「私もお手伝いさせてください!」
「うん、お願いするよ」
三人でなんとかしようと覚悟を決めた。
ーー式がはじまるまで、あと三十分。
0
あなたにおすすめの小説
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる