50 / 220
Until the day when Christmas comes.
番外編『Two murderers' of Christmas Eve.』
しおりを挟む
「ねえ、ベン」
「ん?」
「...離れないでね」
「...当たり前だろ」
これは、大男と天真爛漫な女性の物語...。
《ベン目線》
「ベン、これ作ったの!」
そう言ってナタリーが差し出してきたのは、手作りのカーディガンだった。
「ベンのサイズって、どのくらいか分からないから...」
俺は、そっとナタリーを抱きしめる。
そして、耳許で囁いた。
「...ありがとう」
「...!」
(やはりなれてはくれない、か)
《ナタリー目線》
「い、いきなりその口調になるのはやめてっていつも言ってるでしょ...!」
ベンの訛りは、実はもうほとんど残っていない。
あたしのとある一言とベンのとある経験がきっかけで、あたし以外の前では訛りを残したまま話している。
「別にいいだろ、最近逆に訛りを残したまま喋る方が難しい」
「まあ、そうなんだけど...。カムイたちには言わないの?」
「おまえだけでいい。それに、お嬢さんがきたばかりの今、急にこんな話し方で話したりしたら...」
「あたしが悪かったわ」
ベンはあたしがあげたカーディガンを羽織ってくれる。
こういう律儀な所があたしは好きだ。
「...これ」
それは、綺麗なブローチだった。
「可愛いっ!あたしに、似合うのかな...」
するとベンはあたしの手からブローチをとり、そっとつけてくれる。
「ん、ちゃんと似合ってる」
《ベン目線》
ナタリーは顔を真っ赤にしている。
「...もうっ」
俺を軽く小突いている...つもりなのだろう。
俺は声をあげそうになるのを必死で堪え、なんとかナタリーを腕のなかに閉じこめる。
「呑みすぎるなよ」
「う、うん!」
ナタリーは本日三本目のシャンパンを開ける。
(本当に大丈夫なのかよ...)
俺はそう思いつつ、酒の相手をする。
ナタリーの相手をできるのは、せいぜい俺くらいだろうから。
「カクテル飲みたいな...」
《ナタリー目線》
その一言を、あたしは聞き逃さなかった。
「いつものを作ればいい?」
「ああ」
ドライ・ジンとグリーンのシャルトリューズをシェイカーに注ぎ、いつものようにふるまう。
「はい!」
「ありがとう」
「ベン、これ好きだよね」
「グリーン・アラスカっていうやつ」
そう言いながらベンがあまりに美味しそうに飲むので、あたしも飲んでみたくなった。
同じ材料を揃え、そっと口に含む。
「あ、おい!」
美味しいけど、これは...。
そんなことを考えているうちに、あたしの意識は途絶えていた。
《ベン目線》
...目を離すとすぐにこうだ。
これだから目が離せない。
そっとベッドまで運び、冷やしたタオルを用意する。
「ん...」
(これ、意識あるのか?)
「大丈夫か?」
「...ん」
本当に大丈夫なのだろうかという思いがこみあげてくる。
「待ってろ、水を持って、」
「...ヤダ」
「?」
「行っちゃ、ヤダ」
ナタリーは酔うといつもこうなる。
...普段全くと言っていいほど甘えてこない彼女は、酔っぱらった時だけこうして甘えてくる。
「すぐ戻るから、我慢しろ」
「我慢...?分かった」
ナタリーはすんなりと俺の袖から手を離した。
すぐに戻ってこないとな、と思いつつ、後片づけをてきぱきと済ませた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ベッドまで戻ると、ナタリーが泣いていた。
(しまった、時間をかけすぎた!)
「ベン、どこまで行ってたの...?」
水を渡すと、それをちびちびと飲みながら涙をこぼす。
「ごめんな」
俺はナタリーの頭をそっと撫でる。
彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。
再びベッドに横になったナタリーは、俺に向かって話しかけてくる。
「ねえ、ベン」
「ん?」
「...離れないでね」
「...当たり前だろ」
俺はそっと口づけをおとす。
ぎゅっと腕を掴まれてしまい、動くことができない。
それでも俺は、その手を振りほどくことはできない。
仕方がないので、そのまま寝ることにした。
「...おやすみ」
《ナタリー目線》
「あれ?」
あたしは確か、お酒を飲んで、それから...。
横を向くと、ベンがベッドに肘をついて寝ている。
あたしの手を、握ってくれている。
「あたしが握ったから、動かずにいてくれたのか...。いつも優しいね、ベンは」
そっと頭を撫でていると、ぴくりと瞼が動いた。
(起きた?)
ベンは微動だにしない。
「ありがとう」
「人のこと見てにやつくな」
「わっ⁉起きてるならちゃんと言ってよ!」
「まったく、あれほど飲みすぎるなと言ったのに...」
「それは、その...ごめんなさい」
「まあ、『失敗は成功のもと』だ。だが、あんな無防備な姿を俺以外に見せるな。いいな?」
「うん!」
やきもちをやいてくれていると、うぬぼれてもいいだろうか。
あたしのためだと、そう思ってもいいだろうか。
「もう少し寝かせろ」
「わっ...」
ベンがベッドに寝転がり、あたしを抱きしめる。
「...今日はお休みだからね」
朝陽がさんさんと眩しく照らしつけるなか、あたしたちは再び眠りについたのだった。
「ん?」
「...離れないでね」
「...当たり前だろ」
これは、大男と天真爛漫な女性の物語...。
《ベン目線》
「ベン、これ作ったの!」
そう言ってナタリーが差し出してきたのは、手作りのカーディガンだった。
「ベンのサイズって、どのくらいか分からないから...」
俺は、そっとナタリーを抱きしめる。
そして、耳許で囁いた。
「...ありがとう」
「...!」
(やはりなれてはくれない、か)
《ナタリー目線》
「い、いきなりその口調になるのはやめてっていつも言ってるでしょ...!」
ベンの訛りは、実はもうほとんど残っていない。
あたしのとある一言とベンのとある経験がきっかけで、あたし以外の前では訛りを残したまま話している。
「別にいいだろ、最近逆に訛りを残したまま喋る方が難しい」
「まあ、そうなんだけど...。カムイたちには言わないの?」
「おまえだけでいい。それに、お嬢さんがきたばかりの今、急にこんな話し方で話したりしたら...」
「あたしが悪かったわ」
ベンはあたしがあげたカーディガンを羽織ってくれる。
こういう律儀な所があたしは好きだ。
「...これ」
それは、綺麗なブローチだった。
「可愛いっ!あたしに、似合うのかな...」
するとベンはあたしの手からブローチをとり、そっとつけてくれる。
「ん、ちゃんと似合ってる」
《ベン目線》
ナタリーは顔を真っ赤にしている。
「...もうっ」
俺を軽く小突いている...つもりなのだろう。
俺は声をあげそうになるのを必死で堪え、なんとかナタリーを腕のなかに閉じこめる。
「呑みすぎるなよ」
「う、うん!」
ナタリーは本日三本目のシャンパンを開ける。
(本当に大丈夫なのかよ...)
俺はそう思いつつ、酒の相手をする。
ナタリーの相手をできるのは、せいぜい俺くらいだろうから。
「カクテル飲みたいな...」
《ナタリー目線》
その一言を、あたしは聞き逃さなかった。
「いつものを作ればいい?」
「ああ」
ドライ・ジンとグリーンのシャルトリューズをシェイカーに注ぎ、いつものようにふるまう。
「はい!」
「ありがとう」
「ベン、これ好きだよね」
「グリーン・アラスカっていうやつ」
そう言いながらベンがあまりに美味しそうに飲むので、あたしも飲んでみたくなった。
同じ材料を揃え、そっと口に含む。
「あ、おい!」
美味しいけど、これは...。
そんなことを考えているうちに、あたしの意識は途絶えていた。
《ベン目線》
...目を離すとすぐにこうだ。
これだから目が離せない。
そっとベッドまで運び、冷やしたタオルを用意する。
「ん...」
(これ、意識あるのか?)
「大丈夫か?」
「...ん」
本当に大丈夫なのだろうかという思いがこみあげてくる。
「待ってろ、水を持って、」
「...ヤダ」
「?」
「行っちゃ、ヤダ」
ナタリーは酔うといつもこうなる。
...普段全くと言っていいほど甘えてこない彼女は、酔っぱらった時だけこうして甘えてくる。
「すぐ戻るから、我慢しろ」
「我慢...?分かった」
ナタリーはすんなりと俺の袖から手を離した。
すぐに戻ってこないとな、と思いつつ、後片づけをてきぱきと済ませた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ベッドまで戻ると、ナタリーが泣いていた。
(しまった、時間をかけすぎた!)
「ベン、どこまで行ってたの...?」
水を渡すと、それをちびちびと飲みながら涙をこぼす。
「ごめんな」
俺はナタリーの頭をそっと撫でる。
彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。
再びベッドに横になったナタリーは、俺に向かって話しかけてくる。
「ねえ、ベン」
「ん?」
「...離れないでね」
「...当たり前だろ」
俺はそっと口づけをおとす。
ぎゅっと腕を掴まれてしまい、動くことができない。
それでも俺は、その手を振りほどくことはできない。
仕方がないので、そのまま寝ることにした。
「...おやすみ」
《ナタリー目線》
「あれ?」
あたしは確か、お酒を飲んで、それから...。
横を向くと、ベンがベッドに肘をついて寝ている。
あたしの手を、握ってくれている。
「あたしが握ったから、動かずにいてくれたのか...。いつも優しいね、ベンは」
そっと頭を撫でていると、ぴくりと瞼が動いた。
(起きた?)
ベンは微動だにしない。
「ありがとう」
「人のこと見てにやつくな」
「わっ⁉起きてるならちゃんと言ってよ!」
「まったく、あれほど飲みすぎるなと言ったのに...」
「それは、その...ごめんなさい」
「まあ、『失敗は成功のもと』だ。だが、あんな無防備な姿を俺以外に見せるな。いいな?」
「うん!」
やきもちをやいてくれていると、うぬぼれてもいいだろうか。
あたしのためだと、そう思ってもいいだろうか。
「もう少し寝かせろ」
「わっ...」
ベンがベッドに寝転がり、あたしを抱きしめる。
「...今日はお休みだからね」
朝陽がさんさんと眩しく照らしつけるなか、あたしたちは再び眠りについたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる