路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-New dark appearance-

第93話

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ー**ー
その日の夜。
俺は、ある問題点に気づいた。
「エリック」
「...なんだ」
「そろそろ入浴したくない?」
「それは、まあ...できるならしたいが、そこまで高望みはしない」
現在エリックの体を俺がふいて入浴代わりにしているのだが、いい加減ゆっくりと入浴したいのではないかと考えたのだ。
「ちょっとだけ時間頂戴?明日には入れるようにするから!」
「別にそこまで気を遣わなくてもかまわない」
「ゆっくりできるようにするから」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう意気ごんで部屋に帰ったものの、いいアイデアがうかばない。
(どうすればいいかな...)
「カムイ、困ったお顔してます...」
「ごめんメル。なんでもないんだ」
「何か考え事ですか?」
「うん。実はね...」
俺はなんとかエリックを入浴させる方法を考えていることをメルに伝えた。
「エリックさんは、お風呂が好きなんですか?」
「うん。エリックは昔から長風呂してたから、多分好きなんだと思う」
「それなら、車椅子と一緒に入る...わけにはいきませんよね。せめて、水に浮く車椅子や、体だけを湯船に移動させる方法があればいいのですが...」
『水に浮く車椅子』
『体だけを湯船に移動させる方法』
メルと話したおかげで、だいぶヒントが得られた。
「ありがとう、メル」
ー*ー
カムイがようやく笑ってくれた。
「私、お役にたてましたか...?」
「うん、すごくいいヒントをもらった。ありがとう」
そのあと頭を優しく撫でられた。
私にとって、それが幸せだと思う時間の一つだ。
「メル、申し訳ないけど...明日、手伝ってくれないかな?」
「はい!私にできることなら、なんでも言ってください」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝。
エリックさんが朝食をすませ、眠っているうちに車椅子をバスルームへと運んだ。
「木製がいいかな...」
「どうするんですか?」
「『体だけを湯船に移動させる方法』を考えてたんだ」
「木の板を使うんですか?」
「そうだよ。この資材だと、あまり痛くないかもしれない...」
カムイが一生懸命考えている間、私はあることを試してみたくなった。
私は資材を動かす。
「えっと...これで、動けませんか?」
「それはいいかもしれない。でも、これだと車椅子に戻れないんじゃ...」
「通信機は、水に弱いですか?」
「いや、強めに作ってあるけど...そうか、エリックが出たくなったときに呼んでもらえばいいのか」
「はい!エリックさんが音声を切っておけば、エリックさんがお風呂で何をしていても音が聞こえないので、ゆっくりできます」
「メルは本当にすごいね」
「ありがとうございます!」
ー**ー
メルはいつもよりにこにこしている。
俺はいつものくせで頭を撫でてしまう。
メルはそれがいいと思ってくれているのか、笑顔がさらに明るくなったような気がする。
「よし、早速今夜実践してみるよ」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「エリック、体ふくね」
「ああ。いつもすまないな」
包帯だらけのエリックの体を見るたび、申し訳なさでいっぱいになる。
(こんなに傷だらけになって...)
「ん。終わった」
「ありがとう」
「で、エリック。車椅子に乗ってほしいんだけど...」
「...?別にかまわないが...」
俺は車椅子を押す。
バスルームへと真っ直ぐに向かう。
その途中メルと目が合う。
「...」
メルは花のような笑顔をこちらにむけてくれた。
「おい、これは一体...」
「防水通信機。困ったら呼んで?傷に滲みないように、薬風呂は避けたから」
「...!」
俺はメルのアイデアがつまった装置...らしきものを使い、エリックを湯船にいれた。
「それじゃあごゆっくり」
「あ、おい...」
俺はそそくさとバスルームをあとにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「エリックさん、喜んでくださるといいですね」
「そうだね」
俺たちは微笑みあった。
いつの間にか顔が近づいていて、そのまま唇が重なる。
「メル、本当にありがとう」
「いえ、私でお役にたててよかったです」
そのあともう一度口づけを交わした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気を遣わなくていいと言ったのに、結局あの二人に気を遣わせてしまった。
だが、俺は入浴が嫌いではない。
寧ろ好きだ。
「...っ」
右腕をあげようとするとやはり痛む。
だが、久しぶりに入った湯船は最高に温かくて、二人の優しさがつまっているような気がした。
(退院したら、何か礼をしなくてはな)
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