路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-New dark appearance-

第110話

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ー**ー
「すいません、エリック警部補はいらっしゃいますか?」
警察署の中、俺は目の前にいた警官に声をかけた。
「警部補なら、先程までこちらに...あ!警部補、お客様です」
「こんな時間に、俺に?」
エリックが首を傾げているのが見えた。
「エリック」
「エリックさん、こんにちは」
「...おまえたちか」
エリックはひと安心したような表情でこちらを見て、すぐに紅茶を淹れはじめた。
「エリック、別に事件の話をしにきた訳じゃないんだけど...」
「...?それなら何の用できた?」
「あの、お土産です」
メルが包みを差し出した。
エリックは少しだけ照れくさそうに、けれど大切そうに受け取っていた。
「メル、こんなことを聞いていいのか分からないが...」
「なんでしょう?」
「カムイに泣かされたのか?」
「え...?」
メルが戸惑ったような顔をしている。
(エリックのなかでは俺が泣かせたことになったのか)
ナタリーやベンがメルの様子がおかしいことに気づいたことは薄々分かっていた。
だが、あの二人は踏みこんでこない。
分かっていないことも多い。
エリックは鋭いが、いつもどこかずれている...。
「違います、何かがあった訳ではないんです。ただ...」
「ただ?」
「いえ、なんでもありません」
結局、メルは何も話さなかった。
俺も何かを気にしているのは分かっているが、何かまでは分かっていない。
聞きたいと思ったものの、タイミングが合わず、ずっと聞けていない。
(帰ったら聞かないとな)
ー*ー
お土産を無事に渡し終えた私たちは、そのまま馬車で帰っていた。
(ちゃんと喜んでもらえてよかったです)
窓の外を見ながら、エリックさんが言っていた一言を思い出した。
「カムイ」
「どうしたの?」
「どうしてエリックさんはあんなことを聞いてきたのでしょうか?」
「ああ、俺に泣かされたかどうか?」
「はい...。少し気になりました」
「それはね、メルが何かを考えているのがみんな分かってるからだよ」
馬車のなかで、突然カムイに抱きしめてられた。
「カムイ...?」
「メル、何かあったでしょ?...もしかして、事件のことを思い出してる?」
「どうして分かったんですか?」
「分かるよ、メルのことならなんでも。元気がないし、眼帯の結び方がいつもと違うから」
私は言われてはじめて気づいた。
ほどく時にほどきやすいように、蝶々結びにしている。
でも、今日は片結びになっていた。
「...ごめんなさい。思い出してしまって...」
「謝ることじゃないよ。メルが悪いわけじゃないから」
頭を撫でられて、私は少し安心した。
「疲れてるでしょ?寝てていいよ」
私はその声だけ聞いて、そのまま眠ってしまっていた。
ー**ー
メルに、笑顔になってほしい。
どうすればいつものように笑ってくれるだろうか。
馬車が止まった音がして、メルを起こそうとした。
「ん...」
だが、こんなに気持ちよさそうに寝ていたら起こせない。
俺はそっとメルを抱きあげた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
メルをベッドまで運んだあと、何をするか考えた。
結局思いついたのは、家に偶然余っていた牛肉で料理を作ること。
(女心が分かっていないのかもしれないな)
俺は内心そう思いながら、メルが好きそうなハンバーグを作る。
これしかできないのかと思うと、とても歯痒く感じた。
(ごめんね、メル)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日のメルの反応は、何か事件に巻きこまれたような反応だった。
もしかすると、旅行中に何かあったのかもしれない。
そう思った俺は、カムイたちが滞在していたであろう場所を訪ねた。
ちょうどその街から、調査の依頼がきている。
そのため、そこへ行こうと思ったのだ。
「あの...恐らく、『伝説の刑事』さんの街にお住まいの方だと思うのですが...」
「『伝説の刑事』はやめていただけないだろうか」
「失礼しました。えっと、警部補さんの街の方で、黒髪で眼帯の女性と黒髪で女性より背が高い男性のご夫婦はいらっしゃいませんか?」
間違いない、メルとカムイのことだ。
「俺の知り合いにいるが...」
俺のことを知っているということは、カムイが『悪魔殺し』と呼ばれていることも知っているだろう。
俺は敢えて名前を出さなかった。
「二人がどうしたんだ?」
「実は、先日ホテルが強盗に遭いまして...」
その話を聞いて、ますます間違いないと思った。
「彼等に何か用か?」
「実は、調書をとってほしいのです。奥様はお怪我をされていたようですから...」
「分かった。調書は後日、郵送するとしよう」
俺はそのままとんぼ帰りした。
(嫌なことを思い出させるのは本意ではないが...仕方ない)
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