162 / 220
Until the day when I get married.-New dark appearance-
閑話『Please call me...』
しおりを挟む
僕は服役中の身。
もう少し自由がほしいと願うのは、烏滸がましい事だと思っていた。
...でも、あの子たちはやってきた。
「メア、これから言うことは嫌だったらはっきり言ってくれればいい。でももし、メアが受けてくれるなら...俺たちの事件の捜査を手伝ってほしいんだ」
人殺しで、赦されるはずがない存在。
でも、その手をとっていいなら...。
これは、そんな僕の物語。
《メア目線》
「あの、これなんだけど...」
見せられた凶器には、見覚えがあった。
「なんで...どうしてそれが、」
「心当たりがあるの?」
「ぼうや、それって最近の事件で見つけたものなの?」
ぼうやは静かに頷いた。
(どうしてそれが...)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕のことを『悪夢』と呼んだあの男。
僕は母を殺したそいつが憎かった。
だから...力いっぱいナイフで刺した。
「さようなら」
僕はちゃんと死んだことを確認せずに、その場を離れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔のことを思い出すのは、嫌だ。
でももし、あいつが生きていたとしたら?
僕はぼうやたちに話した。
「メアのお父さん、か」
「...ごめん」
僕があのとき、確実に殺していれば。
ちゃんと死んでいると、確認していれば。
こんなことにはならなかったのに。
「『殺しておけば』、とか言うなよ」
ぼうやのお友だちはとても鋭い。
(僕が殺らなくちゃいけなかったのに)
「...またくる」
そう言ってその日は別れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから何度か、ぼうやのお友だちと話した。
事件のことを沢山話してもらった。
「きみは僕が怖くないの?」
「...?何故怖がる必要があるんだ?」
僕は人殺しなのに、まるでそんなの気にしないように話す彼が不思議に思えた。
(僕を人間扱いするなんて、変なの)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
別の日、午後からぼうやたちがくると聞いた。
僕はこういうとき、どんな顔をすればいいのか分からない。
「おい、『呪いの悪夢』!なんでおまえみたいな奴が本なんか読んでるんだ!」
...看守に殴られた。
僕の名前はそれじゃない。
僕は『悪夢』じゃない。
日常茶飯事だけど、なれない。
ずっとなれないんだ。
午後になると、ぼうやたちがきた。
「あの、メアさん...」
「どうしたの?」
「お顔が腫れてます。もしかして、何かされたんですか?」
この子も鋭い。
「メル、よく気づいたね。動かないでね、治療するから」
痛いと思っていたのに、全然痛くなかった。
「ありがとう」
「ふーん...お礼を言われる日がくるなんて、思ってなかった」
ぼうやが少し照れているような気がした。
「メル、少しだけメアと待っててくれないかな?」
「分かりました」
少女はにこにこしている。
「あの、メアさん」
「何?」
「えっと、その...このお部屋、散らかっていませんか?」
「そうだよ」
僕は平然と頷いた。
少女はしばらく考えるような仕草をみせたあと、ぽんと手をたたいた。
「メアさん、お片づけしましょう!」
「...お片、づけ?」
死体を?生きてる罪人を?それとも...僕を?
「お部屋をお片づけしたら、きっと気分も明るくなりますよ」
「それなら、何か武器がないと...」
「ち、違います!そうではなくてですね...その、お部屋を綺麗にするという意味ですよ?」
(僕が知らない意味だ)
「色々なものを整理整頓する...というのが『お片づけ』の意味です」
少女はにこりとこちらを見る。
「私も手伝いますから、カムイとエリックさんが戻ってくるまでに終わらせましょう」
「...分かったよ」
黙々と作業していると、また嫌な奴がきた。
「おい、『呪いの悪夢』!」
「...っ」
少女は怯えているようだ。
「僕にやるなら何してもいいけど、他の人がいるから今はやめてほしいな...」
「煩い、『呪いの悪夢』!」
...やめて。
その名前で呼ばないで。
僕は、そんな名前じゃない...。
お願いだから、もうやめてよ。
お願い、お願い、お願い...。
「やめてください!」
「...!」
「この方の名前は、『呪いの悪夢』ではありません。この方は、メアさんです」
「小娘が偉そうにするな!」
ダメだ、殴られる。
「...っ」
僕ができるのは、この少女を守ることだけだ!
僕が殴られる覚悟をしても、拳がとんでこない。
目を開けると、そこには...
「おい、暴行って犯罪なんだけど?」
「...ぼうや」
その男はぼうやを見て、そそくさと退散していった。
「二人とも、怪我はない?」
「はい!ありがとうございます」
「それにしても...片づいたな」
「エリック、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?メルは傷は...開いてなさそうだね。メアもどこも怪我は...」
...嗚呼、なんて幸せなんだろう。
お願い、もっと僕を呼んで。
僕を...『メア』って呼んで。
「メア?」
「メアさん...?」
どうして涙が止まらないんだろう。
「おまえはもう、『悪夢』じゃない。メアだ」
みんながこうして名前を呼んでくれる。
...僕にとって、一番の幸せだ。
「ありがとう...」
「メアが泣くとは思ってなかったな。...あとであの看守は指導しておくから。すまなかったな」
「...ありがとう」
「メアさん、またきますね」
「...うん」
次会った時は、もっと色んな話をしよう。
そうしたら、また名前を呼んでもらえるかな。
その時があるって、信じてもいいのかな。
この日の月は、いつもより輝いて見えた。
もう少し自由がほしいと願うのは、烏滸がましい事だと思っていた。
...でも、あの子たちはやってきた。
「メア、これから言うことは嫌だったらはっきり言ってくれればいい。でももし、メアが受けてくれるなら...俺たちの事件の捜査を手伝ってほしいんだ」
人殺しで、赦されるはずがない存在。
でも、その手をとっていいなら...。
これは、そんな僕の物語。
《メア目線》
「あの、これなんだけど...」
見せられた凶器には、見覚えがあった。
「なんで...どうしてそれが、」
「心当たりがあるの?」
「ぼうや、それって最近の事件で見つけたものなの?」
ぼうやは静かに頷いた。
(どうしてそれが...)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕のことを『悪夢』と呼んだあの男。
僕は母を殺したそいつが憎かった。
だから...力いっぱいナイフで刺した。
「さようなら」
僕はちゃんと死んだことを確認せずに、その場を離れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔のことを思い出すのは、嫌だ。
でももし、あいつが生きていたとしたら?
僕はぼうやたちに話した。
「メアのお父さん、か」
「...ごめん」
僕があのとき、確実に殺していれば。
ちゃんと死んでいると、確認していれば。
こんなことにはならなかったのに。
「『殺しておけば』、とか言うなよ」
ぼうやのお友だちはとても鋭い。
(僕が殺らなくちゃいけなかったのに)
「...またくる」
そう言ってその日は別れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから何度か、ぼうやのお友だちと話した。
事件のことを沢山話してもらった。
「きみは僕が怖くないの?」
「...?何故怖がる必要があるんだ?」
僕は人殺しなのに、まるでそんなの気にしないように話す彼が不思議に思えた。
(僕を人間扱いするなんて、変なの)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
別の日、午後からぼうやたちがくると聞いた。
僕はこういうとき、どんな顔をすればいいのか分からない。
「おい、『呪いの悪夢』!なんでおまえみたいな奴が本なんか読んでるんだ!」
...看守に殴られた。
僕の名前はそれじゃない。
僕は『悪夢』じゃない。
日常茶飯事だけど、なれない。
ずっとなれないんだ。
午後になると、ぼうやたちがきた。
「あの、メアさん...」
「どうしたの?」
「お顔が腫れてます。もしかして、何かされたんですか?」
この子も鋭い。
「メル、よく気づいたね。動かないでね、治療するから」
痛いと思っていたのに、全然痛くなかった。
「ありがとう」
「ふーん...お礼を言われる日がくるなんて、思ってなかった」
ぼうやが少し照れているような気がした。
「メル、少しだけメアと待っててくれないかな?」
「分かりました」
少女はにこにこしている。
「あの、メアさん」
「何?」
「えっと、その...このお部屋、散らかっていませんか?」
「そうだよ」
僕は平然と頷いた。
少女はしばらく考えるような仕草をみせたあと、ぽんと手をたたいた。
「メアさん、お片づけしましょう!」
「...お片、づけ?」
死体を?生きてる罪人を?それとも...僕を?
「お部屋をお片づけしたら、きっと気分も明るくなりますよ」
「それなら、何か武器がないと...」
「ち、違います!そうではなくてですね...その、お部屋を綺麗にするという意味ですよ?」
(僕が知らない意味だ)
「色々なものを整理整頓する...というのが『お片づけ』の意味です」
少女はにこりとこちらを見る。
「私も手伝いますから、カムイとエリックさんが戻ってくるまでに終わらせましょう」
「...分かったよ」
黙々と作業していると、また嫌な奴がきた。
「おい、『呪いの悪夢』!」
「...っ」
少女は怯えているようだ。
「僕にやるなら何してもいいけど、他の人がいるから今はやめてほしいな...」
「煩い、『呪いの悪夢』!」
...やめて。
その名前で呼ばないで。
僕は、そんな名前じゃない...。
お願いだから、もうやめてよ。
お願い、お願い、お願い...。
「やめてください!」
「...!」
「この方の名前は、『呪いの悪夢』ではありません。この方は、メアさんです」
「小娘が偉そうにするな!」
ダメだ、殴られる。
「...っ」
僕ができるのは、この少女を守ることだけだ!
僕が殴られる覚悟をしても、拳がとんでこない。
目を開けると、そこには...
「おい、暴行って犯罪なんだけど?」
「...ぼうや」
その男はぼうやを見て、そそくさと退散していった。
「二人とも、怪我はない?」
「はい!ありがとうございます」
「それにしても...片づいたな」
「エリック、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?メルは傷は...開いてなさそうだね。メアもどこも怪我は...」
...嗚呼、なんて幸せなんだろう。
お願い、もっと僕を呼んで。
僕を...『メア』って呼んで。
「メア?」
「メアさん...?」
どうして涙が止まらないんだろう。
「おまえはもう、『悪夢』じゃない。メアだ」
みんながこうして名前を呼んでくれる。
...僕にとって、一番の幸せだ。
「ありがとう...」
「メアが泣くとは思ってなかったな。...あとであの看守は指導しておくから。すまなかったな」
「...ありがとう」
「メアさん、またきますね」
「...うん」
次会った時は、もっと色んな話をしよう。
そうしたら、また名前を呼んでもらえるかな。
その時があるって、信じてもいいのかな。
この日の月は、いつもより輝いて見えた。
0
あなたにおすすめの小説
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる