路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

文字の大きさ
163 / 220
Until the day when I get married.-Light of a new request-

第121話

しおりを挟む
ー**ー
見慣れない景色。
晴れやかな空。
そして、
「カムイ」
「...!」
純白のドレスに身を包んだメル。
(俺はこの先一生、メルを幸せにする)
ベールをあげると、メルがいつものようににこにこしていた。
「カムイ」
「どうしたの?」
「...一緒に、幸せになりましょうね」
「そうだね」
俺は照れくさくなって下を向きそうになる。
そのとき、銃声が響いた。
聞こえるのは、みんなの悲鳴。
目の前を彩るのは、みんなの血。
白かったドレスが朱に染まる。
「メルっ...」
周りは全て、朱、赤、紅。
俺はメルに手を伸ばす...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...イ、...て...い」
「う...」
「...ムイ?」
「ぐっ...」
「カムイ!」
「...!」
俺は大量に汗をかいていた。
伸ばした手はメルが握っていてくれた。
(...夢か)
それにしても、嫌な夢だった。
「ごめん、メル。変な夢を見てて...」
「昔の夢ですか?」
「ううん。...ちょっと不吉な夢だったんだ」
「すごく辛そうでしたよ...?」
メルが心配そうに俺を見ているのが伝わってきた。
「もう平気だよ。メルが側にいてくれたから。ありがとう」
メルはまだ不安そうな顔をしていた。
「あまり眠れていないのではありませんか...?」
ー*ー
カムイがあまり寝ていないような気がする。
なんとなく、そう思った。
「ううん。メルと一緒に寝ていると、本当に安心できるんだ。...今日はたまたま嫌な夢を見ただけだよ」
「そうですか...」
カムイが聞かれたくないのなら、これ以上は聞かないでおこうと思った。
「何か作ろうか」
「ハニートーストを作りたいです」
「...分かった、そうしよう」
私の頭を撫でてくれたその手は、なんだかいつもより冷たいような気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「メル、カムイ!いる?」
「ナタリーさん、こんにちは」
カムイは診察で医務室へ行っていた。
「カムイは...仕事か。それで?何かあったの?」
「えっ...」
「メルを見ていれば分かるわ。あたしが思うに、二人の間に何かあったんでしょ」
ナタリーさんにバレてしまうなんて...私は隠すのが下手になったのかもしれない。
「実は...」
事件のことは話してはいけない気がしたので、カムイが眠れていないようだということだけ伝えた。
「それならいいものがあるわ!」
ナタリーさんは、小さな袋を私にくれた。
「いい香りですね」
「サシェっていうの。あたしが作ったから下手だけど、あげる!寝るときに枕元に置いてみて」
この香りを知っているような気がするが、どこで知ったのか分からなかった。
「ありがとうございます。やってみます」
「それじゃあ、あたしは帰るわ。...王子様が後ろに立ってるわよ」
「...?」
ナタリーさんが言っていた意味が分からなかったが、後ろを振り返った瞬間、その意味を理解した。
「カムイ!」
ー**ー
ナタリーとなにやら盛り上がっているようだったので、声をかけずに見守っていた。
それにナタリーが気づき、話が終わってしまったようだ。
「ごめん。話の途中だったんじゃない?」
「いえ、ちょうど終わったところだったので。カムイは診察は終わったんですか?」
「うん。さっききていたのは軽傷の人だったからね」
...しばらく沈黙がながれる。
メルが何か話そうとしている。
「メル、話して」
「これ、試してみませんか?」
それは、ラベンダーの香りがするサシェだった。
たしか、安眠効果があると言われているはずだ。
(俺のためにって考えてくれたのか)
俺は思わずメルを抱きしめた。
「メル、ありがとう」
「...!はい!」
このところ寝ていなかったのは事実だ。
『特別捜査官』としての報告書に『医師』としての診断書...書類仕事が大量に残っていたのだ。
「カムイ、緊張しているんですか...?」
「そう言うメルの心臓は、ばくばく言ってるよ?」
「...!」
メルが頬を赤らめてこちらをじっと見ている。
俺は惹きつけられたように、そのままキスをした。
「は、恥ずかしいです...」
「我慢できなかった」
メルは困ったような、照れているような表情をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて、と」
メルの包帯を換えながら、俺はあの夢が何をさすのか考えていた。
(あの男を捕まえないといけないのか...)
どこにいるのかも分からない相手を追わなくてはいけないのは、正直言って不可能に思えた。
だが、あの男を捕まえなければ、あの夢が正夢になる可能性があることは否定できない。
「カムイ?」
「ごめん、終わったよ」
「ありがとうございます」
メルの笑顔を見て、今は目の前にいる事を考えようと思った。
「メル、今度フェスティバルがやり直されるらしいよ。...また一緒に行ってくれる?」
「はい!楽しみですね」
メルがとても嬉しそうにしているのを見て、俺もつられて笑みを溢した。















...このとき俺はまだ知らなかった。
これから訪れる新たな出会いと、最大であろう試練に。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

処理中です...