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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第138話
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ー**ー
メルは資料を見て、ぴたりと止まった。
「メル?」
「この瓶、同じです」
「現場に落ちていたものとってこと?」
「はい」
写真だけで分かるなんて、やはりメルの力はとんでもなく強い。
だが、メルが嫌がるなら調査をやめてしまってもいいという気持ちでやっている。
(メルを傷つけたくない)
「この瓶は何か意味があるのでしょうか?」
「...これは、火炎瓶かもしれない」
「火炎瓶、ですか?」
投げつけると火が出るということだけ、メルには説明した。
中の薬品がどうのとか、そんなことを言っている場合ではないからだ。
(これは特殊型のもの...)
「これって、八年前の事件と同じ方がやったとは考えられませんか?」
俺はメルのその言葉に驚きを隠せなかった。
「どうしてそう思うの?」
「新聞の会社で見た記事に書かれていたものと同じような気がするんです」
「え?」
「たしか、カムイが持っているその記事の端の方にあったような...」
メルが教えてくれた位置をよく見ると、【火炎瓶のものと思われる破片が散らばっており...】と記載されていた。
「その瓶の破片の写真と、八年前のアイリーンさんの事件の破片でできた小瓶...なんだかそっくりなんです」
「うーん、俺には分からないな...」
「この破片が今の事件のものですよね?」
「そうだよ」
俺は破片を拾い集めておいた袋をメルに見せた。
「取り敢えずこれを組み立てていいですか?」
ー*ー
カムイは険しい表情をしながら、やがて小さく頷いた。
「ありがとうございます」
「巻きこんでごめん」
「いいんです、私はカムイに巻きこまれたいですから!」
私は左眼で欠片をじっくり観察した。
(思ったよりバラバラです...)
私は破片がこれ以上粉々にならないように、いつも以上にそっと元通りにしていった。
「...できました」
そこには、見た目が全く同じに見える小瓶が二つ。
カムイは二つを見て、ぽつりと呟いた。
「...同じものだ」
「やっぱりそうなんですね...」
カムイ は少し動揺しているようだった。
だが、すぐにいつもの冷静さを取り戻していた。
「これを作ったのは多分あいつだ。でも、あいつを見た人を探さなければいけない」
「見ていた人がいないと、捕まえることができないんですか?」
「...うん」
カムイは頭を抱えた。
私は何をすればいいのか分からず、呆然と立ち尽くしていた。
ー**ー
調べはじめて、どのくらい時間が経っただろうか。
このままではいけないと思いつつ、俺はつい没頭してしまっていた。
「カムイ」
「ごめんね、集中してて...」
「いえ、気にしないでください。でも、今日はもう休みましょう」
「そうだね」
メルは不安を押し殺すように、いつものような笑顔を俺に向けていた。
...メルに心配をかけてしまった。
「カムイ」
「どうしたの?」
「今日はブイヨンを作ってみました!本当はもっと時間をかけて煮こんだ方が美味しいのですが...」
「メルが作ってくれたものなら、きっと美味しいよ」
メルはとても嬉しそうに、今度はちゃんと笑ってくれた。
「パンは俺が切るね」
「お願いします」
熱中してしまうと、周りが見えなくなる。
周りが何をしているのかさえ、ちゃんと把握できない。
エリックには『とてつもない集中力』だと褒められたが...
俺の昔からの、悪い癖だ。
「...」
パンを切りながら、メルに呆れられてしまわないかと不安になる。
だが、どうやら杞憂だったらしいとすぐに気づかされた。
「カムイそんなに思いつめなくても大丈夫です。私がずっと側にいますから!」
そう言って後ろから抱きついてくるメルは、とても温かかった。
可愛い。愛しい。
そんな思いが今にも溢れだしそうになる。
「...ありがとう」
ー*ー
カムイが何を不安に思っているのか分からない。
だが、私はそれを祓いたい。
カムイの不安を、全部取り除きたい。
こんな気持ちを伝えたら、カムイはどう思うだろう。
(嫌がられてしまうかもしれません)
私は何も伝えずに、ただカムイを抱きしめた。
「メル、そうしてくれるのは嬉しいんだけど...このままじゃパンを運べないから、一回離れてくれるとありがたいな」
「...!ごめんなさい!」
私は恥ずかしくて、すぐにカムイの側を離れた。
「取り敢えず食べようか」
「はい!」
このあと、私たちはいつものように夕食を済ませた。
「今日は、一緒にお風呂に入ってもいいですか?」
「...っ、分かった」
なんだかカムイの顔が赤くなったような気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...何故だ、何故事件のことが載っていない!」
男は激怒した。
「...俺の邪魔をしたのは、もしかするとあのガキか?」
フェスティバルで邪魔をした小僧共。
「次の手を打つとしよう!果たして回避できるかな?」
男はどす黒い笑みを浮かべ、バーをあとにした。
「...」
その発言を、たまたまきていた『伝説の刑事』に聞かれたことにも気づかずに。
メルは資料を見て、ぴたりと止まった。
「メル?」
「この瓶、同じです」
「現場に落ちていたものとってこと?」
「はい」
写真だけで分かるなんて、やはりメルの力はとんでもなく強い。
だが、メルが嫌がるなら調査をやめてしまってもいいという気持ちでやっている。
(メルを傷つけたくない)
「この瓶は何か意味があるのでしょうか?」
「...これは、火炎瓶かもしれない」
「火炎瓶、ですか?」
投げつけると火が出るということだけ、メルには説明した。
中の薬品がどうのとか、そんなことを言っている場合ではないからだ。
(これは特殊型のもの...)
「これって、八年前の事件と同じ方がやったとは考えられませんか?」
俺はメルのその言葉に驚きを隠せなかった。
「どうしてそう思うの?」
「新聞の会社で見た記事に書かれていたものと同じような気がするんです」
「え?」
「たしか、カムイが持っているその記事の端の方にあったような...」
メルが教えてくれた位置をよく見ると、【火炎瓶のものと思われる破片が散らばっており...】と記載されていた。
「その瓶の破片の写真と、八年前のアイリーンさんの事件の破片でできた小瓶...なんだかそっくりなんです」
「うーん、俺には分からないな...」
「この破片が今の事件のものですよね?」
「そうだよ」
俺は破片を拾い集めておいた袋をメルに見せた。
「取り敢えずこれを組み立てていいですか?」
ー*ー
カムイは険しい表情をしながら、やがて小さく頷いた。
「ありがとうございます」
「巻きこんでごめん」
「いいんです、私はカムイに巻きこまれたいですから!」
私は左眼で欠片をじっくり観察した。
(思ったよりバラバラです...)
私は破片がこれ以上粉々にならないように、いつも以上にそっと元通りにしていった。
「...できました」
そこには、見た目が全く同じに見える小瓶が二つ。
カムイは二つを見て、ぽつりと呟いた。
「...同じものだ」
「やっぱりそうなんですね...」
カムイ は少し動揺しているようだった。
だが、すぐにいつもの冷静さを取り戻していた。
「これを作ったのは多分あいつだ。でも、あいつを見た人を探さなければいけない」
「見ていた人がいないと、捕まえることができないんですか?」
「...うん」
カムイは頭を抱えた。
私は何をすればいいのか分からず、呆然と立ち尽くしていた。
ー**ー
調べはじめて、どのくらい時間が経っただろうか。
このままではいけないと思いつつ、俺はつい没頭してしまっていた。
「カムイ」
「ごめんね、集中してて...」
「いえ、気にしないでください。でも、今日はもう休みましょう」
「そうだね」
メルは不安を押し殺すように、いつものような笑顔を俺に向けていた。
...メルに心配をかけてしまった。
「カムイ」
「どうしたの?」
「今日はブイヨンを作ってみました!本当はもっと時間をかけて煮こんだ方が美味しいのですが...」
「メルが作ってくれたものなら、きっと美味しいよ」
メルはとても嬉しそうに、今度はちゃんと笑ってくれた。
「パンは俺が切るね」
「お願いします」
熱中してしまうと、周りが見えなくなる。
周りが何をしているのかさえ、ちゃんと把握できない。
エリックには『とてつもない集中力』だと褒められたが...
俺の昔からの、悪い癖だ。
「...」
パンを切りながら、メルに呆れられてしまわないかと不安になる。
だが、どうやら杞憂だったらしいとすぐに気づかされた。
「カムイそんなに思いつめなくても大丈夫です。私がずっと側にいますから!」
そう言って後ろから抱きついてくるメルは、とても温かかった。
可愛い。愛しい。
そんな思いが今にも溢れだしそうになる。
「...ありがとう」
ー*ー
カムイが何を不安に思っているのか分からない。
だが、私はそれを祓いたい。
カムイの不安を、全部取り除きたい。
こんな気持ちを伝えたら、カムイはどう思うだろう。
(嫌がられてしまうかもしれません)
私は何も伝えずに、ただカムイを抱きしめた。
「メル、そうしてくれるのは嬉しいんだけど...このままじゃパンを運べないから、一回離れてくれるとありがたいな」
「...!ごめんなさい!」
私は恥ずかしくて、すぐにカムイの側を離れた。
「取り敢えず食べようか」
「はい!」
このあと、私たちはいつものように夕食を済ませた。
「今日は、一緒にお風呂に入ってもいいですか?」
「...っ、分かった」
なんだかカムイの顔が赤くなったような気がした。
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「...何故だ、何故事件のことが載っていない!」
男は激怒した。
「...俺の邪魔をしたのは、もしかするとあのガキか?」
フェスティバルで邪魔をした小僧共。
「次の手を打つとしよう!果たして回避できるかな?」
男はどす黒い笑みを浮かべ、バーをあとにした。
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その発言を、たまたまきていた『伝説の刑事』に聞かれたことにも気づかずに。
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