路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-Light of a new request-

第143話

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「暑くないか?」
「...うん」
今日はエリックがお買い物に連れていってくれた。
でも私は、何故かエリックの方を見ることができない。
「...っ」
エリックも同じようで、私と目が合わない。
...エリックも、どきどきしているの?
「そこのきみ!」
「私?」
「そうだ、きみだ。...殺人の容疑がかかっている」
殺、人?
「おい待て、事情を聞かせろ」
エリックは何かを見せ、その人に話を聞いていた。
でも...
「!」
「アイリス!」
「彼女は逮捕する」
「...っ、エリック、助けて」
逃げる間もなく、後ろからきた人たちに捕まえられてしまった。
私は人を殺したりしていない。
なのに、どうして...
「アイリス!」
エリックの手を掴もうとしたけど、誰かに邪魔をされてしまった。
「必ず助けに行く、信じてくれ!おまえは誰も殺していない!俺はそう信じている!」
「...エリック」
助けて、エリック。
お願い...もう、一人は嫌だ。
ー**ー
「~♪」
メルは上機嫌で歌いながら紅茶を淹れている。
「昨日はアイリスとどんな話をしたの?」
「えっと、」
「恋の話?」
「どうしてそれを...」
メルはしまった、という顔で俺の方を見ていた。
「俺もエリックに同じようなことを話していて、」
バタン!
玄関のドアが大きな音をたてて開閉した。
メルは怯えているようで、カタカタと震えていた。
「メル、大丈夫だよ。エリック、どうしてノックもせずに、」
「アイリスが逮捕された」
...逮捕?
まだ息がととのっていないまま、エリックはたしかにそう言った。
俺の頭の中には大量のクエスチョンマークが浮かんだ。
新聞は止めたのに、何故逮捕されたのだろうか。
「殺人の容疑がかかっているとか連中は言っていたが...」
「エリックさんより偉い人が捕まえにきたんですか?」
「...ああ。あれは俺より階級が上の奴等だった。署に行くと、これがあった」
エリックは一枚の報告書を見せてくれた。
【報告書
少女を放火殺人の罪に問う。
連続放火事件現場より、少女の靴を発見。
付近に硝子瓶のような破片あり。
近くに細い糸が落ちていた。
少女の洋服は解れており、その一部と考えられる。
事件当日少女を見たという情報が男性から寄せられたこともあり、少女が殺人犯であると確定。
他事件との関連を引き続き調査する】
「どうやら『夢監獄』の中にいるようだが...」
エリックはぎょっとした顔で俺を見ていた。
「カムイ、落ち着いてください」
メルが俺を宥めようとしてくれている。
だが、俺の怒りは収まりそうになかった。
「...何この報告書。お粗末にもほどがあるでしょ」
ビリリリ!
俺はそれを勢いよく破った。
ー*ー
カムイが怒るのも分かる。
だが、カムイは無自覚に殺気を放っていた。
(これが、カムイが『悪魔殺し』と呼ばれているもう一つの理由...)
前にエリックさんにこっそり教えてもらったことがあった。
カムイが『悪魔殺し』と呼ばれているのは、マフィアのアジトを一人で潰したから。
実はそれ以外に、もう一つ理由があった。
『本人も無自覚なうちに滲み出ている殺気』が、悪魔さえも恐れるだろうという程のものだから。
今のカムイはまさしくその状態だった。
「あの、冷静になって考えましょう?きっと報告書にもヒントがあるはずです」
「...あれは予備だ。実はここに俺の写しがある」
「それならそれを見ながら考えましょう!」
カムイははっとした表情になり、申し訳なさそうな顔をしていた。
「ごめん、冷静じゃなかった」
「こんなことをされたら、誰だって怒ります」
「取り敢えず、何かないかもう一度見てみよう」
「あの!その前に一つ聞いてもいいですか?」
「どうしたの?」
「『夢監獄』って、どういうことですか?」
監獄にも種類があるのだろうか。
私は全く知らない。
「実はこの街には、監獄が三種類ある。一つは死刑囚ばかりの『花監獄』。死ぬ前に花を持たせようという意味でつけられたみたい」
「それから、『星監獄』。ここには病気持ちで死が近い受刑者が集められている」
「成る程...。それじゃあ、『夢監獄』はどんな方たちがいるんですか?」
「『夢監獄』は、死刑ではないけれど刑が確定した囚人たちが入れられているところだよ。あとは刑が確定していない、裁判待ちの人たちがいるところでもある。...今のアイリスみたいにね」
「アイリスさんは裁判にかけられてしまうんですか?」
エリックさんが項垂れた様子で小さく頷いた。
カムイもすごく焦っている顔をしている。
(すごく大変なことになっていることは分かりました)
「もしかして、メアさんがいる場所も『夢監獄』ですか?」
ー**ー
メルの着眼点は、いつも俺の盲点だった場所に向いている。
「...そうか、そうだな。メアに頼んで協力をあおぐか」
「俺は別ルートから調べてみるよ」
「私にも、何かできますか?」
「それなら、俺と一緒に調べてくれる?連続放火事件の真犯人を見つけたい」
「はい!」
「エリック、放火事件の方は俺たちに任せてアイリスの所へ行って?...ああ、『メアに会うついでに偶然会ってしまう』のは問題ないはずだから」
エリックと一緒にいるところを捕まったということは、本当ならエリックはアイリスとは会えない。
だが、『偶然』会うのは問題ないだろう。
「分かった」
エリックは走って『夢監獄』まで向かった。
俺とメルはお粗末な報告書の見直しからはじめることにした。
アイリスを救うため、こうして俺の...俺たちの忙しい日々は再び幕を開けた。
(必ずアイリスを助けてみせる!)


















ーーアイリスの裁判まであと五日。
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