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約束のスピカ
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日記に書いてあった通りの出来事がおきてしまった。
「流山」
「う……」
蹲って泣いている流山に声をかけると、怯えた顔をこちらに向ける。
俺を見るなり慌てた様子で涙を拭い、いつものように真顔になった。
「傷、手当てするから見せてくれ」
「…嫌だ」
「できるだけ痛くしないから、取り敢えず診察させてくれないか」
「……」
流山は無言で腕をこちらに伸ばした。
切り傷や打撲が増えているが、本人はなんとも思っていないらしい。
……否、いちいち感じていられないのだろう。
「できた」
「痛かった」
「悪かった。…なあ、なんでいつも生物分野だけ白紙で出すんだ?」
「グロテスクなの、苦手なんだ。魚も切り身ならいいけど、姿煮とかになると…」
話すだけで気分が悪くなるのか、顔がどんどん青くなっていく。
「それは知らなかった。イラストでも駄目なのか?」
「得意じゃない。何秒かは見られるけど、それ以上は無理」
「…テストに出すとき、できるだけ図形で表現するように気をつける」
恐らく生物の知識だってあるのだ、実力を発揮できないのは勿体ない。
理科分野全般のテストで完全に外すわけにはいかないため、俺にできるのはそれくらいだ。
「…僕のことなんて放っておけばいいのに」
「泣いている生徒を放っておくなんて教師失格だ。それに、泣いているということは助けを必要としているかもしれないってことだからどんな相手でも話しかける」
流山の表情は少しだけ明るくなったような気がしたが、いつものすんとした無表情に近い状態になる。
「……世界が先生みたいに優しい人だけでできていればよかったのにね」
「俺は別に優しくない。…今夜も望遠鏡の準備はしておく」
「分かった。じゃあ先生、また後で」
荷物をまとめて教室を出ていく流山の姿は見ているだけで苦しくなる。
無駄かもしれないが、俺にできる限りのことはやってみよう。
「お願いします。家庭訪問をさせてください」
職員室で校長相手に頭を下げる。
「そんなの、ただの喧嘩かもしれないでしょう?わざわざ声を荒げるほどのことではありません」
「ただの喧嘩で毎日痣ができるなんて異常です。医師としても、」
「とにかく!この話はもう終わりです。まったく、あんな不良生徒の為に割く時間があるなら……」
「失礼します」
嗚呼、なんて虚しいんだろう。
何故いつの時代も人間は変わらないのだろう。
……なんて俺は無力なんだろう。
「室星先生」
後ろから声をかけられて振り返ると、心配そうな顔をした白髪交じりの教員が立っていた。
「すみません、場所を考えずに言い争って…」
「いえいえ、それは構わないんですよ。ただ、あなたの顔が疲れているように見えるので声をかけたんです。
誰も校長には逆らえない。方針が違っているだけで邪外にされるのは辛いですね」
この教員も経験があるのだろうか。
それだけ話すと頭を下げて職員室を出ていった。
「…お疲れ様です」
もやもやした気持ちのまま夜を迎え、望遠鏡の準備を整える。
「先生、今日は早いね」
「まあな」
流山の怪我は日に日に酷くなっている気がする。
丁度いい位置に調整し終えたところで、苦いものを打ち消すようにキャラメルを口に放りこんだ。
「流山」
「う……」
蹲って泣いている流山に声をかけると、怯えた顔をこちらに向ける。
俺を見るなり慌てた様子で涙を拭い、いつものように真顔になった。
「傷、手当てするから見せてくれ」
「…嫌だ」
「できるだけ痛くしないから、取り敢えず診察させてくれないか」
「……」
流山は無言で腕をこちらに伸ばした。
切り傷や打撲が増えているが、本人はなんとも思っていないらしい。
……否、いちいち感じていられないのだろう。
「できた」
「痛かった」
「悪かった。…なあ、なんでいつも生物分野だけ白紙で出すんだ?」
「グロテスクなの、苦手なんだ。魚も切り身ならいいけど、姿煮とかになると…」
話すだけで気分が悪くなるのか、顔がどんどん青くなっていく。
「それは知らなかった。イラストでも駄目なのか?」
「得意じゃない。何秒かは見られるけど、それ以上は無理」
「…テストに出すとき、できるだけ図形で表現するように気をつける」
恐らく生物の知識だってあるのだ、実力を発揮できないのは勿体ない。
理科分野全般のテストで完全に外すわけにはいかないため、俺にできるのはそれくらいだ。
「…僕のことなんて放っておけばいいのに」
「泣いている生徒を放っておくなんて教師失格だ。それに、泣いているということは助けを必要としているかもしれないってことだからどんな相手でも話しかける」
流山の表情は少しだけ明るくなったような気がしたが、いつものすんとした無表情に近い状態になる。
「……世界が先生みたいに優しい人だけでできていればよかったのにね」
「俺は別に優しくない。…今夜も望遠鏡の準備はしておく」
「分かった。じゃあ先生、また後で」
荷物をまとめて教室を出ていく流山の姿は見ているだけで苦しくなる。
無駄かもしれないが、俺にできる限りのことはやってみよう。
「お願いします。家庭訪問をさせてください」
職員室で校長相手に頭を下げる。
「そんなの、ただの喧嘩かもしれないでしょう?わざわざ声を荒げるほどのことではありません」
「ただの喧嘩で毎日痣ができるなんて異常です。医師としても、」
「とにかく!この話はもう終わりです。まったく、あんな不良生徒の為に割く時間があるなら……」
「失礼します」
嗚呼、なんて虚しいんだろう。
何故いつの時代も人間は変わらないのだろう。
……なんて俺は無力なんだろう。
「室星先生」
後ろから声をかけられて振り返ると、心配そうな顔をした白髪交じりの教員が立っていた。
「すみません、場所を考えずに言い争って…」
「いえいえ、それは構わないんですよ。ただ、あなたの顔が疲れているように見えるので声をかけたんです。
誰も校長には逆らえない。方針が違っているだけで邪外にされるのは辛いですね」
この教員も経験があるのだろうか。
それだけ話すと頭を下げて職員室を出ていった。
「…お疲れ様です」
もやもやした気持ちのまま夜を迎え、望遠鏡の準備を整える。
「先生、今日は早いね」
「まあな」
流山の怪我は日に日に酷くなっている気がする。
丁度いい位置に調整し終えたところで、苦いものを打ち消すようにキャラメルを口に放りこんだ。
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